お昼前にコロニーの富豪達からなる視察団は宇宙へ帰還した。ポール・レイン・ドーマーは見世物になりたくなくてずっと面会を拒んでいたのだが、最後の見送りだけでも出てくれと執政官達に要請され、渋々ダリルと共に中央研究所に向かった。ハイネ局長も一緒だったが、クロエル・ドーマーはさっさと朝一番コスタリカ行きのジェット機に乗ってとんずらしていた。
ドーム側の見送り人は、維持班総代表ジョアン・ターナー・ドーマー、遺伝子管理局の3名とJJ、そして厨房に隠れているところを引っ張り出されたジェリー・パーカーだった。ジェリーが登場したことで、ポールは注目を浴びる率を減らすことが出来て助かった。勿論、髪を伸ばした彼の美貌にコロニー人達は目を見張ったのだが、古代人のクローン、ジェリー・パーカーの存在は大きかった。コロニー人達はジェリーを取り囲み、いろいろ質問したり腕に触れてみたりした。ジェリーは仏頂面していたが暴れたりはしなかった。
「アメリカ・ドームのスター達のそろい踏みだね。」
と視察団の団長が上機嫌でケンウッド長官に挨拶した。女性の間から「黒い子がいないわ」と不満の声が上がったが、長官は「仕事に出かけました」と軽く受け流した。
ダリルはアリス・ローズマリー・セイヤーズと目を合わさない様に心がけた。彼女の方も知らん顔している。仮に宇宙で妊娠が確認されても地球で種を仕込んだと思われたくないのだろう。
ラナ・ゴーン副長官が顔を腫らしているアンリ・クロワゼット大尉を気遣うふりをした。彼女は大尉にお尻を触られたり、部下を嫌がらせから守ったりで3日間気苦労が絶えなかったのだが、ドームの副長官と言う立場上、寛大な態度でこの不良を見守る役目を演じた。彼女は大尉をぶちのめしたのがダリルだと聞かされた時、内心とても嬉しかった。
地球人類復活委員会は、スパイラル工業のCEOが大金を積んで法律を曲げたことを副長官には教えるなとケンウッド長官に言い含めていた。万が一ことが発覚した時、トップ2人が更迭となればアメリカ・ドームは大混乱になる。ラナ・ゴーンは何も知らない、それが安全策だと。
しかし、ラナ・ゴーンは女の勘で、何か表沙汰に出来ないことがあったと薄々勘付いていた。夜中にダリルが中央研究所に呼ばれたこと、アリス・ローズマリー・セイヤーズが深夜パーティーの席から消えていたこと、長官が一晩でげっそりやつれていたこと等から、ゴーンなりに推理を働かせていた。
だから、ダリル・セイヤーズ・ドーマーが早朝にクロワゼット大尉を相手に大暴れしたと聞いて、副長官は独り言を呟いた。
「そう言うことね・・・」
最後にハイネ局長が、視察団にドーマー達と握手してやって下さいと提案して、受け入れられた。ポールは面倒だったので接触テレパスの働きを止めたが、スパイラル工業の女とクロワゼット大尉の時だけ情報を取り込んだ。
女の思考は予想外に単純だった。美しいポールと最後に出会えて喜んでいた。ダリルのことはこれっぽちも未練がないのだ。
こんなつまらない女が俺のダリルを買ったのか・・・
腹立たしいが、彼女は2度と来ない。2度と来ないのは、クロワゼット大尉も同じだった。軍人は心の中で呟き続けていた。
2度と来るものか・・・地球なんか2度と来るか!・・・軍を辞めて辺境へ仕事を探しに行こう・・・
視察団はある者は笑顔で、ある者は名残惜しそうに、またある者はホッとした顔でドームを去り、空港からシャトルで月へ向かった。
ドーム側の見送り人は、維持班総代表ジョアン・ターナー・ドーマー、遺伝子管理局の3名とJJ、そして厨房に隠れているところを引っ張り出されたジェリー・パーカーだった。ジェリーが登場したことで、ポールは注目を浴びる率を減らすことが出来て助かった。勿論、髪を伸ばした彼の美貌にコロニー人達は目を見張ったのだが、古代人のクローン、ジェリー・パーカーの存在は大きかった。コロニー人達はジェリーを取り囲み、いろいろ質問したり腕に触れてみたりした。ジェリーは仏頂面していたが暴れたりはしなかった。
「アメリカ・ドームのスター達のそろい踏みだね。」
と視察団の団長が上機嫌でケンウッド長官に挨拶した。女性の間から「黒い子がいないわ」と不満の声が上がったが、長官は「仕事に出かけました」と軽く受け流した。
ダリルはアリス・ローズマリー・セイヤーズと目を合わさない様に心がけた。彼女の方も知らん顔している。仮に宇宙で妊娠が確認されても地球で種を仕込んだと思われたくないのだろう。
ラナ・ゴーン副長官が顔を腫らしているアンリ・クロワゼット大尉を気遣うふりをした。彼女は大尉にお尻を触られたり、部下を嫌がらせから守ったりで3日間気苦労が絶えなかったのだが、ドームの副長官と言う立場上、寛大な態度でこの不良を見守る役目を演じた。彼女は大尉をぶちのめしたのがダリルだと聞かされた時、内心とても嬉しかった。
地球人類復活委員会は、スパイラル工業のCEOが大金を積んで法律を曲げたことを副長官には教えるなとケンウッド長官に言い含めていた。万が一ことが発覚した時、トップ2人が更迭となればアメリカ・ドームは大混乱になる。ラナ・ゴーンは何も知らない、それが安全策だと。
しかし、ラナ・ゴーンは女の勘で、何か表沙汰に出来ないことがあったと薄々勘付いていた。夜中にダリルが中央研究所に呼ばれたこと、アリス・ローズマリー・セイヤーズが深夜パーティーの席から消えていたこと、長官が一晩でげっそりやつれていたこと等から、ゴーンなりに推理を働かせていた。
だから、ダリル・セイヤーズ・ドーマーが早朝にクロワゼット大尉を相手に大暴れしたと聞いて、副長官は独り言を呟いた。
「そう言うことね・・・」
最後にハイネ局長が、視察団にドーマー達と握手してやって下さいと提案して、受け入れられた。ポールは面倒だったので接触テレパスの働きを止めたが、スパイラル工業の女とクロワゼット大尉の時だけ情報を取り込んだ。
女の思考は予想外に単純だった。美しいポールと最後に出会えて喜んでいた。ダリルのことはこれっぽちも未練がないのだ。
こんなつまらない女が俺のダリルを買ったのか・・・
腹立たしいが、彼女は2度と来ない。2度と来ないのは、クロワゼット大尉も同じだった。軍人は心の中で呟き続けていた。
2度と来るものか・・・地球なんか2度と来るか!・・・軍を辞めて辺境へ仕事を探しに行こう・・・
視察団はある者は笑顔で、ある者は名残惜しそうに、またある者はホッとした顔でドームを去り、空港からシャトルで月へ向かった。