2017年1月29日日曜日

訪問者 22

 見送りグループが解散した。JJはポールのそばに行ったが、ポールはこれから外に出かけるのだと彼女に断った。そっと端末にメッセを入れて見せた。

ーーライサンダーと思しき人物が現れたので確認に行ってくる。

 ポールは申請書の人物がライサンダー・セイヤーズだと確信していたが、敢えて断言を避けた。万が一間違っていたら、大勢を失望させてしまう。JJが微笑んだ。そっと彼の腕に手を添えた。

 ライサンダーだと良いわね。元気にしているかしら・・・

 彼女が遠い目をした。ラムゼイの農場に居た頃のことを思い出したのだろう。当時は彼女もライサンダーもまだ子供だった。精一杯大人になろうと反抗して背伸びしていた。半年たって、JJはすっかり落ち着いた女性学者になり、ライサンダーは結婚を希望している。父親になるかも知れない。
 ポールはそっとJJにキスをした。
 少し離れた所では、ダリルとラナ・ゴーンが並んで歩いていた。 ダリルは彼女の方から手を握ってきたことに驚いた。彼女は何も言わなかった。しかし、彼女は全て承知しているのだ、とダリルは理解した。彼は彼女の手を握り返した。

 スパイラル工業の女が金の力で法を曲げて地球人を抱いたのなら、副長官が憎からず思う地球人に触れてはいけない理がどこにある?

 ジョアン・ターナー・ドーマーがハイネ局長の腕を突いて、ダリルとラナ・ゴーンに彼の注意を向けさせた。コロニー人と地球人が個人的な関係になっても良いのか? と無言で問うた。ローガン・ハイネが囁いた。

「見なかったことにしたまえ。」

 ダリルとラナ・ゴーンは直ぐに離れた。そしてそれぞれの職場に向かった。
ターナーは立ち止まってハイネを先に行かせると、後からとぼとぼとやって来たジェリー・パーカーに声を掛けた。

「昼ご飯に、シェイのアップルパイでも食わないか?」

 ジェリーが顔を上げ、笑顔を作った。