ダリルは珈琲を淹れるちょび髭の手元を見ていた。珈琲は作り置きだから、ポットからカップに注ぐだけだ。奥の厨房は人の気配がない。
「1人でやってるのか?」
とダリルは尋ねた。ちょび髭が顔を上げて彼を見た。
「ここは初めてかい?」
と質問に質問で返してきた。
「この店も町も初めてだ。」
ダリルは奥の席の男を横目で見た。野球帽を目深に被り、無精髭で顔を包んでいるが、若い男だ。
「機能していない充電スタンドで充電するふりをするトラックを見たのも初めてだ。」
野球帽の男が端末の新聞を繰る手を止めた。と思ったら、片手を上着の下へ入れた。
ダリルが銃を抜く方が早かった。彼は光線を発射し、野球帽の男は辛うじて身を躱し、スツールから転げ落ちながら拳銃を出した。
ダリルはカウンターに手を突いて飛び越えた。ちょび髭が腰を抜かして転倒したのを、麻痺光線を浴びせて動けなくした。
カウンターに拳銃の弾が撃ち込まれた。至近距離なので、腰板を貫通して弾丸が跳び込んで来た。ダリルは厨房へ退避した。
大きな配膳台の裏に身を隠すと、野球帽の男がカウンターの内側に入って来るのが音でわかった。ダリルは戸口に威嚇射撃をした。地球人は麻痺光線と殺傷光線の区別がつかない。野球帽の男は厨房の外で足止めを食った。
端末に電話が着信した。
こんな時に誰だよ・・・
画面を見ると、リュック・ニュカネンだ。ダリルは渋々出た。
「セイヤーズ・・・」
「ニュカネンだ。スカボロから伝言があるのに電話をしたら、ドームの内線に掛かったぞ。外の人間に教える番号は、外線だろうが!」
「リュック、今忙しいんだが・・・」
「君はいつでも忙しいだろうが! スカボロの伝言だ。リトル・セーラムは廃村で、誰も住んでいないとさ。食堂も営業していないと言っていた。君が行く必要はないそうだ。」
野球帽の男が戸口から配膳台に向けて撃ってきた。銃声と配膳台の金属板に弾丸が当たる音が響いた。
「何の音だ?」
とニュカネン。ダリルは正直に答えた。
「拳銃の発射音とテーブルへの着弾音。」
堅物ニュカネンは、一言「成る程」と言って、電話を切った。
ダリルが端末をポケットに仕舞うと、野球帽の男が声を掛けてきた。
「セイヤーズ、おまえがセイヤーズなんだな?」
「それがどうした?」
「いつも2人で行動しているんじゃないのか? 1人で来るとは思ってもみなかった。」
ヒギンズのことを言っているのだろう。ダリルはスカボロからの伝言の内容を考えた。スカボロはガセネタを掴まされた。ダリルに告げた後、自身で調べてガセだと気が付いて、ニュカネンに電話してきた。ガセネタを流したヤツは、ヒギンズが来るのを待っていたのだ。セイヤーズ・ドーマーだと信じて。
目的は誘拐か? それとも暗殺か?
「FOKか? 私の頭蓋骨の中に自分の脳を入れたいのか?」
「俺たちがそんな馬鹿なことを本気でやってると信じているのか?」
「ダウン教授は本気の様だが?」
「あの婆さんは可笑しいのさ。若い他人の体に脳を移植することが、若返りだと思っていやがる。金と施設を持っているから、ちょっと利用させてもらったがね。」
「では、君らの目的は何だ? 何の為にクローンを攫って殺している?」
野球帽の男がふふふと笑った。
「ドーマー、β-エンドルフィンって知っているか?」
「脳内麻薬だな?」
「幸福感を得られる有り難い物質だ。」
「それを抽出する為に、子供を攫って殺したのか?」
「子供と言っても、たかがクローンじゃないか!」
ダリルはカッとなって立ち上がった。殺傷能力のない麻痺光線を男に向かって連射した。
野球帽の男は壁の裏側に身を隠した。
「怒るなよ、ドーマー。おまえは殺しゃしないよ。女を生めるんだって? おまえ自身も女みたいに可愛い顔してるじゃないか。」
殺さないと言いつつ、彼はダリルに向かって銃撃をした。
ダリルはまた配膳台の裏に隠れた。
敵は弾丸の予備を装備しているらしい。こっちは光線のエネルギーが後10時間・・・麻痺光線だけだと知られたら、拙い・・・。
「1人でやってるのか?」
とダリルは尋ねた。ちょび髭が顔を上げて彼を見た。
「ここは初めてかい?」
と質問に質問で返してきた。
「この店も町も初めてだ。」
ダリルは奥の席の男を横目で見た。野球帽を目深に被り、無精髭で顔を包んでいるが、若い男だ。
「機能していない充電スタンドで充電するふりをするトラックを見たのも初めてだ。」
野球帽の男が端末の新聞を繰る手を止めた。と思ったら、片手を上着の下へ入れた。
ダリルが銃を抜く方が早かった。彼は光線を発射し、野球帽の男は辛うじて身を躱し、スツールから転げ落ちながら拳銃を出した。
ダリルはカウンターに手を突いて飛び越えた。ちょび髭が腰を抜かして転倒したのを、麻痺光線を浴びせて動けなくした。
カウンターに拳銃の弾が撃ち込まれた。至近距離なので、腰板を貫通して弾丸が跳び込んで来た。ダリルは厨房へ退避した。
大きな配膳台の裏に身を隠すと、野球帽の男がカウンターの内側に入って来るのが音でわかった。ダリルは戸口に威嚇射撃をした。地球人は麻痺光線と殺傷光線の区別がつかない。野球帽の男は厨房の外で足止めを食った。
端末に電話が着信した。
こんな時に誰だよ・・・
画面を見ると、リュック・ニュカネンだ。ダリルは渋々出た。
「セイヤーズ・・・」
「ニュカネンだ。スカボロから伝言があるのに電話をしたら、ドームの内線に掛かったぞ。外の人間に教える番号は、外線だろうが!」
「リュック、今忙しいんだが・・・」
「君はいつでも忙しいだろうが! スカボロの伝言だ。リトル・セーラムは廃村で、誰も住んでいないとさ。食堂も営業していないと言っていた。君が行く必要はないそうだ。」
野球帽の男が戸口から配膳台に向けて撃ってきた。銃声と配膳台の金属板に弾丸が当たる音が響いた。
「何の音だ?」
とニュカネン。ダリルは正直に答えた。
「拳銃の発射音とテーブルへの着弾音。」
堅物ニュカネンは、一言「成る程」と言って、電話を切った。
ダリルが端末をポケットに仕舞うと、野球帽の男が声を掛けてきた。
「セイヤーズ、おまえがセイヤーズなんだな?」
「それがどうした?」
「いつも2人で行動しているんじゃないのか? 1人で来るとは思ってもみなかった。」
ヒギンズのことを言っているのだろう。ダリルはスカボロからの伝言の内容を考えた。スカボロはガセネタを掴まされた。ダリルに告げた後、自身で調べてガセだと気が付いて、ニュカネンに電話してきた。ガセネタを流したヤツは、ヒギンズが来るのを待っていたのだ。セイヤーズ・ドーマーだと信じて。
目的は誘拐か? それとも暗殺か?
「FOKか? 私の頭蓋骨の中に自分の脳を入れたいのか?」
「俺たちがそんな馬鹿なことを本気でやってると信じているのか?」
「ダウン教授は本気の様だが?」
「あの婆さんは可笑しいのさ。若い他人の体に脳を移植することが、若返りだと思っていやがる。金と施設を持っているから、ちょっと利用させてもらったがね。」
「では、君らの目的は何だ? 何の為にクローンを攫って殺している?」
野球帽の男がふふふと笑った。
「ドーマー、β-エンドルフィンって知っているか?」
「脳内麻薬だな?」
「幸福感を得られる有り難い物質だ。」
「それを抽出する為に、子供を攫って殺したのか?」
「子供と言っても、たかがクローンじゃないか!」
ダリルはカッとなって立ち上がった。殺傷能力のない麻痺光線を男に向かって連射した。
野球帽の男は壁の裏側に身を隠した。
「怒るなよ、ドーマー。おまえは殺しゃしないよ。女を生めるんだって? おまえ自身も女みたいに可愛い顔してるじゃないか。」
殺さないと言いつつ、彼はダリルに向かって銃撃をした。
ダリルはまた配膳台の裏に隠れた。
敵は弾丸の予備を装備しているらしい。こっちは光線のエネルギーが後10時間・・・麻痺光線だけだと知られたら、拙い・・・。