ポールの治療に関して素人が口をはさむ余地はなく、ダリルはJJを宥め、慰めるしかすることがなかった。JJはやっと落ち着きを取り戻し、ポールが倒れた時の状況を話してくれた。彼女は彼が珍しく研究室まで来てくれたので、嬉しくて彼の様子がおかしいことに気が付かなかったと悔やんでいた。部屋の入り口で今夜の予定はなどと他愛ない会話を始めてすぐに彼の呂律が回らなくなり、いきなり足許から崩れるように倒れたと言う。
当時室内に居たのは、JJとメイとジェリー・パーカーの3人だった。ジェリーがすぐに緊急コールのスイッチを押し、ポールを抱えてテーブルの上に寝かせ、メイがバイタルチェックを行った。その間にJJはダリルに電話をしたのだ。
医療区が隣で、場所が中央研究所と言うのが幸いして、ポールはすぐに医療区に運ばれた。医師は彼の症状を見て、すぐに原因がわかった。メイに一言「飽和だ」と告げ、彼女達を病室から追い出した。そこへダリルが駆けつけた訳だ。
JJを慰め、運動着のままで夕食迄付き合った。ジェリー・パーカーも一緒だ。ドーマーってのは厄介な生き物だなぁと彼の冗談めいた言葉で、ダリルもやっと笑う余裕が出来た。
「レインは髪を伸ばし始めたら、ライサンダーによく似てきたなぁ。」
とジェリーが感想を言った。ダリルは頷いた。
「私も、あそこまで似て見えるなんて思わなかった。息子は私の方に似ていると思っていたんだが・・・」
「ぱっと見はおまえ、じっくり見ればレインさ。」
そして、ジェリーは顔をダリルに近づけて、声を低くして尋ねた。
「レインは大統領にも似ているよな?」
ああ、やはり気が付いたか、とダリルは心の中で呟いた。ここで嘘をついても仕方が無い。それにジェリーは、ハロルド・フラネリーが政権の座にいる間は決してドームから外に出られないだろう。
ダリルは意を決して言った。
「君は口が固いから、打ち明けるが、ポールの父親はポールと言う名前だ。ラムゼイからドーマーの名前のルールを聞いたことがあるだろう?」
「ある・・・ああ、それで博士がアイツを捕まえた本当の理由がわかった。」
ジェリーが納得がいったと、大きく首を振った。
「大統領に対する人質にしたかったのか・・・身の安全を図る取引材料になるものなぁ・・・」
「私は時々ポールが可哀想に思える。彼はドームからもメーカーからも取引のネタにされるのだから。」
ジェリーがダリルを眺めた。
「おまえはどこかのお坊ちゃんじゃないのか?」
「私? さて・・・私はどこの生まれなのか、全く知らないんだ。知る必要がないし、知りたいとも思わない。ポールと違って、親も私の存在を知らない。多分、女の子と取り替えられたはずだし、その娘はもう良い小母さんになっている年齢だ。今更肉親の消息を聞いても懐かしさも何も感じないよ。」
「そうかなぁ・・・人間って、案外産みの親の存在を知ったら、爺さん婆さんになっても会いたいと思う動物だぜ。」
ジェリーは自分で自分の言葉に納得して頷いた。
「映画やドラマじゃ、そうなっている。」
そう言うジェリーには親はいないのだ。彼は古代人の遺体から生まれたクローンだから。 だから、ダリルはこう言った。
「ドーマーはそんな考えを持たない様に、赤ん坊の時から教育されるんだよ。」
その時、彼の端末に電話が着信した。画面を見ると、驚いたことに、セント・アイブス警察のスカボロ刑事からだった。
当時室内に居たのは、JJとメイとジェリー・パーカーの3人だった。ジェリーがすぐに緊急コールのスイッチを押し、ポールを抱えてテーブルの上に寝かせ、メイがバイタルチェックを行った。その間にJJはダリルに電話をしたのだ。
医療区が隣で、場所が中央研究所と言うのが幸いして、ポールはすぐに医療区に運ばれた。医師は彼の症状を見て、すぐに原因がわかった。メイに一言「飽和だ」と告げ、彼女達を病室から追い出した。そこへダリルが駆けつけた訳だ。
JJを慰め、運動着のままで夕食迄付き合った。ジェリー・パーカーも一緒だ。ドーマーってのは厄介な生き物だなぁと彼の冗談めいた言葉で、ダリルもやっと笑う余裕が出来た。
「レインは髪を伸ばし始めたら、ライサンダーによく似てきたなぁ。」
とジェリーが感想を言った。ダリルは頷いた。
「私も、あそこまで似て見えるなんて思わなかった。息子は私の方に似ていると思っていたんだが・・・」
「ぱっと見はおまえ、じっくり見ればレインさ。」
そして、ジェリーは顔をダリルに近づけて、声を低くして尋ねた。
「レインは大統領にも似ているよな?」
ああ、やはり気が付いたか、とダリルは心の中で呟いた。ここで嘘をついても仕方が無い。それにジェリーは、ハロルド・フラネリーが政権の座にいる間は決してドームから外に出られないだろう。
ダリルは意を決して言った。
「君は口が固いから、打ち明けるが、ポールの父親はポールと言う名前だ。ラムゼイからドーマーの名前のルールを聞いたことがあるだろう?」
「ある・・・ああ、それで博士がアイツを捕まえた本当の理由がわかった。」
ジェリーが納得がいったと、大きく首を振った。
「大統領に対する人質にしたかったのか・・・身の安全を図る取引材料になるものなぁ・・・」
「私は時々ポールが可哀想に思える。彼はドームからもメーカーからも取引のネタにされるのだから。」
ジェリーがダリルを眺めた。
「おまえはどこかのお坊ちゃんじゃないのか?」
「私? さて・・・私はどこの生まれなのか、全く知らないんだ。知る必要がないし、知りたいとも思わない。ポールと違って、親も私の存在を知らない。多分、女の子と取り替えられたはずだし、その娘はもう良い小母さんになっている年齢だ。今更肉親の消息を聞いても懐かしさも何も感じないよ。」
「そうかなぁ・・・人間って、案外産みの親の存在を知ったら、爺さん婆さんになっても会いたいと思う動物だぜ。」
ジェリーは自分で自分の言葉に納得して頷いた。
「映画やドラマじゃ、そうなっている。」
そう言うジェリーには親はいないのだ。彼は古代人の遺体から生まれたクローンだから。 だから、ダリルはこう言った。
「ドーマーはそんな考えを持たない様に、赤ん坊の時から教育されるんだよ。」
その時、彼の端末に電話が着信した。画面を見ると、驚いたことに、セント・アイブス警察のスカボロ刑事からだった。