ケンウッドがワグナーにジェリー・パーカーのことを説明する間も無く、女性用ゲートから一人の少女が現れた。先刻のパーカーが消毒の後寝巻きを着せられていたのと同様に、彼女も寝巻きにガウン姿だった。少女の身体情報が少なかったので、被服班が用意できたのはその程度だったのだ。それでも彼女は気にしていなかった。
ケンウッドはダリル・セイヤーズ・ドーマーから彼女に関する情報を前もってもらっていた。どう言う訳か口が利けず、性格は明朗で勇敢、優しい面もあるが、世間の常識はあまり知らない、と世間知らずのドーマーから聞かされていた。そしてセイヤーズはさらに重要で信じられないような情報も持っていた。
「JJはDNAが見えるのです。」
セイヤーズ自身は見たことがないので、少女がどんな風に染色体を見ているのか説明出来なかった。ただ彼女が螺旋状の絵を描き、どれが誰のDNAなのか見分けるのだと言う。
少女はケンウッドを見て立ち止まった。未知の人間を警戒するのは当たり前だ。今自分は彼女の目にどんな風に見えているのだろう。ケンウッドは少し不安になった。
少女はワグナーを見てニッコリした。航空機の中で親切にしてくれた男を見て、安心したのだ。彼女は自ら2人の男のそばに来た。ワグナーが紹介した。
「JJ、こちらがこのドームの最高責任者、ニコラス・ケンウッド長官だ。遺伝子学者でもあられる。」
そしてケンウッドに彼女を紹介した。
「長官、こちらはジュマ・ジェレマイア・ベーリングさんです。」
「こんばんは、ジュマ・ジェレマイア、当ドームにようこそ!」
ケンウッドが笑顔で手を前に出すと、少女はワグナーをもう一度見た。ワグナーが笑顔で頷いて見せると、彼女はやっとケンウッドの手を握った。柔らかで温かい人の手だった。遺伝子組み替えで作られた人であっても、温かい心を持った生きている人だ。
少女はメーカーの闘争で両親を殺害され、一人で砂漠の中に残された。セイヤーズ父子に発見された時は果敢にも抵抗した。川に転落したライサンダー・セイヤーズを泳いで救出し、助けを求めた相手が偶々通りかかったラムゼイだったのだと、ポール・レイン・ドーマーは接触テレパスで彼女から情報を引き出した。それを報告書に書いていた。
生まれてから外部と接触させらずに大切に家の中で育てられた少女。まるでドーマーだ。いや、ドーマー達が暮らすドームは彼女の家より広く、住人は多い。彼女は本当に箱入り娘だったのだ。それなのに、すぐに外の世界に順応しようとしている。
これは彼女の特殊能力なのか、それともただの性格から来るものなのか?
ケンウッドは精一杯愛想良く声をかけた。
「来てくれて嬉しいよ。しかし、色々大変な経験をしたね。疲れているだろうから、今夜はこれ以上引き留めはしない。ここの規則で医療区と言う病院施設で検査を受けてから、観察棟と言う施設に入ってもらう。暫くはそこで寝起きしてもらうことになるが、近いうちに君にもアパートの部屋を割り当てよう。快適に住んでもらえると嬉しいが。」
少女は笑顔で返事をした。きっと、よろしく と言ったのだ。女性保安課員が来て、彼女に医療区迄案内すると言った。ワグナーが声をかけた。
「医療区では、キャリーと言う医師が待っている筈だ。僕の妻だよ。君の世話を暫く担当することになるだろう。何か不満や疑問があれば彼女に訴えてくれれば、彼女が解決方法を考えてくれる。」
「おやすみ、ジュマ・・・」
ケンウッドは少女を早く休ませてやりたくて、ワグナーを遮る形になったが声をかけた。気の良いワグナーは気にしなかった。すると少女が指で何かを合図した。ワグナーが通訳してくれた。
「JJと呼んで、と言っています。」
「失礼・・・」
ケンウッドは苦笑した。
「おやすみ、JJ、良い夢を・・・」
ケンウッドはダリル・セイヤーズ・ドーマーから彼女に関する情報を前もってもらっていた。どう言う訳か口が利けず、性格は明朗で勇敢、優しい面もあるが、世間の常識はあまり知らない、と世間知らずのドーマーから聞かされていた。そしてセイヤーズはさらに重要で信じられないような情報も持っていた。
「JJはDNAが見えるのです。」
セイヤーズ自身は見たことがないので、少女がどんな風に染色体を見ているのか説明出来なかった。ただ彼女が螺旋状の絵を描き、どれが誰のDNAなのか見分けるのだと言う。
少女はケンウッドを見て立ち止まった。未知の人間を警戒するのは当たり前だ。今自分は彼女の目にどんな風に見えているのだろう。ケンウッドは少し不安になった。
少女はワグナーを見てニッコリした。航空機の中で親切にしてくれた男を見て、安心したのだ。彼女は自ら2人の男のそばに来た。ワグナーが紹介した。
「JJ、こちらがこのドームの最高責任者、ニコラス・ケンウッド長官だ。遺伝子学者でもあられる。」
そしてケンウッドに彼女を紹介した。
「長官、こちらはジュマ・ジェレマイア・ベーリングさんです。」
「こんばんは、ジュマ・ジェレマイア、当ドームにようこそ!」
ケンウッドが笑顔で手を前に出すと、少女はワグナーをもう一度見た。ワグナーが笑顔で頷いて見せると、彼女はやっとケンウッドの手を握った。柔らかで温かい人の手だった。遺伝子組み替えで作られた人であっても、温かい心を持った生きている人だ。
少女はメーカーの闘争で両親を殺害され、一人で砂漠の中に残された。セイヤーズ父子に発見された時は果敢にも抵抗した。川に転落したライサンダー・セイヤーズを泳いで救出し、助けを求めた相手が偶々通りかかったラムゼイだったのだと、ポール・レイン・ドーマーは接触テレパスで彼女から情報を引き出した。それを報告書に書いていた。
生まれてから外部と接触させらずに大切に家の中で育てられた少女。まるでドーマーだ。いや、ドーマー達が暮らすドームは彼女の家より広く、住人は多い。彼女は本当に箱入り娘だったのだ。それなのに、すぐに外の世界に順応しようとしている。
これは彼女の特殊能力なのか、それともただの性格から来るものなのか?
ケンウッドは精一杯愛想良く声をかけた。
「来てくれて嬉しいよ。しかし、色々大変な経験をしたね。疲れているだろうから、今夜はこれ以上引き留めはしない。ここの規則で医療区と言う病院施設で検査を受けてから、観察棟と言う施設に入ってもらう。暫くはそこで寝起きしてもらうことになるが、近いうちに君にもアパートの部屋を割り当てよう。快適に住んでもらえると嬉しいが。」
少女は笑顔で返事をした。きっと、よろしく と言ったのだ。女性保安課員が来て、彼女に医療区迄案内すると言った。ワグナーが声をかけた。
「医療区では、キャリーと言う医師が待っている筈だ。僕の妻だよ。君の世話を暫く担当することになるだろう。何か不満や疑問があれば彼女に訴えてくれれば、彼女が解決方法を考えてくれる。」
「おやすみ、ジュマ・・・」
ケンウッドは少女を早く休ませてやりたくて、ワグナーを遮る形になったが声をかけた。気の良いワグナーは気にしなかった。すると少女が指で何かを合図した。ワグナーが通訳してくれた。
「JJと呼んで、と言っています。」
「失礼・・・」
ケンウッドは苦笑した。
「おやすみ、JJ、良い夢を・・・」