2018年12月29日土曜日

新生活 2 1 - 6

「あー・・・夕食の時にケンタロウから聞きましたが・・・」
「知っていたのか!」
「病人ではありませんから、ドクターも保安課を使うことはなさらなかったし・・・」
「セイヤーズも一緒だ。それにクロエルもいる。」
「レインから秘書が必要なので、セイヤーズを採用したいと言う申請がありましたので、許可しました。彼に秘書としての心得でも教えていたのでは?」
「夜遅くにか?」
「レインが脱走したのは夕方でしたかね? セイヤーズと出会ったのはその後でしょう。私は食堂へ行く直前迄執務室でセイヤーズの口頭報告を聞いていましたから。」

 ハイネがのらりくらりと躱すので、ケンウッドは苛々した。

「そのセイヤーズだが、何故観察棟に戻っていないんだ?」
「さぁ・・・何故でしょう?」

 ゴーンはハイネがケンウッドに喧嘩を売っているのかと疑った。普段の遺伝子管理局長はドーム長官に従順で素直だ。しかしこの朝のハイネは老獪な面を見せていた。彼女は親しくしている出産管理区長アイダ・サヤカから聞いた忠告を思い出した。

 ハイネ局長が執政官の言うことを素直に聞かない時は、彼が怒っている時だと思えば良いわ。扱い方を間違えると臍を曲げてますます意地悪になるから、気をつけて。

 ゴーンは長官に顔を向けた。なんとか彼と目を合わせて、注意喚起したいのだが、ケンウッドはハイネを睨みつけているばかりだ。

「ハイネ、セイヤーズには地球の未来がかかっている重要な研究に協力してもらわなければならない。わかっているだろう?」
「観察棟の小部屋で座っているだけで、研究に協力していることになるのですか?」
「座っているだけとはなんだ!」

 ケンウッドは思わず大声を出してしまい、それから、しまった、と気が付いた。ハイネがビクッとした表情を見せたからだ。ローガン・ハイネは生まれた時から大事に育てられてきた。子供時代は大声で怒鳴られる経験をしたことがなかった。だから、歳を取っても誰かに大声で怒鳴りつけられると非常に怖がる、と以前の長官秘書だったロッシーニ・ドーマーから聞かされたことがあった。

 いかん、ハイネを本気で怒らせたかも・・・?

 必死で頭を回転させたケンウッドは、思い切って提案した。

「ハイネ、レインとセイヤーズをここへ呼んでくれないか?」