2018年12月9日日曜日

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「おはよう、ワグナー博士。」

 アイダ・サヤカが正規の医師であるキャリーに敬意を持って挨拶した。そしてすぐに言い直した。

「今日も良い日だと良いわね、キャリー。」
「ええ、サヤカ先生。」

 ゴーン副長官もおはようと挨拶して、2人はJJを見た。キャリーが紹介した。

「こちらは、ミズ ジュマ・ジェレマイア・ベーリング、JJと呼んであげて下さい。」

そして少女にも上司達を紹介した。

「副長官のラナ・ゴーン博士と出産管理区長のアイダ・サヤカ博士よ。アイダ博士は姓が先に来ます。医療区長のヤマザキ・ケンタロウ博士と同じよ。」

 JJは座ったままで手を差し伸べ、大人達に握手を求めた。ラナ・ゴーンもアイダ・サヤカも快くそれに応じた。

「おはよう、JJ、私のことはラナと呼んでくれて良いわ。みんな仕事の時は博士なんて呼ばないから。」
「おはよう、JJ、私もサヤカで大丈夫ですよ。男性ドーマー達は陰で、ママとかおばちゃんと呼んでますけどね。」

 JJは何か言おうと思ったのか、タブレットを見たが、結局それに触れずにただ笑顔を返しただけだった。彼女が口を利けないことは既に幹部執政官の耳に入っていたので、ゴーンもアイダも気にしなかった。
 2人の執政官は同じテーブルの空いた席に座ったが、朝食はどちらも既に済ませていたので、コーヒーを飲んだだけだった。ゴーンがこれからのJJの生活についてドームが計画していることを告げた。

「先ずは、貴女にここでの生活に慣れてもらわなければいけないわね。統制が取れていると言っても、男性ばかりの世界に近いので、女性は用心しなければなりません。だから暫くは貴女が寝起きする観察棟と中央研究所、そしてここ、出産管理区のスタッフ区域でドームのルールについて学習してもらいます。学力についてもちょっと調べさせてね。貴女がここで暮らすことを希望していると、ダリル・セイヤーズから聞いたのだけど・・・」

 JJが大きく頷いた。彼女はタブレットを引き寄せ、文章を入れた。

ーー外は広過ぎて怖い。ドームの中も広い。私はここで世界に慣れたい。

 キャリーが励ますように彼女の手を軽く叩いた。JJが彼女を振り返ってニッコリした。
 ゴーンが頷いた。

「わかりました。貴女はここで暮らすことを希望していると判断しますね。ここで暮らす人は皆何らかの仕事に就いています。何もしないで暮らすことは出来ません。貴女がここで暮らす為の知識をつけてもらいます。それから研究のお手伝いもしてもらいます。」

ーー赤ちゃんに関係する研究?

「ええ、そうです。」

ーー私はたくさん勉強したい。パパもママも赤ちゃんの研究をしていた。

 クローンの赤ん坊を製造して依頼者から金銭をもらっていたメーカーの両親だ。ゴーンもアイダもキャリーも内心複雑な思いだった。
 アイダが言った。

「貴女はきっとご両親より立派な遺伝子学者になれるわ。」