2018年12月22日土曜日

リンゼイ博士 2 1 - 4

 お昼を少し過ぎていた。ケンウッドはラナ・ゴーンとローガン・ハイネを自身の執務室に連れて行き、銘々の席に座らせた。

「打ち合わせをしなければならないが、時間が遅くなったし、今は気分的にも乗らないだろう。各自の予定確認で済ませよう。」

 それでゴーンが手を挙げ、彼女自身の予定を告げた。

「昨夜遺伝子管理局が押収してきたラムゼイの資料第2弾の分析に昼食後に取り掛かります。第1弾の整理はつきましたので、両方を合わせて今夜から本格的にラムゼイのクローン製造技術と手法を解いて行きます。」

 ケンウッドとハイネが頷くと、彼女は少し躊躇ってから提案した。

「ジェリー・パーカーが落ち着いたら分析の手伝いをさせたいのですが、よろしいでしょうか。」
「パーカーに?」

 ケンウッドは驚いた。ジェリー・パーカーはまだ鬱 状態が続いているので薬剤で治療中だ。それに彼はラムゼイの秘書だ。ドームの最重要部門であるクローン製造部に入れるべきではない・・・彼が反対しようとすると、ハイネが裏切った。

「それは良い考えかも知れませんな、副長官。パーカーはラムゼイの研究を一番良く理解していたでしょう。それに何かをさせることで、彼は精神的に安定すると思います。」

 ケンウッドはハイネの青みがかった薄い灰色の目で見つめられて、ドキドキした。反対しようとしたのを、ハイネが知っていて故意に妨害したのだと思えた。
 ゴーンも上司を見つめた。

「許可をいただけますか、長官?」
「うむ・・・」

 ケンウッドは渋々同意した。

「しかし、パーカーは外から来た人間だ。当分の間、保安課を監視に付ける。彼が破壊行動に出るのを防止し、彼自身を傷つける行為をしないよう見守る。それで良いかね?」
「結構です。それから・・・」
「まだ何か?」

 ゴーンはそんなに沢山要求していませんよ、と苦笑した。

「JJ・ベーリングを私の目の届く場所に置きたいのです。彼女はドーマーとして育ったのではなく、大人になりかけた年齢でドームに来ました。しかも外の世界すら十分に知らないまま、と言う稀なケースです。でも・・・」
「クロエル・ドーマーと似た環境の育ち方です。」

とハイネが彼女の言葉を継いだ。そうか、とケンウッドはストンと心に収まるものを感じた。ドームの人間として生まれたのではないが、外の世界の住人でもない。ジェリー・パーカーもJJ・ベーリングもクロエル・ドーマーと似た育ち方をしているのだ。だから、クロエルの養母であるラナ ・ゴーンは新しくドームに来た2人の男女を身近に置いて世話をしたいのだ。
 ケンウッドは大きく頷いた。

「クローン製造部は出産管理区とも密接に繋がっている。女性の数も多い。ベーリングをドームに馴染ませるには、貴女に預けるのが良いのだろう。承知しました。」