2018年12月9日日曜日

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 朝食の後、ラナ・ゴーン副長官はアイダ・サヤカ医療区長と別れて、キャリー・ワグナー・ドーマーとJJ・ベーリングを中央研究所の副長官執務室へ連れて行った。JJには脳波翻訳機の調整があるので、技師にも来てもらい、その場で先に用件を済ませてもらうことにした。
 キャリーに付き添いを頼んでから、彼女は部屋を出て、通路が無人であることを確認して、ケンウッド長官に電話を掛けた。

「ケンウッドだ。」
「ゴーンです。長官、お忙しいとは思いますが、半時間後に私の執務室へ来て頂けますか?」
「何かあるのかね?」

 勿論、何かあるから電話しているのだ。ケンウッドは自身の質問が馬鹿げていると気が付いた。

「すまん。半時間後に行くよ。行くのは私一人かね?」

 ゴーンは少し考えてから、ハイネ局長も呼んで下さい、と言った。

「ハイネは日課が終わる迄来ないと思うよ。」
「では、サヤカから連絡してもらいます。」

 ゴーンの提案に、ケンウッドが思わずクスッと笑った。

「その手があったか!」

 ラナ・ゴーンはハイネとアイダが秘密裏に結婚していることを知らない筈だが、雰囲気で察しているらしく、2人の邪魔をしないように常に心がけている。ハイネとアイダが目で交わす熱い会話が既に身近で働く人々の間では知られているのだ。結婚していると思わなくても、2人が恋人同士だと言う認識は幹部執政官達の中ではあるのだ。

「せめて用件のヒントだけでもくれないかな?」

 あまり隠し事が得意でない長官が言うので、ゴーンは折れた。

「JJ・ベーリングが見ていると主張しているものです。」

 ケンウッドが電話の向こうで息を飲んだ。ダリル・セイヤーズ・ドーマーが言っていた、少女が染色体を見ていると言う、その実証なのか。

「わかった、必ず行く。」

 通話を終えて、ゴーンは自室のドアを見つめた。

 さぁ、JJ、貴女が見ているものの正体を確認させてもらうわよ。