2018年12月10日月曜日

トラック    2  2- 7

  結局ハイネは多忙を理由に来なかった。アイダ出産管理区長も急に3名の妊婦のお産が始まったので持ち場を離れられず、ケンウッドが到着するとすぐにJJの「見ているもの」の検証が始まった。
 JJはお絵描きツールで図を描き、それを実際の遺伝子マップと比較した。キャリー・ワグナー・ドーマーとラナ・ゴーン自身の遺伝子だ。手描きに関わらず、JJは遺伝子マーカーの間隔を正確な比率で描いた。そして、誰のマップなのかも説明を聞く前に当てた。
ケンウッドはちょっと考えてから、少女が接触したドーマー達のマップを呼び出し、画面に出した。

「どれが誰なのか、君はわかるのかな? 君が昨日出会った人々のものだが・・・」

実は3名全く接触がなかった人物のものも混ぜておいたのだ。JJは大きな画面に表示された遺伝子マップを眺め、やがてポインターで3つを指した。脳波翻訳機が耳障りな音声で言った。

「この3人は知らない。」

 ケンウッドは驚いた。混ぜておいた無関係の人間のものだった。JJは一つを指した。

「Pちゃん」

 ケンウッドはゴーンとキャリーを振り返った。キャリーが肩をすくめた。

「多分、ポール兄です。」

 つまり、ポール・レイン・ドーマーだ。 JJはその隣を指した。

「名前知らない。でも昨日、一緒に飛行機に乗った人。」

 彼女は遺伝子管理局の局員達とゲート係のドーマーを区別して当てた。クラウス・フォン・ワグナー・ドーマーはちゃんとクラウスと名前を呼んで、キャリーをニッコリさせた。
 ケンウッドは開いた口が塞がらなかった。こんなことがあるだろうか? 肉眼で染色体を見ているなんて・・・。

「君は・・・その・・・遺伝子レベルで生物を見ているのかな?」

 JJは肩をすくめた。

「知らない。これが私の世界。」

 彼女には当たり前の光景なのだろう。
 ゴーンが新たな遺伝子のグループを表示した。JJが振り返り、首を傾げた。

「知らない人いっぱい。」
「男かしら、女かしら? 性別はわかる?」
「これは女の人のグループ。」

 JJは左から2番目のマップを指した。

「これは貴女、ラナ博士。」

 彼女は偶数番目に置かれている3人分のマップを順番に指した。

「貴女と同じ。他の人はキャリーと同じ。」
「それは・・・」

 ケンウッドが口を挟んだ。

「コロニー人と地球人が違うと言うことかね?」

 少女が彼を見た。

「コロニー人? この人達はコロニー人なの?」
「そうよ、私はコロニー人、キャリーは地球人。貴女も地球人。」

 ところが、JJは言った。

「違う。私はラナと一緒。キャリーとは違う。」