ポール・レイン・ドーマーは力のない声で説明した。
「俺はローガン・ハイネ・ドーマーが遺伝子管理局の局長であることにずっと疑問を抱いていました。あの人は執政官に可愛がられ大事にされて、一度もドームの外に出たことがありません。外の世界の危険を何も知らない人が、俺達のトップに居て良いのだろうか、と思っていたのです。」
ドーソンは黙って聞いていた。レインは続けた。
「あの人は俺達に何をどうしろとも言いません。メーカーの捜査も摘発も全部事後報告で・・・」
「それは違う。」
初めてドーソンが口をはさんだ。
「局員が具体的な活動を開始するのは、必ず班チーフが局長の了承を得てからだ。局長は毎日僕等局員全員の報告書に、全てその日のうちに目を通しておられる。活動に意味がなかったり、危険性が高いと判断されたら、直ぐに却下される。」
レインは動揺を覚えた。
「そうなのですか? 知りませんでした・・・」
「局長は一々僕等に説明などされないからな。通常は班チーフとしか面会されないから、君が知らないのは無理もない。だが、直接声をおかけすれば、きちんと説明して下さる。例えば、食堂やジムで・・・」
ドーソンはレインが食堂やジムで何時もファンクラブに取り囲まれていることを思い出した。この後輩は人気が高すぎて自由に動けないのだ。
ドーソンはニヤリと笑って付け加えた。
「レイン、局長に声をおかけすれば、ファンクラブから逃げられるぞ。」
レインは微かに頬を赤らめた。
「俺は本当にローガン・ハイネと言う人を誤解していた様です。」
「しかし、何故今そんなことを言い出したのだ?」
「昨日、ドームに帰投した時、局長が送迎フロアで俺達を待っておられたのです。」
「送迎フロアで?!」
これはドーソンも初耳だったらしく驚いた。カディナ黴の事故以来、ドーマーも執政官もハイネを送迎フロアに近づけまいと注意して見張っていたのだ。ドームの「生き神様」は外界の汚れから出来るだけ遠ざかって居て欲しかった。
レインは続けた。
「局長はニュカネンと俺をハグして、俺達の無事を喜んで下さいました。その時、俺はあの人の肌に触れて感じたのです。」
接触テレパスは嘘を感じない、真実の感情しか感じない。ドーソンは興味津々でレインの次の言葉を待った。
「あの人は、俺達を無償で愛してくれています。ひたすら俺達の無事を祈って帰りを待ってくれていたのです。」
ドーソンが微笑んだ。そんな単純な真実を、この男は今頃気が付いたのか・・・。
「あの方は、僕等の父親なんだよ、レイン。君の言う通り、あの方は外の世界を何もご存じない。何もご存じないからこそ、僕等があの方の全てなんだ。だから、僕等はあの方の愛情に応える為に、常に安全に心がけて任務を遂行しなければならない。君等が無事に帰還したことをあの方が喜ばれるのは当然だ。」
「俺があの人を悪く思っていたことをお詫びするには、どうしたら良いのでしょう?」
ドーソンは思わず声をたてて笑ってしまった。
「そんなことを詫びる必要はないさ。あの方は君がどう思っていようと気になさらない。君が詫びたいと思うなら、これからも安全に気をつけて真面目に任務に励めば良い。そしてあの方が君になさる様に、君も後輩達に愛情を掛けてやれば良いのだ。」
レインは静かに立ち上がった。
「お疲れのところを、俺のつまらない気持ちを聞いていただいて感謝します。先輩の忠告を心に留めてこれからも任務に励みます。」
ドーソンも立ち上がった。
「忠告と言うより、ちょっとした入れ智慧をしてやろう。局長がチーズ好きなのは有名だろう? チーズ料理が出る日に一般食堂で張っていれば、絶対に局長を捕まえられる。」
「俺はローガン・ハイネ・ドーマーが遺伝子管理局の局長であることにずっと疑問を抱いていました。あの人は執政官に可愛がられ大事にされて、一度もドームの外に出たことがありません。外の世界の危険を何も知らない人が、俺達のトップに居て良いのだろうか、と思っていたのです。」
ドーソンは黙って聞いていた。レインは続けた。
「あの人は俺達に何をどうしろとも言いません。メーカーの捜査も摘発も全部事後報告で・・・」
「それは違う。」
初めてドーソンが口をはさんだ。
「局員が具体的な活動を開始するのは、必ず班チーフが局長の了承を得てからだ。局長は毎日僕等局員全員の報告書に、全てその日のうちに目を通しておられる。活動に意味がなかったり、危険性が高いと判断されたら、直ぐに却下される。」
レインは動揺を覚えた。
「そうなのですか? 知りませんでした・・・」
「局長は一々僕等に説明などされないからな。通常は班チーフとしか面会されないから、君が知らないのは無理もない。だが、直接声をおかけすれば、きちんと説明して下さる。例えば、食堂やジムで・・・」
ドーソンはレインが食堂やジムで何時もファンクラブに取り囲まれていることを思い出した。この後輩は人気が高すぎて自由に動けないのだ。
ドーソンはニヤリと笑って付け加えた。
「レイン、局長に声をおかけすれば、ファンクラブから逃げられるぞ。」
レインは微かに頬を赤らめた。
「俺は本当にローガン・ハイネと言う人を誤解していた様です。」
「しかし、何故今そんなことを言い出したのだ?」
「昨日、ドームに帰投した時、局長が送迎フロアで俺達を待っておられたのです。」
「送迎フロアで?!」
これはドーソンも初耳だったらしく驚いた。カディナ黴の事故以来、ドーマーも執政官もハイネを送迎フロアに近づけまいと注意して見張っていたのだ。ドームの「生き神様」は外界の汚れから出来るだけ遠ざかって居て欲しかった。
レインは続けた。
「局長はニュカネンと俺をハグして、俺達の無事を喜んで下さいました。その時、俺はあの人の肌に触れて感じたのです。」
接触テレパスは嘘を感じない、真実の感情しか感じない。ドーソンは興味津々でレインの次の言葉を待った。
「あの人は、俺達を無償で愛してくれています。ひたすら俺達の無事を祈って帰りを待ってくれていたのです。」
ドーソンが微笑んだ。そんな単純な真実を、この男は今頃気が付いたのか・・・。
「あの方は、僕等の父親なんだよ、レイン。君の言う通り、あの方は外の世界を何もご存じない。何もご存じないからこそ、僕等があの方の全てなんだ。だから、僕等はあの方の愛情に応える為に、常に安全に心がけて任務を遂行しなければならない。君等が無事に帰還したことをあの方が喜ばれるのは当然だ。」
「俺があの人を悪く思っていたことをお詫びするには、どうしたら良いのでしょう?」
ドーソンは思わず声をたてて笑ってしまった。
「そんなことを詫びる必要はないさ。あの方は君がどう思っていようと気になさらない。君が詫びたいと思うなら、これからも安全に気をつけて真面目に任務に励めば良い。そしてあの方が君になさる様に、君も後輩達に愛情を掛けてやれば良いのだ。」
レインは静かに立ち上がった。
「お疲れのところを、俺のつまらない気持ちを聞いていただいて感謝します。先輩の忠告を心に留めてこれからも任務に励みます。」
ドーソンも立ち上がった。
「忠告と言うより、ちょっとした入れ智慧をしてやろう。局長がチーズ好きなのは有名だろう? チーズ料理が出る日に一般食堂で張っていれば、絶対に局長を捕まえられる。」