ケンウッドは夕方迄研究室で彼自身の皮膚を分析した。放射能や細菌などの微生物が彼の皮膚を汚染した形跡はなかった。
「地球はもう安全な星に戻ったと思う。」
ケンウッドが呟くと、助手達の目が輝いた。
「しかし、私はたったの2日しか外にいなかった。これだけでは、安全宣言は出せない。」
「でもドーマー達は大丈夫じゃないですか?」
「地球人の皮膚とコロニー人の皮膚は耐性が異なるからね。コロニー人のひ弱な皮膚が耐えられると証明しなければ。誰か1年ばかり外で暮らしてみてくれないか?」
助手達は互いに顔を見合わせるだけだった。
「でも、昨年パーシバル博士とセドウィック博士は1週間旅行されましたよね?」
「彼等はスクリーンクリームを塗りたくっていたんだよ。」
それにキーラは半分地球人だ。公式にはコロニー人のシングルマザーの子供と言うだけで・・・。
アイダ博士から指定された時刻が近づいたので、ケンウッドは研究室を出た。助手達の半分はまだ残るようだ。彼等は論文を書くので熱心に研究を続ける。近頃研究室から遠ざかっているケンウッドはちょっと恥ずかしいが、時間が足りない。
中央研究所の食堂に行くと、マジックミラーの壁の脇で既に彼女とハイネ局長とヤマザキ・ケンタロウがテーブルに着いていた。ケンウッドが適当に料理を取ろうとすると、ハイネが素早く席を立って手伝いに来た。
「君は召使いじゃないんだから、座っていれば良いんだよ。」
気恥ずかしいので心にもないことを言ってしまったが、ハイネは気にしなかった。
「地球人が貴方を傷つけたのですから、地球人の私が介助しますよ。」
テーブルに着くと、アイダ博士が「では」と言った。
「打ち合わせを兼ねて夕食会を始めましょう。」
彼女はハイネを見た。ハイネ局長はこの夜はチーズ料理がなかったので大人しくしていた。彼に彼女が囁いた。
「ケンウッド博士は司祭役が良いと思う? それとも新郎の介添え人?」
「新郎? 司祭?」
ケンウッドはもう少しで大きな声を出してしまうところだった。ヤマザキも目を丸くした。
「結婚式をするのか? 送別会ではなく?」
「サプライズよ。送別会と見せかけて結婚式をするの。勿論略式だし、正式でないから・・・でも・・・」
アイダ博士はもう一度ハイネを見た。
「キーラの花嫁姿を見たいでしょう、局長?」
ハイネがきょとんとした。ドームの歴史が始まって以来この中で結婚式など行われたことがない。当然ドーマー達は結婚式と言う儀式を映画やドラマの中の遠い世界の行事だと言う認識しか持っていない。アイダ博士が言っていることを理解出来ないのだ。
「貴女は私にキーラに腕を貸して歩けと仰いましたが、それと関係があるのですか?」
あーっと理解したのはケンウッドとヤマザキだった。アイダ博士はハイネに父親として娘を新郎に引き渡す役目を果たさせたいのだ。司祭とか介添え人とか、そんなのは本当はどうでも良くて、長年上司として親友として共に働いて来たキーラに、父親に祝福されて結婚すると言う体験をさせたいのだ。ケンウッドは周囲に聞こえないよう声量に注意しながら、ドーマーの長老に言った。
「アイダ博士は君にキーラの父親として仕事をして欲しいと頼んでいるのだ。」
ヤマザキも言った。
「きっとギターをもらった時よりも彼女は喜ぶさ、ハイネ。」
ローガン・ハイネ・ドーマーは暫くコロニー人達の顔を順番に見て、ちょっと考えた。それから尋ねた。
「貴方方はどうやってキーラにドレスを着せるおつもりですか?」
「地球はもう安全な星に戻ったと思う。」
ケンウッドが呟くと、助手達の目が輝いた。
「しかし、私はたったの2日しか外にいなかった。これだけでは、安全宣言は出せない。」
「でもドーマー達は大丈夫じゃないですか?」
「地球人の皮膚とコロニー人の皮膚は耐性が異なるからね。コロニー人のひ弱な皮膚が耐えられると証明しなければ。誰か1年ばかり外で暮らしてみてくれないか?」
助手達は互いに顔を見合わせるだけだった。
「でも、昨年パーシバル博士とセドウィック博士は1週間旅行されましたよね?」
「彼等はスクリーンクリームを塗りたくっていたんだよ。」
それにキーラは半分地球人だ。公式にはコロニー人のシングルマザーの子供と言うだけで・・・。
アイダ博士から指定された時刻が近づいたので、ケンウッドは研究室を出た。助手達の半分はまだ残るようだ。彼等は論文を書くので熱心に研究を続ける。近頃研究室から遠ざかっているケンウッドはちょっと恥ずかしいが、時間が足りない。
中央研究所の食堂に行くと、マジックミラーの壁の脇で既に彼女とハイネ局長とヤマザキ・ケンタロウがテーブルに着いていた。ケンウッドが適当に料理を取ろうとすると、ハイネが素早く席を立って手伝いに来た。
「君は召使いじゃないんだから、座っていれば良いんだよ。」
気恥ずかしいので心にもないことを言ってしまったが、ハイネは気にしなかった。
「地球人が貴方を傷つけたのですから、地球人の私が介助しますよ。」
テーブルに着くと、アイダ博士が「では」と言った。
「打ち合わせを兼ねて夕食会を始めましょう。」
彼女はハイネを見た。ハイネ局長はこの夜はチーズ料理がなかったので大人しくしていた。彼に彼女が囁いた。
「ケンウッド博士は司祭役が良いと思う? それとも新郎の介添え人?」
「新郎? 司祭?」
ケンウッドはもう少しで大きな声を出してしまうところだった。ヤマザキも目を丸くした。
「結婚式をするのか? 送別会ではなく?」
「サプライズよ。送別会と見せかけて結婚式をするの。勿論略式だし、正式でないから・・・でも・・・」
アイダ博士はもう一度ハイネを見た。
「キーラの花嫁姿を見たいでしょう、局長?」
ハイネがきょとんとした。ドームの歴史が始まって以来この中で結婚式など行われたことがない。当然ドーマー達は結婚式と言う儀式を映画やドラマの中の遠い世界の行事だと言う認識しか持っていない。アイダ博士が言っていることを理解出来ないのだ。
「貴女は私にキーラに腕を貸して歩けと仰いましたが、それと関係があるのですか?」
あーっと理解したのはケンウッドとヤマザキだった。アイダ博士はハイネに父親として娘を新郎に引き渡す役目を果たさせたいのだ。司祭とか介添え人とか、そんなのは本当はどうでも良くて、長年上司として親友として共に働いて来たキーラに、父親に祝福されて結婚すると言う体験をさせたいのだ。ケンウッドは周囲に聞こえないよう声量に注意しながら、ドーマーの長老に言った。
「アイダ博士は君にキーラの父親として仕事をして欲しいと頼んでいるのだ。」
ヤマザキも言った。
「きっとギターをもらった時よりも彼女は喜ぶさ、ハイネ。」
ローガン・ハイネ・ドーマーは暫くコロニー人達の顔を順番に見て、ちょっと考えた。それから尋ねた。
「貴方方はどうやってキーラにドレスを着せるおつもりですか?」