昼食後、ケンウッドはハイネを誘って森へ行った。局長の日課は午前中で終わっていたので、ハイネは昼寝をしたそうだったが、少しの間だけ我慢させた。東屋はデートスポットとして人気があるので、既に執政官のカップルが座っていた。それで2人は植え込みの中に設置されたベンチの一つに並んで座った。なんだか美しいドーマーを口説いている様に見られそうだが、仕方がない。腰を下ろして落ち着くと、ケンウッドは思い切って尋ねた。
「ニュカネンはドームを去るつもりではないだろうか?」
ハイネは少し首を傾げた。
「どうでしょうか・・・彼からまだ希望は出されていませんが。」
「言い出すのを躊躇っているのだよ、きっと。『通過』を受けたのは、出るつもりだったのではないかな。」
ハイネが小さな溜息をついた。
「局員として大きな戦力になる可能性を秘めた男なのですがね・・・」
「可能性を持つ男だからこそ、出張所を任せられると思えないか?」
「勿論思います。しかし、私はまだ彼を手放したくありません。」
「それは私も同じだよ。私の体の上に覆いかぶさって守ってくれた、大事な恩人だし、危険な世界に彼を1人で放り出したくない。」
するとハイネが皮肉の笑みを浮かべた。
「危険と仰せですが、ここは地球で、彼も私も地球人です。」
「だが・・・ドーマーは世間知らずだ。我々が大切に育てたいと思うばかりに、君達に世俗の地球人社会のことを敢えて教えて来なかった。現実社会で生きていくには、ドーマー達は幼い子供同然だ、心配だよ。」
「しかし・・・」
ハイネは空を見上げた。
「セイヤーズは恐らく一人で生きていますよ。」
「セイヤーズ・・・か・・・」
陽気なブロンドの能天気な若者の顔が、ケンウッドの脳裏をかすめた。そしてその思い出を振り払うかの様に彼は首を振った。今はニュカネンの話だ。
「ニュカネンはきっとアンナスティン・カーネルと一緒に暮らしたいのではないかね? 私はそんな気がする。」
「貴方はニュカネンを外へ出せと仰せですか?」
ケンウッドはきっぱりと言った。
「君から彼に出ろと言う必要はないと思うが、彼の方から希望してきたら、反対しないでやって欲しい。」
ハイネの目が遠くを見つめた。半世紀も前の自身の恋を思い出しているのだろうか?
やがて、遺伝子管理局長は呟いた。
「セント・アイブスの出張所の準備全てを彼にさせましょう。上手くやり遂げて見せれば、独立を許します。しかし・・・」
彼はケンウッドを見た。
「ドーマーが外に出るのを許可するのは、長官ではないですか?」
「ニュカネンはドームを去るつもりではないだろうか?」
ハイネは少し首を傾げた。
「どうでしょうか・・・彼からまだ希望は出されていませんが。」
「言い出すのを躊躇っているのだよ、きっと。『通過』を受けたのは、出るつもりだったのではないかな。」
ハイネが小さな溜息をついた。
「局員として大きな戦力になる可能性を秘めた男なのですがね・・・」
「可能性を持つ男だからこそ、出張所を任せられると思えないか?」
「勿論思います。しかし、私はまだ彼を手放したくありません。」
「それは私も同じだよ。私の体の上に覆いかぶさって守ってくれた、大事な恩人だし、危険な世界に彼を1人で放り出したくない。」
するとハイネが皮肉の笑みを浮かべた。
「危険と仰せですが、ここは地球で、彼も私も地球人です。」
「だが・・・ドーマーは世間知らずだ。我々が大切に育てたいと思うばかりに、君達に世俗の地球人社会のことを敢えて教えて来なかった。現実社会で生きていくには、ドーマー達は幼い子供同然だ、心配だよ。」
「しかし・・・」
ハイネは空を見上げた。
「セイヤーズは恐らく一人で生きていますよ。」
「セイヤーズ・・・か・・・」
陽気なブロンドの能天気な若者の顔が、ケンウッドの脳裏をかすめた。そしてその思い出を振り払うかの様に彼は首を振った。今はニュカネンの話だ。
「ニュカネンはきっとアンナスティン・カーネルと一緒に暮らしたいのではないかね? 私はそんな気がする。」
「貴方はニュカネンを外へ出せと仰せですか?」
ケンウッドはきっぱりと言った。
「君から彼に出ろと言う必要はないと思うが、彼の方から希望してきたら、反対しないでやって欲しい。」
ハイネの目が遠くを見つめた。半世紀も前の自身の恋を思い出しているのだろうか?
やがて、遺伝子管理局長は呟いた。
「セント・アイブスの出張所の準備全てを彼にさせましょう。上手くやり遂げて見せれば、独立を許します。しかし・・・」
彼はケンウッドを見た。
「ドーマーが外に出るのを許可するのは、長官ではないですか?」