2018年9月23日日曜日

捕獲作戦  2 1 - 3

 遺伝子管理局長付き第2秘書アルジャーノン・キンスキー・ドーマーは支局から送られてくる申請書の振り分けを行なっていた。成人登録申請書、婚姻許可申請書、妻帯許可申請書、妊娠報告書、死亡届け等、地球人の人生にとって重要な書類ばかりだ。出生証明書だけは全ての地球人はドームで誕生すると言う建前があるので、支局は扱わない。例外はドームに行く余裕なく突然お産が始まって市井の病院で子供を産んだ場合だけだ。
 キンスキーは北米南部班担当地域の書類を分別する時に、タンブルウィード支局からのものに特別な注意を払っていた。北米南部班チーフ、ポール・レイン・ドーマーから慎重に扱って欲しいと頼まれていたからだ。理由をレインは言わなかったが、局長の承認済みだと言っていたので、なんとなく見当がついた。

 あの男が見つかったか・・・

 メーカーの捜査に関することなら、レインははっきりそう言う筈で、あの真面目な男が秘密にしたがるのは恋人か部屋兄弟に関することだけだ。たくさんの書類を振り分けしているうちに、キンスキーの手が止まった。養子縁組申請書だ。その数枚に赤丸が付いていた。タンブルウィードの若い秘書嬢は、イケメンの申請者の書類に赤丸を付ける癖がある。そして一番最初の書類の申請者名が、キンスキーが予想したものだった。
 キンスキーは局長の机を見た。局長は日課の作業に没頭していた。その前にある会議机には、秘書職の大先輩グレゴリー・ペルラ・ドーマーとジェレミー・セルシウス・ドーマーが居て、どちらも自分のコンピュータを持ち込んで検索作業を行なって居た。
 既に「黄昏の家」の住人兼管理者となって久しいペルラと、まだ妻との生活を楽しみたいが為にこちらの仕事に従事して頑張っているセルシウスは、どちらも90歳近い。だがまだ足腰はシャキッとしているし、頭も明瞭だ。彼等が何の作業を局長から命じられたのかキンスキーは知らなかったし、第1秘書のネピアも知らされていない様子だ。その証拠に、ネピアは大先輩が目の前にいるのが気に入らないらしく、いつも以上に無口でしかめっ面して自身の仕事に没頭していた。何かをしくじって先輩に指摘されるのが嫌なのだ。
キンスキーは、自分達がする時間を持てないから先輩達にお声が掛かったのだと理解していた。ネピアが不機嫌になるのは筋違いだ。もしネピアに指示が下されれば、忽ち時間の遣り繰りがつかなくなって、第1秘書は往生しただろう。
 キンスキーは先輩の仕事の邪魔にならない様心がけながら席を立ち、局長の側へ行った。失礼しますと声を掛け、そっと件の申請書類を差し出した。
 ハイネがチラリと視線を書類に向けた。そして呟いた。

「セイヤーズは見つけたか。」

 セイヤーズが見つかった、ではなく、見つけた、と局長は言った。キンスキーは内心驚いた。それでは・・・

 既にセイヤーズは見つかっていたのか・・・

 しかし、セイヤーズが何を見つけたのか、局長は目的語を言わなかった。ペルラ・ドーマーがこちらを見ていることにキンスキーは気が付いた。ハイネも気が付いて、声を掛けた。

「グレゴリー、君も見つけたか?」
「はい、1人・・・」

 するとセルシウスも言った。

「私も・・・どうやら、これが該当しそうです。」