2018年9月1日土曜日

4X’s 2 4 - 5

 一目惚れと言っても、彼女達が異性愛者であることをケンウッドは知っていた。宗旨替え出来るようなものではない。2人の女性は互いの性格や考え方に惚れ合ったのだ。

「私が勤務していた職場がパーティーを開いてね、その時にソフィアが社長の友人として来たの。政治活動抜きで。お忍びって言う訳には行かないけど、彼女は特に名乗ることもなく、私達に混ざって飲んで喋って楽しんでいたわ。そして私は彼女とお酒のテーブルで出会って、世間話から始まってお互いのイデオロギーとか、そんな話になって・・・」

 ヴァレリア・サントスはケンウッドを見てクスッと笑った。

「男の話もして・・・そしたら、お互い同じ男の話をしているって気が付いて・・・」

 ケンウッドはそれ以上聞きたくなかった。

「それはさぞや盛り上がったことだろうね。」

 彼はガラス壁をコツコツと叩いて、アイダの注意を引いた。そろそろ議員を戻せと言う合図だ。客は泊まっていく訳ではない。見学する予定の場所はまだある。時間が惜しい。
アイダは長官の意向を解して、ゴーンに何か囁いた。ゴーンが頷き、議員に声を掛けた。ケプラー議員が名残惜しそうに赤ん坊の保育器から離れた。彼女はアイダとスタッフのドーマーと握手して、ゴーンと共に通路に出て来た。アイダはもう政治家の相手はしないつもりなのか、中に残った。
 
「次はクローン製造施設に行きましょう。」

 ゴーンが彼女の領域にケンウッドとケプラー議員とサントス秘書を案内した。

「クローンは地球の母親や父親と遺伝的関係のあるコロニー人から卵子を借りて作るのでしょう? でも、妊娠がわかってから提供者を探しては間に合わないのではありません?」
「妊娠を待っていては間に合いません、確かに・・・ですから、婚姻届けが受理された時点で検索して探します。そのカップルに子供が出来るか出来ないか、それは問題ではないのです。赤ちゃんを地球に届けられる機会を少しでも無駄にしたくないのです。」
「では、卵子の提供もその時点で?」
「はいっ!」

 ゴーン副長官は提供者公募の仕事で培った営業用笑顔で元気よく答えた。