2018年9月12日水曜日

4X’s 2 5 - 10

 ドーマーは、ドームの外で48時間しか活動出来ない。それ以上外にいると、抗原注射の効力が切れて、細菌や汚染された大気や紫外線に抵抗力のない純粋培養の彼らの体は、忽ち衰弱する。レインが細切れの捜査をしたくないことは、セイヤーズにも理解出来た。
限定された時間での捜査が一向に捗らないのは、18年かかったセイヤーズの捜索で証明済みだ。自分が動けないのなら、18年間外気の中で生活して「普通の地球人」並の体になった元ドーマーを使うしかあるまい。レインは仕事に関しては実に合理的な考えを持つ人間だった。セイヤーズは恋人で幼馴染で部屋兄弟であるこの男の考え方を十分理解出来た。

「この娘を見つけたら、私は報酬に何を得られるんだ、ポール?」

と彼は尋ねた。
 レインは、ここへ来る前にドーム長官ケンウッドと交わした約束を提示した。

「君を捜索第1優先対象から除外してやる。」

さらに、ここへ来てから思いついた条件も・・・今この瞬間に思いついたのだが・・・付け加えた。

「息子の子孫登録をしておいてやる。今日、帰ったらすぐにやっておく。」

 セイヤーズが横を向いて呟いた。

「君がここに残るって言うのはないんだな・・・」
「それなら、今すぐ君を車に押し込んでドームに帰るさ。」

 2人は目を合わせた。暫く見つめ合った。睨み合ったと言った方が良かった。微かな緊張感が彼らの間に流れた。どちらも互いに相手がそばに居てくれることを期待して居た。同時にそれが叶わぬ希望だと言うことも承知して居た。
 やがて、セイヤーズが尋ねた。

「妻帯の夢は叶えたのか?」
「クローンの女は欲しくないんだ。」
「コロニー人は地球人と添わないだろう?」
「今は、妻帯に興味がない。」

 レインは心の中で呟いた。

 俺が今欲しいのは、おまえだけだ、ずっと探していたんだぞ。それなのに、こんなド田舎で、子供を作って・・・

 彼は立ち上がった。別れを告げると、セイヤーズは気が抜ける程あっさりとその挨拶を受け入れた。レインは連絡方法を伝え、いかにも自然に見えるように振舞いながら、石造りの家を出た。