2018年9月10日月曜日

4X’s 2 5 - 8

 レインの詰問口調に、セイヤーズは否定しなかった。

「私の息子は遺伝子管理局の目を盗んで産まれた。私が創ったんだ。」
「ダリル・・・」

 レインは首を振った。彼の恋人は恐ろしい違反を犯したことを告白したのだ。一般人が違法クローン製造を依頼すれば、教育刑1年又は2年を食らう。しかし、外で暮らす元ドーマーが同じことをすれば、ドームに強制収容され、観察棟で反省する迄幽閉処分となる。期限はない。反省したと執政官会議で認められる迄だ。そして違法クローンの子供は取り上げられる。2度と親に戻されることはない。親が刑期を終えれば再び子供と一緒に暮らせる一般人の場合と違って、元ドーマーは厳しい罰を受けるのだ。

「君なら、申し込めばいつでも養子がもらえたはずだ。何故、そんな違法を・・・発見されれば再教育は免れられないぞ。息子は管理局収容所に収監される。君の子供ではなくなるんだ。
わかっているだろう、君自身の仕事だったんだから。」

 セイヤーズはレインを見つめただけだった。やがて彼は席を立ち、レインの隣に移動した。レインは動じなかったが、タンブラーをテーブルに置いた。セイヤーズの「魂胆」が理解出来た。18年前と同じだ。レインの誘いに乗って、しかし自分の思いつきを実行してしまう。
 レインは誘惑に乗るまいと己に言い聞かせ、相手に言った。

 「俺は君を告発しに来た訳ではない。息子の件は俺しか知らない。君が仕事をしてくれるなら、目をつぶる。息子が婚姻する折にはデータを改竄して守ってやってもいい。兎に角、今は仕事をして欲しい。困っているんだ。」

  セイヤーズが彼の膝に手を置いた。レインは彼が自分を欲しがっていることがわかった。しかし、今はヨリを戻しに来ているのではない。人類の存亡がかかっているかもしれない女性を捜索している最中なのだ。
 硬い表情の彼の顔を見て、セイヤーズは恋人が任務のことしか頭にないと悟った様子だった。小さく溜め息をついて言った。

「わかった、話を聞こう。」