2018年9月3日月曜日

4X’s 2 4 - 9

 え〜、と言う顔のゴーン副長官と違って、ハイネ局長は恐らく冗談なのだろう、こう言った。

「長官は、ハーレムをお持ちだったのですか?」

 ケンウッドは思わず吹き出し、女性達も一瞬の沈黙の後に爆笑した。その笑い声で周囲のテーブルに居た人々が彼等に振り向いた。
 笑いの発作をどうにか押さえつけて、ケンウッドはハイネを見て言った。

「ハーレムは男の夢だね。だが、私はハーレムを持てる程裕福じゃないし、モテたりしないよ。それに二股かけるのは趣味じゃない。」

 アイダ・サヤカと言う正妻がいながら、お誕生日ドーマーに指名されると喜んで女性執政官のお相手をするハイネは、皮肉っぽく返した。

「では、この方々との婚約には、時間差があるのですね?」
「ヴァレリア・サントスと別れて3年後にソフィア・ケプラーと出会った。」

 ゴーンがケンウッド、サントス、ケプラーを順番に見比べた。

「もし差し支えなければ、お別れになった理由をお聞かせ願えません? 今なら笑い話に出来るのではないかと思いますが?」

 これまでの女性客2人の様子から判断して、彼女達は互いに同じ男性を愛した者同士と認識し合っている。ゴーンはそう確信していた。
 ケプラーとサントスが互いの視線を交わし合った。どちらが先かと尋ね合ったのだろう。 すると、ケンウッドがゴーンに向かって言った。

「私はサントスに捨てられたんだよ、ゴーン博士。」
「えっ?」
「私は当時化粧品会社の新商品開発部に雇われていた。大学に残りたかったが、研究者が大勢いて、席が足りなかったんだ。だから民間企業の雇われ科学者をしていたんだが、化粧品と肌の老化の研究は重なることが多くてね・・・ヴァレリアは試作品をテストするモデル達をマネージメントする会社で働いていた。打ち合わせに私の職場によく顔を出しているうちに言葉を交わすようになって・・・」

 サントスが彼に最後迄言わせなかった。

「当時のニコラスは真面目だけど陽気な学者だったのですよ。ハンサムだし、運動もしていたし、流行の話も豊富に持っていました。」
「それじゃ、今の私は陰気で、ハンサムではなくなって、運動をしない時代遅れの男みたいに聞こえるじゃないか。」
「誰もそんなこと、言ってません!」

 サントスは怒ったふりをしたが、目は笑っていた。

「彼の欠点は、女性のお肌をマジマジと見つめてしまうことだったのです。お肌の老化の研究家ですから、仕方がないことでしたけど、私も若かったので、彼が女性達を見境なく見つめるので、恥ずかしかったし、不満もありました。見つめるなら、私だけを見て欲しくて。」

 ケプラーが、わかるわかる、と首を振った。

「それに研究室に篭ると、彼はデートの約束も平気ですっぽかしたし・・・」
「デートの時も研究のことが頭に浮かぶと、会話が上の空になっちゃうのよね。」
「急に職場に戻ってしまったこともあったわ。」

 悪口の羅列にケンウッドがムスッとした顔をした。ハイネがクスクス笑った。ゴーンも笑っている。

「それで、長官をふったのですね?」
「彼がここの長官になると分かっていたら、私も我慢したでしょうけどね。」

 するとケプラーがゴーンを振り返って言った。

「私はヴァレリアとは反対に、ふられたんですよ。」
「そうなんですか?」
「私はジャーナリストでした。化粧品の成分を誤魔化した企業があって、それの解説を聞く為に、別の化粧品会社の研究者にインタビューしました。その時応対してくれたのが、ケンウッド長官で、私達、すぐに意気投合してしまいました。 一緒に住むところ迄は順調に進んだのですけど、私が政治にのめり込むようになると、彼は嫌気が差したのです。
そして、2年目の年始に、彼の方から別れ話が出ました。」

 ケプラーは悪戯っぽくウィンクした。

「私、人並みに泣きましたわ。でもすぐに気持ちを入れ替えて、別々の人生を歩むことに同意しました。」