2018年9月17日月曜日

4X’s 2 6 - 9

「4Xを見つけた時の報酬の代わりに、息子の出生を認める証明書を俺の権限で出してやると約束しました。」

 レインは肩を竦めて見せた。

「もっとも、チーフ会議で後の3人が拒否権を発動すれば、証明書は出せません。」

 彼はそれを承知でセイヤーズと約束したのだ。ハイネは小さく首を振っただけだった。レインはもう一つの約束を述べた。

「セイヤーズ自身は第一優先捜索対象から外すと約束しました。」

 ハイネが黙っているので、レインは再び付け加えた。

「既に彼の所在は確認していますから、捜索は終了しています。」
「策士だな、レイン。」

 ハイネが微かに笑った。レインはセイヤーズに嘘は言っていない。だが無効になっていることを約束しただけだ。
 レインが局長の目を見返した。

「俺にセイヤーズを逮捕させて下さい。他の者に彼を捕まえて欲しくありません。」

 生まれた時からずっと愛し合ってきた、とレインは心の中で呟いた。同僚や部下に手を触れて欲しくない。クローンの息子なんかに奪われたくない。俺たちは只の部屋兄弟じゃないんだ。
 ハイネが目の力を抜いた様に見えた。普段のぼーっとした表情になったのだ。彼は遠くを眺める顔で言った。

「ケンウッド長官が、必ずセイヤーズを取り戻せと仰せだ。」
「はい?」
「彼の遺伝子は地球に女性を取り戻す鍵を持っていると思われる。」
「そう・・・なのですか?」
「我々にとって、彼は必要な人間だ。必ず健康体の状態で捕まえてきて欲しい。」
「わかりました。」
「先ずは、4Xの保護を優先させる。彼が少女を確保したら、君が彼と彼女を確保する。」
「承知しました。」

 レインは、セイヤーズを捕まえるお墨付きをもらった。だが・・・

「息子はどうします?」

 ハイネが振り返った。

「長官の指示に息子の項目はない・・・今の所は。」
「・・・」
「取り敢えず、君自身の体調を整えなさい。万全の体調でなければ、セイヤーズは捕まえられない、そうだろう?」
「はい。」

 セイヤーズがどれだけの時間をかけて少女を探し出すかわからなかったが、レインは休息の時間は十分にあると思った。