2018年9月16日日曜日

4X’s 2 6 - 8

 レインは少し躊躇した。彼はセイヤーズと別れた後、山道を少し下ったところで少年と出会った。ちょっと会話を交わしたが、正直なところ良い雰囲気で話をしたとは言えなかった。少年はレインを敵視していた。ドームから父親を連れ戻しに来ている人間とわかっていたのだ。そして、レインにははっきりわかった・・・

「少年の名前はライサンダーと言います。髪の色は、黒い葉緑体毛髪です。目の色は水色・・・」

 ハイネの薄い青みがかった灰色の目がジッと彼の表情を見つめていた。レインは正直に言った。

「俺の子です。間違いありません。」

 ハイネが一瞬目の焦点をずらした様に思えた。否、ぼかしたと言った方が良いか? 思考に力を置いたのだ。そして直ぐに現状に戻って来た。

「セイヤーズは脱走の折に君の細胞を盗んだか?」
「そう思います。盗まれても可笑しくない状況でした。」
「少年は君に似ているのか?」
「俺にはわかりません。少なくとも、外観は俺と瓜二つではありません。寧ろ、全体の面影はセイヤーズです。俺は・・・パーツで・・・」

 ハイネがやっと視線をレインから外した。壁にはめ込まれているバイオチェックグラフの画面を見たが、レインの健康状態を確認した訳ではないだろう。

「ラムゼイはコロニー人だ。」

と彼は言った。レインは、そうなんですか、としか言いようがない。長官達が妙にラムゼイと言うメーカーに関心を寄せていた理由は解せた。コロニー人でメーカーと言うことは、密入星者だ。そして犯罪者だ。
 ハイネはそれ以上ラムゼイの正体には触れず、レインが出会った少年の分析にこだわった。

「君とセイヤーズに似ていると言うことは、君とセイヤーズの遺伝子を組み合わせていることになる。」
「・・・そうですね・・・」

 ただのクローンではなく、遺伝子組み替えの子供だ。野放しに出来ない。
 レインは気が重くなった。セイヤーズに子供の身分を保証してやると約束してしまった。気がつくとハイネが横目でこちらを見ていた。まだ何か報告があるだろうと目が言っていた。