2018年9月25日火曜日

捕獲作戦  2 1 - 7

 パーシバルは体を起こし、ハイネから離れた。施術台から降りてケンウッドの前に立った。

「セイヤーズは、元気なんだね?」
「レインの報告では元気そのものらしい。」

 ケンウッドは素直に喜べないこの「朗報」をどう伝えようかと考えたのだが、名案が浮かばなかった。

「らしい?」
「レインは彼に直接会った。だがセイヤーズからこちらへのメッセージは何もない。戻りたいと言わないんだ。」
「もうサンテシマはいないじゃないか。」
「ドームの外の暮らしに馴染んでしまったんだよ。」
「普通のドーマーなら目を瞑ってやれるだろうが・・・」

とヤマザキ。彼はハイネが身を起こしたので服を手渡した。ハイネは日課を終えたので私服だ。最近オフの時間は私服が多い。昔のような運動着やスーツの着崩し姿でドーム内を歩き回らなくなった。結婚すると服装も変わるのか、とヤマザキがからかったことがある。ハイネは照れ臭そうに微笑んだだけだった。
 パーシバルはセイヤーズがドームに帰って来たがらないことを心配した。セイヤーズは進化型1級遺伝子を持っている。野放しに出来ない危険な能力を持っているのだ。だから遺伝子管理局は絶対に彼を連れ戻さなければならない。そしてその役目を負うのは、彼の恋人だったレインだ。レインは彼を見逃してやるつもりなどない。それはパーシバルにもわかっていた。レインにとってドームは神聖な「自宅」で「故郷」だ。それを裏切る者は決して許さない。恐らくセイヤーズを麻痺光線銃で撃って動きを封じ込めてから捕まえるだろう。セイヤーズが怒ってもレインは命令に従うのだ。
 パーシバルはハイネを振り返った。ドーマーを統率するこの男が、セイヤーズをどう扱うか、それがセイヤーズの今後に大きな影響を与えるのは間違いない。

「ヘンリー、今夜は泊まるのだろう?」

とケンウッドが尋ねた。

「ハイネの部屋に集まらないか? グレゴリーも来る筈だ。」
「勿論、ハイネがお招きして下さるなら。」

 ハイネがニッコリした。

「勿論、お招きさせて頂きます。」
「サヤカは・・・」
「私の部屋は今でも女人禁制です。」

 彼は付け加えた。

「それに彼女は今夜は夜勤当番ですから。」
「嫁さんが働いている時に、亭主が飲んだくれるのかい?」

 パーシバルがからかっても、ハイネは怒った風でなく、ヤマザキの方を見た。ヤマザキが苦笑した。

「僕も今夜は夜勤じゃないので、飲めるよ。」
「明日、セイヤーズが戻って来たら会うかね、ヘンリー?」
「否・・・」

 珍しくパーシバルは尻込みした。

「僕がここに居た時代はサンテシマが支配して居た時と重なる。ポールは気にして居ないが、セイヤーズはあまり良い思い出を持って居ないだろう。僕はあの子がここで落ち着いて、僕のことを思い出してくれたら、その時に会うことにするよ。」