2018年9月13日木曜日

4X’s 2 6 - 2

 ケンウッドは小会議室を出て、隣の長官執務室に戻った。どうしても長官の署名が必要な書類を片付け、秘書と翌日の打ち合わせをすると、既に夕刻だった。小会議室ではまだ数名の科学者が資料の分析を続けていたが、ケンウッドは自身の体調維持の為に、その日の業務に一区切りつけた。先刻発見したことを教えたい人がいた。彼は執務室を出て、歩きながら端末で電話を掛けた。
 相手はなかなか出なかった。こんな場合、先方は寝ている・・・。ケンウッドは相手の位置情報を探り、庭園の一角を突き止めた。食堂で待ち合わせする手もあったが、出来ればまだ他の人間に教えたくなかった。ダルフームも同じ思いだったので、どちらも小会議室に居合わせた人々に何も教えていないのだ。
 ケンウッドは中央研究所を出た。足早に歩いていると、向かいからヤマザキ・ケンタロウがやって来た。この男にも知らせたい。ケンウッドは声を掛けた。

「時間を取れるかね、ケンタロウ?」

 ヤマザキが足を止めた。

「取れる時間があるから、ここに居るんだが?」

 相変わらず素直な物言いをしない医者だ。ケンウッドは手を振った。

「ちょっと聞いて欲しいことがある。一緒にハイネのところへ行こう。」

 するとヤマザキは意味深な笑みを浮かべた。

「それは拙いんじゃないかな? 邪魔すると怒られるぞ。」

 ケンウッドは足を止めた。親友の顔を見て、言葉の意味を考えた。

「ハイネに怒られる? 一体・・・」
「野暮だな。」

 ヤマザキは引き返してケンウッドに並んだ。

「電話を掛けたか?」
「掛けたが出なかった。」
「じゃぁ、サヤカの端末に掛けろ。」
「アイダ君の?」

  ケンウッドが端末を出しかけると、ヤマザキはその手を抑えた。近くを若い執政官が通った。彼が通り過ぎてしまう迄待ってから、ヤマザキは言った。

「僕が場所を知っている。どうせ起こすんだから、直接行こう。」

 ケンウッドは彼が起こす相手を him ではなく、them で表現したので、やっと事態を理解した。