2018年9月11日火曜日

4X’s 2 5 - 9

「ラムゼイと言うメーカーを知っているだろう?」

 いきなりレインはセイヤーズの心臓を掴むような名前を出した。

「ラムゼイと言えば、この大陸の業界最大手だ。素人でも知っている。」

 セイヤーズが再会による興奮から急速に冷めていくのを、レインは感じた。
ラムゼイがライサンダーの製造元であることは間違いなさそうだ。
 2人は向かい合って座り直した。

「ベーリングと言う業者は知っているか?」
「いや。」
「ラムゼイに対抗していた新興勢力だった。」

 レインが過去形を使ったことにセイヤーズは気が付いた。

「ラムゼイに潰されたのか?」
「互いに潰し合ったんだ。そう、仕向けてやった。」

 レインがよく使う手だった。摘発に時間がかかる相手には、直接手を下すことはせずに、謀略を用いて自滅させる方向へ誘導する。抗原注射の効力が48時間しかないので、「通過」をしていない彼には、この方法が一番楽だった。時間と手間がかかるが、部下を危険に曝さずに済む。
 レインは簡単にラムゼイとベーリングの2つのメーカー組織の間で起きた抗争の過程を語った。セイヤーズは記憶にある昔の仲間の名前が出る度に目を輝かせた。懐かしいだろう? とレインは心の中で呼びかけた。みんな、まだお前を待っているんだぜ。
 4Xの話に至ると、セイヤーズは遺伝子管理局が少女を保護出来なかったことにショックを受けた。砂漠の中に、女性が貴重なこんなど田舎に、少女1人彷徨っていると言うのか?
 レインはポケットから端末を出して、写真を呼び出した。それをセイヤーズに見せた。

「ラムゼイの研究所にあった写真のコピーだ。ベーリングの研究所にも同じ子供のデータが残っていたから、この子に間違いなかろう。」

 セイヤーズは写真を眺めた。4Xは、綺麗な少女の姿をしていた。
年齢はライサンダーとあまり変わらないだろうか。普通の人間の女の子だ。
利発そうな目でカメラを見ている。

「遺伝子組み替えの少女なんだな?」
「恐らくな・・・メーカーたちは、ただ『4X』としか呼ばなかった。」
「多倍体であろうとなかろうと、女の子は今の地球では貴重な存在だ。一人で外を歩かせては駄目だ。」
「そんなことはわかっている。」

レインは端末を仕舞った。

「だから、探して欲しい、と君に頼みに来たんだ。」