2018年9月24日月曜日

捕獲作戦  2 1 - 5

 ポール・レイン・ドーマーはそろそろ外の支局巡りに出ようと思っていた。代替薬剤は体から抜けたし、溜まっていた事務仕事も全部片付いた。部下達ばかり外で働かせて自身が1人安全圏のドームに留まっていることは、彼の性分に合わなかった。そこへ、局長第1秘書ネピア・ドーマーから連絡が入った。昼食を終えたら長官執務室に顔を出すようにと言う指示だった。レインは訊かなくて良い質問をしてしまった。

「その昼食とは、長官のですか、俺のですか?」

 ネピアはそんな質問をされるとは予期していなかったのだろう、ムッとした声で答えた。

「一般的な昼休みと言う意味だ。」

 そしていきなり通話を終わらせた。レインは溜め息をついた。ネピア・ドーマーにあまり良い印象を持たれていないことは知っていた。それでも、優しいペルラ・ドーマーやセルシウス・ドーマーの時代が懐かしかった。
 取り敢えず「一般的な昼休み」を、局長の昼休みと捉えて、食堂で厨房班に局長が昼食を終えたら教えてくれと依頼すると、彼自身は早々と昼食を終えて図書館で休憩した。昼寝をしないように気をつけて、個室ブースで瞑想した。連絡が入ったのは1時半だった。局長のランチタイムにしては半時間早い。やはり局長も長官に呼ばれているのだろうと見当をつけて中央研究所へ急いだ。
 エレベーターホールでケンウッド長官とハイネ局長に出会った。挨拶をして、一緒にエレベーターに乗り、長官執務室に入った。その間は仕事の話は誰からも出ず、長官と局長は前夜の深夜放送の映画の話をしていたが、レインは見なかったので会話に入って行けなかった。ぼんやりとお偉いさん方もコメディが好きなんだな、と思っただけだ。
 長官執務室に入ると、ケンウッド長官は2人の秘書を隣の小会議室に追い払った。秘書達は慣れているので、直ぐに移動して行った。扉が閉まると、長官は定位置の席に着いた2人のドーマーを見た。話があると言ったのは、ハイネだ。

「それで? ハイネ、何か進展があったのかね?」

 長官の言葉で、レインはハッとした。セイヤーズが支局経由で何か言って来たのだ。連絡用に端末を渡しておいたが、あの男はそれを使わない。ドームの外からかけられる電話は全て保安課が発信元を記録する。それを警戒しているのだ。
 ハイネが養子縁組申請書を出してコピーを長官とレインに配った。ケンウッドは申請者の氏名欄に書かれたセイヤーズの名前を認め、レインに物問いたげに視線を向けた。レインは言った。

「セイヤーズが4Xを見つけて確保したようです。」

 あの男ならやれると信じたのは正しかった。レインは誇らしげに思い、同時に不安を感じた。それで、これから俺はどうすれば良い?
 ハイネ、とケンウッド長官が局長を呼んだ。

「少女もドーマーも必要だ。地球の未来の為に、彼等の協力が必要だ。」
「善処します。」

 ハイネ局長がそう答え、レインに向き直った。

「全ての予定を後回しにして、ダリル・セイヤーズと4Xの確保を優先せよ。」

 滅多に部下に命令をしないローガン・ハイネ・ドーマーが、明確に命令を下した。レインは恭しくそれを受けた。