2019年1月6日日曜日

対面 2 1 - 2

「レインは大統領の母親に会いに行ったのか?」
「正確には、ラムゼイの事件にどの程度フラネリー家が関与しているのか、尋問に行ったのです。」

 ケンウッドは正直呆れた。ポール・レイン・ドーマーは自身とフラネリー家の関係を知らない。ラムゼイと関係があったトーラス野生動物保護団体の理事の一人としてアーシュラ・R・L・フラネリーを見ている。彼女の思考を接触テレパスで読み取って、息子の大統領ハロルド・フラネリーが犯罪に関わっているかどうか、確認に行ったのだ。ハイネは彼等の関係を知っていて、黙って行かせたのだ。勿論ハイネだって大統領一家がどこまでトーラス野生動物保護団体の裏側を知っているのか、わからないのだろうけど。
 ケンウッドはハイネに確認した。

「セイヤーズも同行したのだろうね?」
「はい。一緒に行きました。彼が繋ぎをつけたのですから。」

 パーシバルは心配そうに呟いた。

「ポールは接触テレパスがある。母親にもあるんだよな?」

 レインとフラネリー家の関係は、20年も前にケンウッドから聞いていた。ケンウッドは、ポール・フラネリー元ドーマー、つまりハロルドとポールの兄弟の父親その人から直接聞いたのだ。
 ケンウッドはパーシバルを安心させようと、セイヤーズから聞いた話をした。アーシュラもハロルドも接触テレパスの能力を持っており、地球人の現状とドームで行われている事業、即ち取り替え子の事実を知っているのだと。
 ヤマザキが別の心配をした。

「フラネリー家の取り替え子の娘は、事実を知っているのだろうか?」
「それはない。」

とケンウッド。

「娘は能力を持っていないし、両親もハロルドも彼女がクローンだなんて教えないだろう。それにアーシュラは娘も愛している。メディアに登場する彼等は仲の良い母娘だ。演技には見えないよ。もっとも娘は結婚してヨーロッパに住んでいる筈だがね。」
「そうなのか・・・ポールが真実を知った時の反応が心配だよ。」

 ハイネが二杯目のお茶をカップに注ぎながらやんわりとパーシバルを窘めた。

「レインは大人です。感情に左右されたりしません。それにセイヤーズも彼を上手く制御出来ます。」
「母親は大丈夫か?」
「彼女は政治家の妻で母親です。無茶な言動は慎むでしょう。何より、長男のハロルドを守る為に自身の感情を剝きだす醜態は曝しません。」

 ケンウッドは、時々ハイネが政治家に見えた。事実、遺伝子管理局長と言う職は政治家の様なものだ。ドーム長官と同じだ。長官は政治家にならねばならない。駆け引き出来る人間でなければならない。

 駆け引き・・・

 ケンウッドは、セイヤーズがどのドームに帰属するのか、解決策を考えねば、と思った。