「そう言えば、今夜JJは初めて居住区側の食堂でドーマー達と食事をしたんだってね。」
とヤマザキが言ったので、ハイネが医師を振り返った。
「そうなのですか? 単独で観察棟から出て?」
「否、ゴーン副長官が同伴したらしいよ。」
ケンウッドが説明した。
「JJはレインとセイヤーズに会いたがっていた。セイヤーズは彼女を砂漠の廃墟で発見して数日間彼の家で保護していた。だから、彼女は彼を『父さん』と呼ぶんだ。多分、セイヤーズの息子を真似ているのだろう。セイヤーズも娘みたいに扱っている。ゴーンの報告では、彼等は親子として振舞っていたそうだよ。」
「レインとは、同じ人質同士の感情の共有だな。」
「彼女は口を使った会話が出来ない。翻訳機を通さずに話が出来るのは、レインの様なテレパシーを感じる能力者だけだ。だから彼女はレインに親密な時間を共有した者同士としての愛着を感じている。」
「ドームの中に友人がいるって言うのは良いことだ。」
ヤマザキはハイネが新しいウィンスキーをグラスに注ぐのをしかめっ面をしながら眺めた。
「セイヤーズは陽気だし、レインは無愛想だが面倒見は良い。ワグナーもキャリーも仲良くしてやっている様だ。キャリーは精神科医だが、女性の友人として少女にとっては大事だな。ゴーンはどうしても母親になってしまう。」
するとハイネが一口でウィンスキーを飲んでしまってから、意外な提案をした。
「あの少女には、メイ・カーティス博士との共同研究をさせればいかがでしょう?」
「カーティス博士と?」
ケンウッドは恋愛騒動で一旦離職した後、もう一度奇跡的に再雇用された女性研究者を思い出した。彼女は周囲にスキャンダル以外で認めてもらおうと仕事熱心なあまり、先日過労で倒れてしまったのだ。 年齢的にはJJよりずっと上だが、コロニー人なので見た目はそんなに年上に見えない。専門はクローンの養成だ。
「ウマが合うかどうか、わからんが、試してみる価値はあるな。2人が友達になってくれれば、JJのドーム生活は楽しくなるだろうし、カーティス君も精神的に安定してくれるだろう。」
「そこに彼も加えるのですよ。」
ハイネはまたウィスキーを注ごうとして、ヤマザキに壜を取り上げられた。抗議しようとした彼に、ケンウッドが尋ねた。
「彼とは?」
「ジェリー・パーカーです。ドクター、ここの酒は全部私のモノですよ!」
「君の健康管理は僕の仕事だよ、ローガン・ハイネ。」
「パーカーをJJとカーティスの組に加えるのかね?」
「パーカーはJJを知っているし、JJはパーカーを気にかけていると聞きました。つまり、少女にとってパーカーは悪い印象の人間ではないのです。」
「だが、親を殺したラムゼイの秘書だぞ。」
「だから?」
ハイネには、「親の仇は憎い」と言う考えがないらしい。ヤマザキが考え込んだ。
「そう言えば、あの娘はパーカーの容体を気にかけていた。憎い相手を心配したりしないだろう? ラムゼイの家で働いていた間に、きっと親近感を覚える様になったのだろう。」
「成る程、JJとパーカーの関係は良好だと期待出来るとして、カーティス博士はどうだろうね?」
「パーカーは優秀なクローン製造者に仕込まれたのでしょう。彼女の研究の良い助手になりますよ。」
うーむ、とケンウッドはグラスを片手に考え込んだ。その間にハイネはヤマザキから半ば強引にウィスキーの壜を取り返した。
「パーカーの精神状態がもう少し安定したら、考えてみよう。」
とヤマザキが言ったので、ハイネが医師を振り返った。
「そうなのですか? 単独で観察棟から出て?」
「否、ゴーン副長官が同伴したらしいよ。」
ケンウッドが説明した。
「JJはレインとセイヤーズに会いたがっていた。セイヤーズは彼女を砂漠の廃墟で発見して数日間彼の家で保護していた。だから、彼女は彼を『父さん』と呼ぶんだ。多分、セイヤーズの息子を真似ているのだろう。セイヤーズも娘みたいに扱っている。ゴーンの報告では、彼等は親子として振舞っていたそうだよ。」
「レインとは、同じ人質同士の感情の共有だな。」
「彼女は口を使った会話が出来ない。翻訳機を通さずに話が出来るのは、レインの様なテレパシーを感じる能力者だけだ。だから彼女はレインに親密な時間を共有した者同士としての愛着を感じている。」
「ドームの中に友人がいるって言うのは良いことだ。」
ヤマザキはハイネが新しいウィンスキーをグラスに注ぐのをしかめっ面をしながら眺めた。
「セイヤーズは陽気だし、レインは無愛想だが面倒見は良い。ワグナーもキャリーも仲良くしてやっている様だ。キャリーは精神科医だが、女性の友人として少女にとっては大事だな。ゴーンはどうしても母親になってしまう。」
するとハイネが一口でウィンスキーを飲んでしまってから、意外な提案をした。
「あの少女には、メイ・カーティス博士との共同研究をさせればいかがでしょう?」
「カーティス博士と?」
ケンウッドは恋愛騒動で一旦離職した後、もう一度奇跡的に再雇用された女性研究者を思い出した。彼女は周囲にスキャンダル以外で認めてもらおうと仕事熱心なあまり、先日過労で倒れてしまったのだ。 年齢的にはJJよりずっと上だが、コロニー人なので見た目はそんなに年上に見えない。専門はクローンの養成だ。
「ウマが合うかどうか、わからんが、試してみる価値はあるな。2人が友達になってくれれば、JJのドーム生活は楽しくなるだろうし、カーティス君も精神的に安定してくれるだろう。」
「そこに彼も加えるのですよ。」
ハイネはまたウィスキーを注ごうとして、ヤマザキに壜を取り上げられた。抗議しようとした彼に、ケンウッドが尋ねた。
「彼とは?」
「ジェリー・パーカーです。ドクター、ここの酒は全部私のモノですよ!」
「君の健康管理は僕の仕事だよ、ローガン・ハイネ。」
「パーカーをJJとカーティスの組に加えるのかね?」
「パーカーはJJを知っているし、JJはパーカーを気にかけていると聞きました。つまり、少女にとってパーカーは悪い印象の人間ではないのです。」
「だが、親を殺したラムゼイの秘書だぞ。」
「だから?」
ハイネには、「親の仇は憎い」と言う考えがないらしい。ヤマザキが考え込んだ。
「そう言えば、あの娘はパーカーの容体を気にかけていた。憎い相手を心配したりしないだろう? ラムゼイの家で働いていた間に、きっと親近感を覚える様になったのだろう。」
「成る程、JJとパーカーの関係は良好だと期待出来るとして、カーティス博士はどうだろうね?」
「パーカーは優秀なクローン製造者に仕込まれたのでしょう。彼女の研究の良い助手になりますよ。」
うーむ、とケンウッドはグラスを片手に考え込んだ。その間にハイネはヤマザキから半ば強引にウィスキーの壜を取り返した。
「パーカーの精神状態がもう少し安定したら、考えてみよう。」