遊びに行っても良いですか、とメッセが入ったので、アイダ・サヤカはどうぞと返信した。丁度バターとミルクたっぷりのフィナンシェが焼けたところだった。お皿の上に菓子を並べ、お茶の用意が出来たところへローガン・ハイネ・ドーマーが静かに入ってきた。出迎えたアイダを抱き締め、キスをした。外の世界の男性だったら花束とかアクセサリーとか、手土産を持ってくるのだろうが、私物を殆ど持たないドーマーにはプレゼントする物がなかった。それでも彼女には彼が部屋に来てくれるだけで十分だった。
「丁度フィナンシェが焼けたことろなのよ。」
と彼女が言うと、彼はもう一度キスをして、リビングのソファへ彼女を誘導した。
「好い香りですね。」
「ちょっとだけブランデーを入れてみたの。」
菓子に入れる香料としてのアルコール類は規制外なので自由に使える。ソファに並んで座ると、彼女は菓子を一つ手に取って彼の口元へ持っていった。ハイネは素直に食べさせてもらい。満足そうに微笑みを浮かべた。
「オブライアンに匹敵する腕前ですね。」
「よして下さい、彼の足元にも及びませんよ。」
照れ笑いするアイダをハイネは愛情の篭った目で見つめた。
「もしもの話ですが・・・」
「なぁに?」
「もし、明日ドームの事業が全て終わると言うことになったら、貴女はどうします?」
「え?」
アイダは彼の目を見た。ハイネが言葉を変えた。
「明日はもうドームがありません、と言われたら、どうします?」
「ドームがなくなる?」
一瞬何のことかと言おうとして、彼女は気が付いた。女の子誕生の鍵が発見されようとしているのだ。
研究の為に肉親から引き離され、ドームの閉鎖された世界で養育され、成人してからは地球を救う研究の為に働き続けるドーマー達は、ドームがその目的を果たしてしまったら、どうやって生きていくのだろう。若い者は良い、新しい仕事を探して学んで第二の人生を歩んで行ける筈だ。しかし人生の盛りを過ぎたドーマー達は、生きる術を失って見知らぬ外の世界に放り出されるのか?
アイダはハイネの髪を撫でた。100歳になってもまだ俗世の汚れを知らぬ純白の髪だ。
「私はずっと貴方のそばにいますよ、ローガン・ハイネ。」
「私は貴女を養う術を知りません。」
「私が働きます。」
彼女はハイネの上体を自身の体に引き寄せた。
「この世には、貴方がご存知ない職業がいっぱいあるのよ。ゆっくりと探せば、きっと貴方の才能を活かせるお仕事が見つかるわ。それまでは私に甘えて頂戴。」
ハイネは彼女を抱き締め返した。そしてアイダが予想しなかった言葉を彼は口に出した。
「ドームがなくなったら、子供を作ろう。」
彼女は彼の肩に顔を載せたまま微笑した。ドームがなくなる頃にはもう自分は生きていないだろうと思ったが、流石にそれは言葉にしなかった。
「丁度フィナンシェが焼けたことろなのよ。」
と彼女が言うと、彼はもう一度キスをして、リビングのソファへ彼女を誘導した。
「好い香りですね。」
「ちょっとだけブランデーを入れてみたの。」
菓子に入れる香料としてのアルコール類は規制外なので自由に使える。ソファに並んで座ると、彼女は菓子を一つ手に取って彼の口元へ持っていった。ハイネは素直に食べさせてもらい。満足そうに微笑みを浮かべた。
「オブライアンに匹敵する腕前ですね。」
「よして下さい、彼の足元にも及びませんよ。」
照れ笑いするアイダをハイネは愛情の篭った目で見つめた。
「もしもの話ですが・・・」
「なぁに?」
「もし、明日ドームの事業が全て終わると言うことになったら、貴女はどうします?」
「え?」
アイダは彼の目を見た。ハイネが言葉を変えた。
「明日はもうドームがありません、と言われたら、どうします?」
「ドームがなくなる?」
一瞬何のことかと言おうとして、彼女は気が付いた。女の子誕生の鍵が発見されようとしているのだ。
研究の為に肉親から引き離され、ドームの閉鎖された世界で養育され、成人してからは地球を救う研究の為に働き続けるドーマー達は、ドームがその目的を果たしてしまったら、どうやって生きていくのだろう。若い者は良い、新しい仕事を探して学んで第二の人生を歩んで行ける筈だ。しかし人生の盛りを過ぎたドーマー達は、生きる術を失って見知らぬ外の世界に放り出されるのか?
アイダはハイネの髪を撫でた。100歳になってもまだ俗世の汚れを知らぬ純白の髪だ。
「私はずっと貴方のそばにいますよ、ローガン・ハイネ。」
「私は貴女を養う術を知りません。」
「私が働きます。」
彼女はハイネの上体を自身の体に引き寄せた。
「この世には、貴方がご存知ない職業がいっぱいあるのよ。ゆっくりと探せば、きっと貴方の才能を活かせるお仕事が見つかるわ。それまでは私に甘えて頂戴。」
ハイネは彼女を抱き締め返した。そしてアイダが予想しなかった言葉を彼は口に出した。
「ドームがなくなったら、子供を作ろう。」
彼女は彼の肩に顔を載せたまま微笑した。ドームがなくなる頃にはもう自分は生きていないだろうと思ったが、流石にそれは言葉にしなかった。