2019年1月19日土曜日

対面 2 2 - 2

「覚悟?」

 ハイネがドーソンの言葉を繰り返したが、質問の響があった。どんな覚悟だ、と訊いたのだ。ドーソンは硬い表情で答えた。

「ドーマーの子供が犯罪に手を染めるのは許し難いことです。それもクローンに関係することなら尚更です。我々はクローンを人間として扱い、幸せな一生を送らせてやりたいと思っています。FOKは我々が逮捕したクローンを物扱いしていると世間に吹聴しているのです。誤解どころか悪意を感じます。特に罪のない施設職員を銃撃して負傷させ、子供達を無理矢理連れ去る暴力的な行為から、彼等が他人の幸福を願う団体だとは信じられません。警察が彼等を摘発するとなると、平和的な解決策を用いるとは必ずしも言い切れません。もし、そんな団体にセイヤーズの息子が入っていたら、逮捕の際に負傷するかも知れませんし、命を落とすことも考えられます。また無傷で捕まっても、セイヤーズは2度と息子に会えないでしょう・・・」

 するとハイネが言った。

「セイヤーズはここへ連れ戻された段階で、既に息子との再会を諦めていた。」

 そして、こうも言った。

「私はセイヤーズの人柄を見ていると、彼の息子がそんな暴力団体に入る人間に育ったとは思えないがね。 私は甘いのかな?」

 ドーソン・ドーマーは彼の言葉にドッと冷や汗をかいた。彼自身もハイネもセイヤーズの息子と会ったことがない。人柄も全く知らない。だが、あの無愛想なポール・レイン・ドーマーがあっさりと我が子と認め、陽気な面とは裏腹に他人の性格を鋭く見抜くクロエル・ドーマーがすっかり気に入ってしまっているのだ。それに堅物のリュック・ニュカネン元ドーマーもセイヤーズに苦情を言う割に息子に対しては何も文句をつけなかった。

「何も確認を取れていないことに、くよくよ悩んだ私が間違っていました。」

とクリスチャン・ドーソン・ドーマーは反省した。

「セイヤーズの身にあまりに多くの出来事が集中して、彼をあれ以上苦しめたくないと思うばかりに、私の方が神経質になった様です。」

 ハイネが優しく微笑んだ。

「君が後輩を気遣う気持ちは尊重する。確かに、セイヤーズの身辺は破茶滅茶だからな。ドームの中が彼に振り回されている感は否めない。
 FOKのニュースを教えてくれて有難う。私ももっと真剣に連邦捜査局と話し合わねばなるまい。それにしても・・・」

 彼は遠くを見る目をした。それは決して明るい目ではなかった。

「攫われた子供達はどんな環境にいるのだろうな・・・」