2019年1月1日火曜日

新生活 2 2 - 4

 ケンウッドが昼食後長官執務室に戻ると、月の地球人類復活委員会執行部から通信が入った。委員長のロバータ・ベルトリッチだ。彼女の用件はサタジット・ラムジー死亡のニュースを聞いたことだった。アメリカ・ドームからの連絡と宇宙連邦警察からの連絡が数分の差で届いたと言った。警察からの連絡は、地球の警察組織からの情報だ。死者がコロニー人だと判明したので、北米大陸連邦検察局が外交ルートを通じて連絡したのだ。

「とっくの昔に地球のどこかで死んでいると思っていたのだけど。」

とベルトリッチが感動のない顔で言った。

「親族の照会を頼まれたの。でも検索しても見つからないし、第一彼を委員会に採用した当時の職員は一人も残っていないのよ。採用記録を見ても、コロニーに息子が一人いるだけで、その息子が事故死したから彼はおかしくなったのよね?」
「そう聞いています。」
「では、遺体の引き取り手はコロニーにいないので地球で埋葬をお願いすると言うことで、この件は終了するわ。異存はないわね、長官?」
「ありません。すでにこちらの遺伝子管理局が埋葬許可を出す為の死亡認知に必要なデータ閲覧の許可を出しておきました。」

 すると委員長が初めて笑った。笑うと男性時代の豪快な性格がちょっと顔を出す。声をあげてワッハッハと笑うのだ。

「あのハイネが許可を必要とするの?」
「形式上必要らしいですよ。」

 ケンウッドも笑ってしまった。

「公文書になりますものね。わかったわ、許可してあげて頂戴。既に閲覧しているでしょうけど。だって、身元照合をしたのは局員でしょう?」
「元局員です。」
「それだって、照合に使ったのはコロニー人のリストの筈よ。どこからデータを引っ張ったのかしら?」

 全く、とケンウッドは苦笑するしかない。古いデータを残しておいたのだろうが、その大元は内務捜査官時代のハイネが執政官に無断でダウンロードしたものに違いない。

「それで・・・」

 ベルトリッチが真面目な顔に戻った。

「ラムジーが火星の博物館から盗んだモノが実は赤ん坊そのものだったと言うのは、本当だったわ。」
「確認が取れましたか?」
「連邦警察に揺さぶりをかけたら、簡単に認めました。但し、事実は公表出来ません。あくまでもジェリー・パーカーはクローンと言うことで世間に押し通します。」
「わかりました。」
「本人に教えるか否かは、そちらの判断に任せます。彼が地球を救えると良いのですけど。」
「私も期待しています。」