2019年1月8日火曜日

対面 2 1 - 4

  ドーマーがドームで育てられる第1の目的は、地球人の遺伝子を調べるサンプルを提供させられることだ。だからドーマー達は研究室に呼び出されることには慣れている。呼び出された場所で行われることが好きではないだけだ。普通は年に1回程度の呼び出しだが、遺伝子管理局の局員は「繁殖用」と呼ばれるだけあって、回数が多い。コロニー人の女性から提供される卵子に掛け合わせて女の子を創る実験に遺伝子を用いる為だ。
 午前10時に指定された部屋にドーマー達は集まった。普通は時間差で1人ずつ呼ばれるのに、今日は1度に7人だ。部屋には検査着が用意されていて、言われなくても彼等はそこで銘々着替えをした。監視カメラで見られていることもわかっている。不要な物を検査室に持ち込まない様に見張られるのだが、執政官達は自分が担当したいドーマーを品定めすることも出来るのだ。
 ケンウッドは担当になる予定の執政官達が浮き足立っているのを感じた。研究の手が空いている者からコンピュータが無作為に選出するのだが、「お勤め」の主催者となる執政官は必ず選出される。この日は当然ケンウッドが主催者だから、一番最初に一番を振り当てられるドーマーを検査する「名誉」が与えられる。選考候補の執政官達が興奮しているのは、今回のドーマー達が遺伝子管理局員ばかりでハンサム揃いだからだ。美貌のポール・レイン、同じく少女の様に可愛らしいパトリック・タン、顔も性格も良いクラウス・フォン・ワグナー、そして逮捕されて以来女性執政官しか触れられなかったダリル・セイヤーズ・・・。そして執政官達は知らなかったが、ジェリー・パーカーもいるのだ。
 パーカーを検査準備室へ連れて行く様にと指図された保安課長ゴメス少佐は不安そうに眉を顰めた。パーカーが抵抗して暴れるのではないかと心配したのだ。しかし遺伝子管理局から物言いが付かなかったので指図に従うことにした。
 観察棟から外出と聞かされてもパーカーは嬉しそうに見えなかった。検査で中央研究所に毎日呼ばれていたので、慣れていたが、保安課長自らが護衛となると少し緊張した様だ。いつもと違うとわかったのだ。

「もしかして、外の警察に引き渡されるのか?」
「そんなことはしない筈だ。いつもと同じ研究だろうよ。」
「でも、あんたが俺の護衛に着くのは初めてだ。」
「君を守るのか、他人を守るのか、俺もわからんのだ。」

 パーカーは後ろを振り返った。いつもの若い護衛がいないのが、更に彼を不安にさせていた。歩きながら、ゴメス少佐の逞しい筋肉質の体を意識した。こんな奴に押さえ込まれた絶対に抵抗不可能だろうと思った。

「あんた、コロニー人だってな?」
「そうだ。」
「重力は平気なのか?」
「毎日トレーニングしている。ここのコロニー人はそれを義務付けられているしな。」

 ふーん、と言いながら、パーカーは育て親のラムゼイ博士の重力サスペンダーを思い出していた。博士の足代わりの大切な機械だったのに、それが暴走して博士は死んだと聞かされていた。誰かが機械に細工した、と可愛い顔にゴメス並みの逞しい体のアフリカ系のドーマーが言っていた。

 誰が博士を殺したのか、必ず突き止めてやる。何年かかってもいい、復讐してやるんだ。

 ちょっと気分が昂ぶって、彼は早足になった。中央研究所の検査準備室は知っていた。だからゴメスの誘導がなくても彼は真っ直ぐにそこへ行き、ドアノブに手をかけようとした。ゴメスが一言「待て」と言った。パーカーは仕方なく手を引っ込め、ゴメスに場所を譲った。
 ゴメス少佐は静かにドアを開いた。室内にはドーマー達がいて、検査着に着替えてワイワイガヤガヤと喋っている最中だった。パーカーはびっくりした。そこにいたドーマー達は彼を逮捕したグループだったからだ。
 ゴメスがパーカーに入室を促した。ドーマー達に紹介はしない。パーカーは渋々室内に足を踏み入れた。いきなり開いたドアにドーマー達が一斉に振り返った。
 数秒間室内を沈黙が支配した。それを破ったのは、セイヤーズだった。陽気な彼はパーカーに声をかけた。

「やぁ、ジェリー! おはよう。」