遺伝子管理局北米北部班チーフ、クリスチャン・ドーソン・ドーマーにとって、局長ローガン・ハイネ・ドーマーは心から尊敬する父であり師でもあった。同時に何をおいても崇拝する神様みたいな対象だった。神様には世俗の汚れから遠ざかっていてもらいたい。それはハイネを育てた1世紀近く昔の執政官達と同じ思いだった。しかし、重要な事件の報告はしなければならない。しなければ、当のハイネ局長から叱られてしまう。
ドーソンは局長の日課が終わる頃合いを見計らって、ネピア・ドーマーに電話を掛け、局長に面会したい旨を伝えた。局長執務室での物事の進行の順番をきちんと守ったので、ネピア・ドーマーは快く局長の日課が終わる時刻を教えてくれた。
「10時過ぎに来なさい。11時の長官執務室での打ち合わせ会迄の時間なら面会して下さる。それ以降は午後3時だ。」
「では、直ぐに伺います。」
ドーソンは正確に10時に局長執務室のドアをノックして入室した。ネピア・ドーマーが真面目くさった顔で頷いて、局長に声を掛けた。局長は既に日課を終え、セイヤーズとの面談も終えていたので、実は時間が余っていた。だからドーソン・ドーマーが用事があるとやって来たので、暇潰しを考えずに済んだ。
ドーソン・ドーマーはチーフ会議の時の彼自身の席に着いた。
「朝から押しかけてすみません。」
「構わない。仕事だろう?」
「はい。あまり愉快な話ではないので、気が引けます。」
と言いつつも、ドーソンは素早く自身の端末で会議テーブルの上にニュース映像を出した。建物が映し出された。警察の規制線が張られ、救急車や警察車両が見える。
「今朝早い時間です。」
とドーソンが画面右下の時刻表示を見ながら言った。
「トロントのクローン収容施設がFOKに襲撃されました。職員3名が重軽傷を負わされ、子供が9人、攫われました。」
「これで3度目だな。」
ハイネの表情が曇った。執政官達にはまだ報告していない。これは地球人サイドの問題なのだ。「クローンの友」と名乗る組織が武装してクローン収容施設を襲い、収容されている子供達を誘拐する事件が北米北部で連続して起きたのだ。
「警察が捜査していますが、子供達の行方はまだわかっていません。」
「クローンの解放を謳っているが、子供達が何処へ連れて行かれたのか、何も手がかりがなかったのだな?」
ハイネもニュースは知っていた。収容施設は地球の政府機関だが、クローンを逮捕して預けるのは遺伝子管理局だ。事件は連邦捜査局から報告を受けていた。警備を強化すると連邦政府は言っているが、収容施設は子供を閉じ込める施設ではなく、親が刑期を終えるまで養育する場所だ。刑務所ではなかった。
「少し気になる情報があります。FOKのリーダーと目されるニコライ・グリソムと言う男が先日ナイアガラフォールズ近郊で目撃されていますが、その時、黒い葉緑体毛髪の少年を同伴していたそうです。」
ハイネが何も反応しないので、ドーソンは言い添えた。
「行方をくらませているセイヤーズの息子も黒い葉緑体毛髪を持っていますね?」
「珍しくない髪の色だ。」
「ええ・・・一応レインにセイヤーズが心配するといけないので前もって伝えておきましたが、レインもただの偶然だろうと言っています。ただ、その少年が誘拐された子供なのかどうか、それは不明です。」
ドーソンは面会の目的を伝えた。
「もしもの場合ですが、セイヤーズの息子が過激派に取り込まれた場合、セイヤーズにはそれなりの覚悟をしてもらいます。」
ドーソンは局長の日課が終わる頃合いを見計らって、ネピア・ドーマーに電話を掛け、局長に面会したい旨を伝えた。局長執務室での物事の進行の順番をきちんと守ったので、ネピア・ドーマーは快く局長の日課が終わる時刻を教えてくれた。
「10時過ぎに来なさい。11時の長官執務室での打ち合わせ会迄の時間なら面会して下さる。それ以降は午後3時だ。」
「では、直ぐに伺います。」
ドーソンは正確に10時に局長執務室のドアをノックして入室した。ネピア・ドーマーが真面目くさった顔で頷いて、局長に声を掛けた。局長は既に日課を終え、セイヤーズとの面談も終えていたので、実は時間が余っていた。だからドーソン・ドーマーが用事があるとやって来たので、暇潰しを考えずに済んだ。
ドーソン・ドーマーはチーフ会議の時の彼自身の席に着いた。
「朝から押しかけてすみません。」
「構わない。仕事だろう?」
「はい。あまり愉快な話ではないので、気が引けます。」
と言いつつも、ドーソンは素早く自身の端末で会議テーブルの上にニュース映像を出した。建物が映し出された。警察の規制線が張られ、救急車や警察車両が見える。
「今朝早い時間です。」
とドーソンが画面右下の時刻表示を見ながら言った。
「トロントのクローン収容施設がFOKに襲撃されました。職員3名が重軽傷を負わされ、子供が9人、攫われました。」
「これで3度目だな。」
ハイネの表情が曇った。執政官達にはまだ報告していない。これは地球人サイドの問題なのだ。「クローンの友」と名乗る組織が武装してクローン収容施設を襲い、収容されている子供達を誘拐する事件が北米北部で連続して起きたのだ。
「警察が捜査していますが、子供達の行方はまだわかっていません。」
「クローンの解放を謳っているが、子供達が何処へ連れて行かれたのか、何も手がかりがなかったのだな?」
ハイネもニュースは知っていた。収容施設は地球の政府機関だが、クローンを逮捕して預けるのは遺伝子管理局だ。事件は連邦捜査局から報告を受けていた。警備を強化すると連邦政府は言っているが、収容施設は子供を閉じ込める施設ではなく、親が刑期を終えるまで養育する場所だ。刑務所ではなかった。
「少し気になる情報があります。FOKのリーダーと目されるニコライ・グリソムと言う男が先日ナイアガラフォールズ近郊で目撃されていますが、その時、黒い葉緑体毛髪の少年を同伴していたそうです。」
ハイネが何も反応しないので、ドーソンは言い添えた。
「行方をくらませているセイヤーズの息子も黒い葉緑体毛髪を持っていますね?」
「珍しくない髪の色だ。」
「ええ・・・一応レインにセイヤーズが心配するといけないので前もって伝えておきましたが、レインもただの偶然だろうと言っています。ただ、その少年が誘拐された子供なのかどうか、それは不明です。」
ドーソンは面会の目的を伝えた。
「もしもの場合ですが、セイヤーズの息子が過激派に取り込まれた場合、セイヤーズにはそれなりの覚悟をしてもらいます。」