2016年10月5日水曜日

出張所 11

 ライサンダーが父親を観察していた。ダリルが何かに思い当たったのだとわかったが、何に思い当たったのかは、彼にはわからない。だから、彼は少し躊躇ってから尋ねた。

「父さん、ドームに連れて行かれてから、Pちゃんと寝た?」

 ダリルは息子を見た。親に何と言う質問をするのだと少し腹が立ったが、顔には出さなかった。

「いや、互いにいろいろ忙しくて、そんな暇はなかった。」

何がどう忙しかったのか、それは言いたくなかった。言えば、ライサンダーはますます心配するはずだ。その代わりに・・・

「ライサンダー、今まではおまえの18歳の誕生日に明かそうと思っていたが、おまえは既に周囲からいろいろ聞かされて知識を持っているし、もう充分大人だから、今夜、ここで話しておきたいことがある。」

 ライサンダーが少し緊張した。ちょっと体を離して、座り直した。

「何? 俺の出生の秘密ってヤツ?」
「それもあるが・・・ポールと私のことだ。18年前に何があったかと言うこと。私がドームを逃げ出した理由とおまえを生んだ理由だ。」

 ライサンダーは壁を見つめた。何だか恐い話を聞かされるような気分だった。だから、

「おのろけ話だったら、聞かないよ。」

と言った。そんなんじゃない、とダリルは言った。

「私がおまえをポールの身代わりのつもりで生んだのではないと知っておいて欲しいんだ。おまえの18歳の誕生日に私はおまえのそばに居て一緒に祝ってやれる保証がないから。」

 ライサンダーは座っているベッドのシーツをグッと掴んだ。まるで遺言じゃないかと茶化そうと思ったが、言えなかった。
 父親は、ほんの数時間だけ自由をもらってドームから出て来ているだけだ。明日になれば・・・あるいはラムゼイを捕まえたら、またドームに連れ戻されてしまうのだ。

「大人しく聞いているから、話してよ。」