ケンウッド長官は尋問には慣れていないし、事情聴取を目的に病室に来た訳でもなかった。勿論精神カウンセラーでもない。しかし、ポール・レイン・ドーマーが心的ストレスを抱えているのは素人目にもわかったし、それをケンウッドに聞いてもらいたがっていると感じた。
彼は椅子をベッド脇に引き寄せて、端末を出した。
「記録しても良いかな? 良ければ、君が体験した嫌なことを洗いざらい語ってくれないか。胸の内にしまっておいても良いことはないぞ。」
ポールは一瞬迷う表情をしたが、それは語るのを躊躇ったのではなく、何から話すべきか考えたのだ。そして、つまらないことも言います、と断ってから、牛との押しくらまんじゅうから語り始めた。ケンウッドはコロニー人だから、牛の生態がよくわからない。しかしポールが牛囲いの中で体験した不快で恐ろしい感覚は理解出来るような気がした。
牛囲いから出てメーカーに捕らえられ、裸にされて風呂に入れられたことも不快な思い出だ。ケンウッドは複数の手が美しいドーマーの体をもてあそぶのを想像して怒りを覚えた。不良執政官でさえ触れたことがないポールの体にメーカーがお触り放題だと?
しかし、そこ迄の体験はポールにとっては「大したことではない」のだった。
問題は、半裸状態でラムゼイの前に引き出された時だ。ラムゼイは、ライサンダーを従えており、少年の目の前でポールを裸にした。
「セイヤーズの息子がそこにいたのか・・・」
「情けない姿を見られました。」
「しかし、不可抗力だっただろう? 君は子供達を保護しに行ったのだ。セイヤーズの息子が居ても不思議ではない。彼等が捕虜扱いされていないと、事前に君は想定して出かけたのだ。ラムゼイは子供達に己の力を誇示したかったのだろう。」
「セイヤーズの息子は、我々から逃げた際に負傷してラムゼイに拾われたのだと、後で2人きりになった時に説明しました。脚を折ったが3,4日で治ったそうです。」
ケンウッドは唸った。ダリル・セイヤーズ・ドーマーの息子は明らかに身体的な進化型の細胞補修能力を持っている。地球人とは思えない能力だし、コロニー人でも希だ。
だが・・・とケンウッドは気が付いた。ダリルにはそんな能力はない。もう片方の親であるポールにもない。
ならば、少年の能力は何処から来ているのだ?
すると、ポールが長官の思考を読んだかの様に、目撃した事実を伝えた。
「ラムゼイは、女を1人連れています。使用人扱いですが、恐らく彼のクローン製造に卵子を提供する役目を負っているのではないでしょうか。セイヤーズの息子も、彼女の卵細胞の遺伝子情報をいくらか受け継いでいるはずです。」
「女だって?!」
ケンウッドはびっくりした。細胞補修能力を持つ女? 彼は思わず呟いていた。
「まさか、ジェネシスなのか?」
彼は椅子をベッド脇に引き寄せて、端末を出した。
「記録しても良いかな? 良ければ、君が体験した嫌なことを洗いざらい語ってくれないか。胸の内にしまっておいても良いことはないぞ。」
ポールは一瞬迷う表情をしたが、それは語るのを躊躇ったのではなく、何から話すべきか考えたのだ。そして、つまらないことも言います、と断ってから、牛との押しくらまんじゅうから語り始めた。ケンウッドはコロニー人だから、牛の生態がよくわからない。しかしポールが牛囲いの中で体験した不快で恐ろしい感覚は理解出来るような気がした。
牛囲いから出てメーカーに捕らえられ、裸にされて風呂に入れられたことも不快な思い出だ。ケンウッドは複数の手が美しいドーマーの体をもてあそぶのを想像して怒りを覚えた。不良執政官でさえ触れたことがないポールの体にメーカーがお触り放題だと?
しかし、そこ迄の体験はポールにとっては「大したことではない」のだった。
問題は、半裸状態でラムゼイの前に引き出された時だ。ラムゼイは、ライサンダーを従えており、少年の目の前でポールを裸にした。
「セイヤーズの息子がそこにいたのか・・・」
「情けない姿を見られました。」
「しかし、不可抗力だっただろう? 君は子供達を保護しに行ったのだ。セイヤーズの息子が居ても不思議ではない。彼等が捕虜扱いされていないと、事前に君は想定して出かけたのだ。ラムゼイは子供達に己の力を誇示したかったのだろう。」
「セイヤーズの息子は、我々から逃げた際に負傷してラムゼイに拾われたのだと、後で2人きりになった時に説明しました。脚を折ったが3,4日で治ったそうです。」
ケンウッドは唸った。ダリル・セイヤーズ・ドーマーの息子は明らかに身体的な進化型の細胞補修能力を持っている。地球人とは思えない能力だし、コロニー人でも希だ。
だが・・・とケンウッドは気が付いた。ダリルにはそんな能力はない。もう片方の親であるポールにもない。
ならば、少年の能力は何処から来ているのだ?
すると、ポールが長官の思考を読んだかの様に、目撃した事実を伝えた。
「ラムゼイは、女を1人連れています。使用人扱いですが、恐らく彼のクローン製造に卵子を提供する役目を負っているのではないでしょうか。セイヤーズの息子も、彼女の卵細胞の遺伝子情報をいくらか受け継いでいるはずです。」
「女だって?!」
ケンウッドはびっくりした。細胞補修能力を持つ女? 彼は思わず呟いていた。
「まさか、ジェネシスなのか?」