2017年7月17日月曜日

侵略者 6 - 9

 ケンウッドは女装したローガン・ハイネ・ドーマーを捕まえた。腕を掴んで近くのベンチに誘導し、座らせた。ハイネはチーズケーキが冷えて固まってしまうのを恐れて、素直にそこに腰を下ろして食べ始めたので、取り敢えずケンウッドも近くでソーセージや野菜をクレープで巻いた物を買って来た。隣に座って検めて見ると、女装したハイネはキーラ・セドウィック博士にそっくりだった。それでケンウッドはさりげなく質問した。

「誰の仮装をしているんだね?」

 するとハイネは食べ物から目を離さずに答えた。

「アン・シャーリーですよ、赤頭巾ちゃん。」
「そうなのか・・・私はてっきりキーラ・セドウィックに変身しているのかと思った。」

 何か反応するかと期待したのだが、ハイネは動ぜず、

「セドウィック博士は物語に登場しませんよ。」

と言った。

「誰が見てもわかる人物にならなければ仮装の意味がありません。」
「そうだったかな・・・しかし、今日仮装するのは執政官であって、ドーマーではないだろう?」
「ドーマーの姿では観察棟から出られませんからね。」

 遂にハイネは「脱走中」であることを白状した。
 よくも保安課は彼の外出を見逃したものだ、とケンウッドは呆れた。保安課員達はドーマーだから、ハイネの味方だが、もし彼を外に出したことを長官に知られれば懲罰を受けるだろう。

「君がここに居ることがリン長官にばれたら・・・」
「かまいませんよ、今日は給食がないのですから。」
「えっ?」
 
 驚くケンウッドに、ハイネは春分祭の特別ルールを教えてくれた。

「収容されているクローン達も健康状態に支障がない限りは、この祭りの間外出許可が出るのです。重症の子供にだけ出産管理区の方から給食が届けられます。動ける子供達と私には給食がないので、こうやって食べ物を探して徘徊しているのですよ。」

 チーズケーキを平らげてしまったハイネは、まだ足りないのだろう、次はピッツアの屋台の方を見た。ケンウッドは彼を牽制した。

「チーズの食べ過ぎは良くない。」

 ハイネが反論しようとした時、ケンウッドの端末に緊急信号が入った。ケンウッドは皿をベンチに置いて端末を取り出した。緊急信号を発したのは、出産管理区のキーラ・セドウィックだった。 彼は彼女に電話を掛けた。

「ケンウッドです。どうかしましたか?」

 キーラが言った。

「ローガン・ハイネの部屋に不審者が侵入したわ。ハイネの姿が見えない。」

 彼女は縫いぐるみの目を通してハイネの部屋を監視しているのだ。視野が限られているので、ハイネの位置がわからず不安を抱いたのだ。
 それにしても、不審者とは?