お花畑には白やピンク、紫の花が咲き乱れていた。何の花かと昔クリステル小母さんに訊いたら、コスモスだと教えてくれた。小さいのに、雄大な名前だと思った。
コスモスの花に中に、幼いキーラが座っている。キーラの子供時代など全く知らないのに、キーラだとわかった。彼女はせっせとお花で首飾りを作っていた。どこかで見たようなシーンだ。そう言えば、昨晩見た映画の中で子供が作っていたっけ・・・。
ハチがブンブン羽音をたてて飛んでいる。だんだんその音が大きくなって、耳障りになり、腹立たしくなってきた。何処にいるのだ、追い払ってやろう。キーラが刺されては大変だ。
ローガン・ハイネ・ドーマーは振り返ろうとして、寝返りを打ち、手が何か大きな物に当たって目が覚めた。目蓋を上げると、カーキ色の物体が目の前にあった。視線を移動させると、それは服で、1人の男が彼のすぐ隣に横たわって、大きな鼾をかきながら眠っているのだった。
ハイネは驚いて上体を起こした。周囲を見回すと、そこは彼がいつも昼寝をする庭園の芝生で、昼寝する前と変わらない風景だ。違っていたのは、すぐ隣にカーキ色のセーターを来た中肉中背の男が寝ていることだ。
誰だ、こいつは?
ハイネは記憶を探った。ドーマーではない。ドーマーだったら名前を思い出せなくても顔はわかる。ドーマーは誰もが身ぎれいにしており、こんなボサボサ頭で無精髭を生やしていない。男は服装もだらしなく、セーターからたいこ腹がはみ出している。
第一、ドーマーだったら、ローガン・ハイネ・ドーマーの隣に断りなく横たわって昼寝をする様な無礼な行為は慎む筈だ。
コロニー人でもこんなことはしない・・・地球人保護法抵触寸前だ。それにドームで働くコロニー人は職種に関わらず、着任の時、必ずハイネの元に挨拶に来る。それがルールだ。こんな男の挨拶を受けた記憶はない。
ハイネは頸に冷たいものを感じた。見知らぬ人間がドームの中にいる。それも彼の真横に。
彼は静かに端末を出すと、保安課のゲイト係の詰所を呼び出した。画面に現れた係員は、電話を掛けてきたのが遺伝子管理局長だったので、仰天した。ハイネは彼の顔を見るなり、自身の唇に指を当てて、「シーッ」と合図した。そして端末のカメラを横で寝ている男に向けた。係員に男を見せてから、再び端末を自身に向けた。唇だけ動かして尋ねた。
誰だ?
係員は手で「待って」と合図を送ってきた。そしてすぐに横のコンピュータで顔認証を開始した。5秒後に答えが出た。ハイネの端末から係員の姿が消え、代わりにデータが表示された。
ーーレイモンド・ハリス 46 火星第3コロニー出身 遺伝子学者 骨の形成を専門とする。 本日地球に上陸、午後1時15分 アメリカ・ドーム到着。
ハイネは係員に礼を告げ通話を終えた。
再び男を見ると、コロニー人は遺伝子管理局長を驚かせたことも知らずに、まだ鼾をかいていた。
ハイネは静かに立ち上がった。衣服からそっと芝生の葉を払い落とし、それからくるりと体の向きを変えると、さっさと遺伝子管理局本部に向かって歩き出した。
コスモスの花に中に、幼いキーラが座っている。キーラの子供時代など全く知らないのに、キーラだとわかった。彼女はせっせとお花で首飾りを作っていた。どこかで見たようなシーンだ。そう言えば、昨晩見た映画の中で子供が作っていたっけ・・・。
ハチがブンブン羽音をたてて飛んでいる。だんだんその音が大きくなって、耳障りになり、腹立たしくなってきた。何処にいるのだ、追い払ってやろう。キーラが刺されては大変だ。
ローガン・ハイネ・ドーマーは振り返ろうとして、寝返りを打ち、手が何か大きな物に当たって目が覚めた。目蓋を上げると、カーキ色の物体が目の前にあった。視線を移動させると、それは服で、1人の男が彼のすぐ隣に横たわって、大きな鼾をかきながら眠っているのだった。
ハイネは驚いて上体を起こした。周囲を見回すと、そこは彼がいつも昼寝をする庭園の芝生で、昼寝する前と変わらない風景だ。違っていたのは、すぐ隣にカーキ色のセーターを来た中肉中背の男が寝ていることだ。
誰だ、こいつは?
ハイネは記憶を探った。ドーマーではない。ドーマーだったら名前を思い出せなくても顔はわかる。ドーマーは誰もが身ぎれいにしており、こんなボサボサ頭で無精髭を生やしていない。男は服装もだらしなく、セーターからたいこ腹がはみ出している。
第一、ドーマーだったら、ローガン・ハイネ・ドーマーの隣に断りなく横たわって昼寝をする様な無礼な行為は慎む筈だ。
コロニー人でもこんなことはしない・・・地球人保護法抵触寸前だ。それにドームで働くコロニー人は職種に関わらず、着任の時、必ずハイネの元に挨拶に来る。それがルールだ。こんな男の挨拶を受けた記憶はない。
ハイネは頸に冷たいものを感じた。見知らぬ人間がドームの中にいる。それも彼の真横に。
彼は静かに端末を出すと、保安課のゲイト係の詰所を呼び出した。画面に現れた係員は、電話を掛けてきたのが遺伝子管理局長だったので、仰天した。ハイネは彼の顔を見るなり、自身の唇に指を当てて、「シーッ」と合図した。そして端末のカメラを横で寝ている男に向けた。係員に男を見せてから、再び端末を自身に向けた。唇だけ動かして尋ねた。
誰だ?
係員は手で「待って」と合図を送ってきた。そしてすぐに横のコンピュータで顔認証を開始した。5秒後に答えが出た。ハイネの端末から係員の姿が消え、代わりにデータが表示された。
ーーレイモンド・ハリス 46 火星第3コロニー出身 遺伝子学者 骨の形成を専門とする。 本日地球に上陸、午後1時15分 アメリカ・ドーム到着。
ハイネは係員に礼を告げ通話を終えた。
再び男を見ると、コロニー人は遺伝子管理局長を驚かせたことも知らずに、まだ鼾をかいていた。
ハイネは静かに立ち上がった。衣服からそっと芝生の葉を払い落とし、それからくるりと体の向きを変えると、さっさと遺伝子管理局本部に向かって歩き出した。