2018年3月25日日曜日

泥酔者 3 - 4

「孫が小さなローガン・ハイネだったら、お袋が平気でいられないだろうな。」

 ロナルドが苦笑しながらカクテルを配った。

「きっと僕の子供達をほったらかしで、パーシバルの息子ばかり可愛がる。」
「そんなことはないだろう。義母さんは君の子供達を愛しているじゃないか。」

 ロナルドの3人の子供たちは皆成人してしまっていた。父親の跡を継ぐべく医療の道に進んだ子供もいるのだ。
 パーシバルは義理の甥達の写真も端末に保存していた。それをブラコフに見せた。

「ほら、3人共優秀な子供だ。それに優しいんだ。ロナルドのお父さんが素晴らしい人格者だから、孫達も素敵な人々に育ったんだよ。」
「ヘンリーは口が上手い。」

 ロナルドが大笑いした。パーシバルもブラコフも笑った。

「だって、キーラが『お父さん』って呼ぶのは、ロナルドの実の父さんだけなんだぜ。」
「そうなんですか? では、ハイネは・・・・?」

 そう言ってしまってから、ブラコフは拙い質問だったかな、と一瞬後悔した。しかしロナルドは気にしなかった。

「地球の王子様は、『局長』だよ。」
「うん、それしかない。ハイネは生まれる前から『局長』になると決まっていたからね。」

 そこにキーラとロナルドの妻のタマラがデザートの大きなプディングを運んで来た。
テーブルの皿に取り分けながら、キーラがブラコフに尋ねた。

「局長の最近のご機嫌は如何?」
「うーん、ちょっとご機嫌斜めでしたね。」
「まぁ! どうして?」

 キーラが驚いたので、ブラコフは一月早く地球に降りて来た科学者の話をした。レイモンド・ハリスはあの後もドームの住人達と各所で揉め事を起こしていたのだ。

「レイモンド・ハリス?」

 ロナルドが顔をしかめた。パーシバルが尋ねた。

「知ってるのか、ロン?」
「うん・・・僕が会員に入っているスカッシュクラブにいた男と同一人物だとしたら・・・知ってる。」
「どんな人なの?」

とタマラ。夫の友人は大方知っているが、初耳の名前だったのだ。ロナルドは躊躇った。

「親しくなかったので、どんなと訊かれてもなぁ・・・酒飲みで博打好きだった。」
「酒・・・博打・・・それにスカッシュ?」

 キーラとパーシバル、ブラコフは顔を見合わせた。

「博打は別にして、酒とスカッシュは、ハイネと出くわす可能性があるな・・・」
「局長はバーには行かれません。でもスカッシュは週に2回は楽しまれますから・・・」

 キーラが嫌そうな顔をした。

「その人、局長に添い寝したって言ったわね?」
「局長には内緒ですが・・・キスもしたそうです。」

 ロナルド夫妻以外が青ざめた。パーシバルが呟いた。

「とんでもないことが起きなければ良いが・・・」