「レイモンド・ハリス?」
ブラコフが端末で調べた。
「ああ・・・ここで働くのは来月からの予定ですが・・・?」
「来月?」
だからケンウッドの意識の中になかった人物だったのか。一体どんな人なのか、それにハイネとどんな遭遇をしたのか?
ケンウッドはハリスの情報を素早く検索した。学歴と職歴が得られたが、それをじっくり読む前にドアのチャイムが鳴った。
ブラコフがドアを開けた。
「ハリスと言います、火星のコロニーから来ました。」
「お話は伺っています。どうぞ、中へ。」
ブラコフは来星の日時が違うとは言わずに彼を中へ通した。ケンウッドはボサボサ頭で無精髭を生やした中肉中背の男を見た。合繊セーターは古く、パンツもくたびれていた。これはファッションなのだろうか、それとも服装、身だしなみに無頓着な人なのだろうか。
ケンウッドは立ち上がった。
「レイモンド・ハリス博士?」
「そうです、ケンウッド長官ですね?」
ハリスが無遠慮に手を差し出した。ケンウッドは仕方なく握手に応じた。そして思った。ハイネはこの男と素手で握手したのだろうか? ハリスの手は乾いていた。
ケンウッドはブラコフに視線を向けて紹介した。
「副長官のブラコフ博士だ。」
ハリスがハッとした表情でブラコフを振り返った。そしてブラコフと視線を合わせると笑顔を作った。
「副長官でしたか! お若いのでてっきり秘書かと思いました。失礼しました。」
ブラコフは軽く会釈しただけでハリスのそばに来なかった。代わりに言った。
「慣例として、IDを提示していただけますか?」
副長官なので他のコロニー人は皆部下になるのだから、もっと偉そうに喋っても構わないのだが、謙虚な男だ。しかし口調は相手に逆らうことを許さない響があった。
ハリスが薄笑いとも取れる微笑みを浮かべた。
「用心深いことは良いことですね。テロの被害を受けられたのですから、無理もありません。もうお怪我はよろしいのですね?」
ケンウッドはブラコフがムッとするのを感じた。ブラコフはテロがまた起きることを心配して言ったのではない。規則を守らせようとしただけだ。規則を守ってもらえないなら、ドームで働いてもらっては困る。規則を守れない人間は地球人から反感をもたれる。1人が反感を買えば、他のコロニー人も地球人から反感を買う恐れが出てくる。コロニー人全員が危険を感じることになる。
ブラコフは硬い表情で言った。
「これは委員会発足当時からの規則です。提示をお願いします。」
ブラコフが端末で調べた。
「ああ・・・ここで働くのは来月からの予定ですが・・・?」
「来月?」
だからケンウッドの意識の中になかった人物だったのか。一体どんな人なのか、それにハイネとどんな遭遇をしたのか?
ケンウッドはハリスの情報を素早く検索した。学歴と職歴が得られたが、それをじっくり読む前にドアのチャイムが鳴った。
ブラコフがドアを開けた。
「ハリスと言います、火星のコロニーから来ました。」
「お話は伺っています。どうぞ、中へ。」
ブラコフは来星の日時が違うとは言わずに彼を中へ通した。ケンウッドはボサボサ頭で無精髭を生やした中肉中背の男を見た。合繊セーターは古く、パンツもくたびれていた。これはファッションなのだろうか、それとも服装、身だしなみに無頓着な人なのだろうか。
ケンウッドは立ち上がった。
「レイモンド・ハリス博士?」
「そうです、ケンウッド長官ですね?」
ハリスが無遠慮に手を差し出した。ケンウッドは仕方なく握手に応じた。そして思った。ハイネはこの男と素手で握手したのだろうか? ハリスの手は乾いていた。
ケンウッドはブラコフに視線を向けて紹介した。
「副長官のブラコフ博士だ。」
ハリスがハッとした表情でブラコフを振り返った。そしてブラコフと視線を合わせると笑顔を作った。
「副長官でしたか! お若いのでてっきり秘書かと思いました。失礼しました。」
ブラコフは軽く会釈しただけでハリスのそばに来なかった。代わりに言った。
「慣例として、IDを提示していただけますか?」
副長官なので他のコロニー人は皆部下になるのだから、もっと偉そうに喋っても構わないのだが、謙虚な男だ。しかし口調は相手に逆らうことを許さない響があった。
ハリスが薄笑いとも取れる微笑みを浮かべた。
「用心深いことは良いことですね。テロの被害を受けられたのですから、無理もありません。もうお怪我はよろしいのですね?」
ケンウッドはブラコフがムッとするのを感じた。ブラコフはテロがまた起きることを心配して言ったのではない。規則を守らせようとしただけだ。規則を守ってもらえないなら、ドームで働いてもらっては困る。規則を守れない人間は地球人から反感をもたれる。1人が反感を買えば、他のコロニー人も地球人から反感を買う恐れが出てくる。コロニー人全員が危険を感じることになる。
ブラコフは硬い表情で言った。
「これは委員会発足当時からの規則です。提示をお願いします。」