くれぐれもカレン・ドナヒュー軍曹にお咎め無きように、とケンウッドはエイリアス大佐に念を押して委員会本部から送り出した。
大佐がロビーから出て行き、迎えの車に乗り込んで去って行くと、見送りに出ていたハナオカ委員長がケンウッドとハレンバーグ、ヴェルティエンが待っている場所に戻って来た。
「全く・・・あの白いドーマーにはいつも振り回される・・・」
ハナオカが愚痴ると、ハレンバーグが愉快そうに笑った。
「だが、あの男の行動は利己主義から来るのではないぞ、ハナオカ君。」
その見解にはケンウッドも異議がなかった。ハレンバーグはハイネに好かれていないが、彼自身はハイネを愛しているので、困った時には頼りになる。
名誉顧問がケンウッドを振り返った。
「ケンウッド博士、今日は楽しかった。追悼式で楽しいと言うのは不謹慎だろうが、許して欲しい。私も近頃は回顧録を書くだけの生活で、うんざりしていた。今日は可愛いドーマー達の思い出にどっぷり浸れたよ。」
老人は遠くを見る目をした。
「エイブラハム・ワッツもジョージ・マイルズもグレゴリー・ペルラも・・・まだ元気だろうか?」
「3人共に元気です。現役は引退しましたが、時々『黄昏の家』から出て来て後進指導に能っています。」
「私がドームで働いていた時は、あの子達はまだティーンエイジャーだった。今ではすっかり爺さんになってしまったがな。」
「3人共、ハイネに負けないくらい見事な白髪ですよ。」
「そうか! あの連中はまだ髪はフサフサか!」
ハレンバーグは薄くなった自身の頭部を撫でた。彼はまたケンウッドを見つめた。
「ドームは平和で神聖な場所でなければならん。暴力で自分達の意見を通そうなどと愚かな考えを持つ連中の好きにはさせん。我々は武器を持たない文民だが、ドームと地球をしっかり守って行こう、この年寄りもまだキーボードと通信機器で闘えるぞ。」
ケンウッドの視野の片隅で、ハナオカ委員長がヴェルティエンに何やら話しかけているのが見えた。副長官の件の続きだろう。
その時、ハレンバーグが顔をケンウッドに寄せて来て、低い声で囁いた。
「オフレコで君に尋ねたいことがある。」
「何でしょう?」
ハレンバーグが声を一段と小さくして尋ねた。
「キーラ・セドウィック博士は、ローガン・ハイネの娘だな?」
ケンウッドが答えるのを躊躇うと、彼はちょっとだけ微笑した。
「知ってどうこうしようと言うつもりはない。私はハイネが立派な男性としての機能を持っているのに子供を作ることを許されないのは気の毒だと思っていた。だが彼女の顔を見て、もしやと思った。彼女の母親は私の後輩執政官だった。ハイネと仲が良過ぎて同僚の女性達から槍玉に挙げられてしまったのだ。彼女がハイネの子を産んでいたとしても、私は驚かない。寧ろ、私の多くの罪の一つが消えた気分だよ。進化型遺伝子を継いでいなくても、彼の子がこの世に生まれて、その子孫を繋いでいく、それだけ考えれば私は安心してあの世に行ける。」
ケンウッドは真面目に答えた。
「我々は女の子を地球に誕生させようとドーマーを育てているのに、そのドーマーが宇宙に娘を残すとは、皮肉だと思いませんか?」
ハレンバーグがニヤリと笑った。
「確かにそうだな・・・ケンウッド博士。何とかして、彼が生きているうちに・・・君が、女の子誕生の鍵を見つけてくれ。」
大佐がロビーから出て行き、迎えの車に乗り込んで去って行くと、見送りに出ていたハナオカ委員長がケンウッドとハレンバーグ、ヴェルティエンが待っている場所に戻って来た。
「全く・・・あの白いドーマーにはいつも振り回される・・・」
ハナオカが愚痴ると、ハレンバーグが愉快そうに笑った。
「だが、あの男の行動は利己主義から来るのではないぞ、ハナオカ君。」
その見解にはケンウッドも異議がなかった。ハレンバーグはハイネに好かれていないが、彼自身はハイネを愛しているので、困った時には頼りになる。
名誉顧問がケンウッドを振り返った。
「ケンウッド博士、今日は楽しかった。追悼式で楽しいと言うのは不謹慎だろうが、許して欲しい。私も近頃は回顧録を書くだけの生活で、うんざりしていた。今日は可愛いドーマー達の思い出にどっぷり浸れたよ。」
老人は遠くを見る目をした。
「エイブラハム・ワッツもジョージ・マイルズもグレゴリー・ペルラも・・・まだ元気だろうか?」
「3人共に元気です。現役は引退しましたが、時々『黄昏の家』から出て来て後進指導に能っています。」
「私がドームで働いていた時は、あの子達はまだティーンエイジャーだった。今ではすっかり爺さんになってしまったがな。」
「3人共、ハイネに負けないくらい見事な白髪ですよ。」
「そうか! あの連中はまだ髪はフサフサか!」
ハレンバーグは薄くなった自身の頭部を撫でた。彼はまたケンウッドを見つめた。
「ドームは平和で神聖な場所でなければならん。暴力で自分達の意見を通そうなどと愚かな考えを持つ連中の好きにはさせん。我々は武器を持たない文民だが、ドームと地球をしっかり守って行こう、この年寄りもまだキーボードと通信機器で闘えるぞ。」
ケンウッドの視野の片隅で、ハナオカ委員長がヴェルティエンに何やら話しかけているのが見えた。副長官の件の続きだろう。
その時、ハレンバーグが顔をケンウッドに寄せて来て、低い声で囁いた。
「オフレコで君に尋ねたいことがある。」
「何でしょう?」
ハレンバーグが声を一段と小さくして尋ねた。
「キーラ・セドウィック博士は、ローガン・ハイネの娘だな?」
ケンウッドが答えるのを躊躇うと、彼はちょっとだけ微笑した。
「知ってどうこうしようと言うつもりはない。私はハイネが立派な男性としての機能を持っているのに子供を作ることを許されないのは気の毒だと思っていた。だが彼女の顔を見て、もしやと思った。彼女の母親は私の後輩執政官だった。ハイネと仲が良過ぎて同僚の女性達から槍玉に挙げられてしまったのだ。彼女がハイネの子を産んでいたとしても、私は驚かない。寧ろ、私の多くの罪の一つが消えた気分だよ。進化型遺伝子を継いでいなくても、彼の子がこの世に生まれて、その子孫を繋いでいく、それだけ考えれば私は安心してあの世に行ける。」
ケンウッドは真面目に答えた。
「我々は女の子を地球に誕生させようとドーマーを育てているのに、そのドーマーが宇宙に娘を残すとは、皮肉だと思いませんか?」
ハレンバーグがニヤリと笑った。
「確かにそうだな・・・ケンウッド博士。何とかして、彼が生きているうちに・・・君が、女の子誕生の鍵を見つけてくれ。」