2018年3月3日土曜日

脱落者 14 - 4

 ドアをノックする音がした。キャリー・(ジンバリスト)・ワグナー・ドーマーは立ち上がって自分でドアを開けた。ローガン・ハイネ・ドーマーが立っていた。昨日脱いだスーツを着て(勿論、シャツは新しいのをもらって)身ぎれいにして立っていた。彼は女性医師に「おはよう」と声を掛けた。

「入ってもよろしいか、先生?」

 キャリーは後ろを振り返った。セシリアは泣いていて、局長の声に気が付いていなかった。キャリーは微笑んだ。

「おはようございます。勿論です、お入り下さい。」

 彼女は場所を空けて彼を通した。ハイネが静かに入室した。そしてセシリア・ドーマーに声を掛けた。

「おはよう、セシリア・ドーマー。」

 セシリア・ドーマーの動きが止まった。聞き覚えのある声に戸惑った。聞こえる筈のない声に。
 キャリーが声を掛けた。

「セシリア、ハイネ局長にご挨拶は?」

 セシリア・ドーマーがパッと立ち上がった。ほとんど跳び上がったと言って良い程、驚いていた。目を丸くして、目の前の長身の男を見上げた。 それから震えだした。

「嘘・・・生きているの?」

 ハイネが頷いた。

「なんとか救助されて生きている。クック先生は素晴らしい外科医だ。」

 そしてセシリアの顔、鼻を見た。

「咄嗟のこととは言え、君の顔を殴ってすまなかった。まだ痛むかね?」

 セシリア・ドーマーは無言で首を振った。そしてまた泣き出した。

「ごめんなさい・・・刺したりしてごめんなさい・・・」

 床にしゃがみこもうとした彼女の体をハイネが支えた。そして抱き締めた。ハンカチを出して彼女の手に握らせた。

「まだ鼻を擤んだりしては駄目だぞ。そっとぬぐいなさい。」