2018年3月14日水曜日

泥酔者 2 - 3

 気を削がれたアナトリー・ギルはレイモンド・ハリスを無視してポール・レイン・ドーマーに「行こう」と声を掛けた。レインは素直に彼について食事を取り、テーブルに向かった。歩きながらギルに尋ねた。

「アイダ博士と同行していた女性は誰だったかな?」
「執行部の博士だよ。」

 ギルが確保しておいたテーブルを顎で指した。彼の仲間が3名既に座って食べ始めていたが、レインが来たので歓声を上げた。ファンクラブのメンバーだ。レインのファンクラブはすっかり世代交代が進み、創設期のメンバーは1人も残っていない。レインは創設期の人々が好きだったが、現在のメンバーはあまり好かなかった。彼等は美しいレインと仲良くすることが自慢なのだ。創設者のヘンリー・パーシバル博士が目的としたドーマーの保護と応援の精神はどこへ行ってしまったのだろう。
 席に着くと、レインは直ぐに食べ始めた。食事を終えたら直ちに局長捜索を再開するつもりだった。
 ギルが仲間に尋ねた。

「アイダ博士と一緒にいる女性博士、なんて名前だっけ?」

 仲間達が首を伸ばして離れたテーブルに着いた2人の女性博士を見た。

「ゴーン博士だ。」
「ゴーン? ああ・・・血液の研究をしている人か!」
「専門は血液だけど、執行部では卵子提供者の人選を担当しているらしいぞ。」
「つまり、地球人の母親を選ぶ仕事か。」
「アイダはドーマーを選び、ゴーンは母親を選別しているのか・・・考えたら彼女達は女神みたいな仕事をしているんだなあ。」

 レインは耳に心の栓をして執政官達の会話を聞かない努力をした。地球の外の話題は関心がなかったし、知りたくもない。美女の地位や仕事も興味がない。彼自身に直接的な影響はないから。