ケンウッドは研究室に入り、やっと落ち着いて仕事に取りかかれた。昨夜ドーマーの親方達と騒いだ助手も大人しく作業をしている。ドームの食堂では酒類は出さないので夜遅く迄騒いでも飲まないから、二日酔いの弊害は心配しないで済む。彼は作業が一段落付いた時に、ケンウッドに報告に来た。
「博士、昨夜フライングしてハイネ局長に着任の挨拶をしてしまいました。」
「私のアドバイスに従ってマリオ親方に紹介してもらったんだろ?」
助手はエヘヘと笑った。
「はい。緊張して局長の前で固まっていたら、マリオから『そんなに固くなって、プロポーズでもする気か?』とからかわれました。そしたら局長が笑って手をさしのべてくれたんです。」
それでも彼はまだ固まっていたのだ。ケンウッドは一部始終を目撃していたが、コメントは控えた。
「ハイネは優しいだろ?」
「はい! もっと恐い人だと思っていました。でもあの後、世間話で盛り上がって、局長は監察棟に居た頃の失敗談とかいろいろ面白い話を語ってみんなを笑わせてくれました。」
ケンウッドはその様子を想像出来た。ハイネは当たり障りのない話題を豊富に持っている。それを披露して若い連中をリラックスさせたのだ。語ってはいけない話は決してしない。
後1時間で昼休みにしようと思う頃、研究室のドアチャイムを鳴らした者がいた。助手の1人が応対に出て、慌ててケンウッドに報告した。
「博士、遺伝子管理局長です!」
助手達は驚いたが、一番驚いたのはケンウッドだった。過去に執政官の研究室を遺伝子管理局長が訪問した話を聞いたことがなかった。歴代の遺伝子管理局長は執政官と個人的な付き合いをしなかった。執政官に育てられても地球人としての誇りを保てと、執政官に教えられたからだ。遺伝子管理局長と言う役職は孤高の存在だった。しかし、現役の局長はお気軽にケンウッドの研究室に現れた。
「今日はジャック・エイデン・ドーマーの『お勤め』の日だったと思いますが?」
とハイネ局長は応対に出たケンウッドに尋ねた。
「うん、午後1時半からの予定だ。」
「部下が急用で来られなくなりました。代わりに私が立ち会いますが、よろしいですか?」
またもやハイネはケンウッドを驚かせた。部下とはロッシーニ・ドーマーのことだ。ハイネは内務捜査班の部下の名をケンウッドの助手達の前では言いたくないのだ。それにしても遺伝子管理局長がドーマーの「お勤め」に立ち会うなど前代未聞だ。何故ハイネもロッシーニもエイデン・ドーマーの「お勤め」にこだわるのだろう。他に2人のドーマーが選ばれているのに、彼等の方には関心がないのだ。立ち会った後で理由を聞かせてくれるのだろうか。
ケンウッドは「かまわないよ」と答えた。
「昼食の後で、ここに来てくれ。ドーマー達が着替えたら検査室へ行く。」
「承知しました。では、昼休みの後で。」
ハイネが立ち去ると、助手達が騒ぎ出した。特に女性達は大騒ぎだ。彼女達はこっそり写真撮影などしていた。
「博士、局長は3年前より若くなっていません?」
「まさか・・・」
「いいえ、私にもそう見えました。若返っています。」
「肌の艶なんか、羨ましいほどですわ。」
「そうだとしたら・・・」
ケンウッドは皮膚の老化を研究する専門家だ。
「私は彼の皮膚サンプルを採ってこなければ・・・」
冗談のつもりで言ったが、助手達の目は輝いていた。
「博士、昨夜フライングしてハイネ局長に着任の挨拶をしてしまいました。」
「私のアドバイスに従ってマリオ親方に紹介してもらったんだろ?」
助手はエヘヘと笑った。
「はい。緊張して局長の前で固まっていたら、マリオから『そんなに固くなって、プロポーズでもする気か?』とからかわれました。そしたら局長が笑って手をさしのべてくれたんです。」
それでも彼はまだ固まっていたのだ。ケンウッドは一部始終を目撃していたが、コメントは控えた。
「ハイネは優しいだろ?」
「はい! もっと恐い人だと思っていました。でもあの後、世間話で盛り上がって、局長は監察棟に居た頃の失敗談とかいろいろ面白い話を語ってみんなを笑わせてくれました。」
ケンウッドはその様子を想像出来た。ハイネは当たり障りのない話題を豊富に持っている。それを披露して若い連中をリラックスさせたのだ。語ってはいけない話は決してしない。
後1時間で昼休みにしようと思う頃、研究室のドアチャイムを鳴らした者がいた。助手の1人が応対に出て、慌ててケンウッドに報告した。
「博士、遺伝子管理局長です!」
助手達は驚いたが、一番驚いたのはケンウッドだった。過去に執政官の研究室を遺伝子管理局長が訪問した話を聞いたことがなかった。歴代の遺伝子管理局長は執政官と個人的な付き合いをしなかった。執政官に育てられても地球人としての誇りを保てと、執政官に教えられたからだ。遺伝子管理局長と言う役職は孤高の存在だった。しかし、現役の局長はお気軽にケンウッドの研究室に現れた。
「今日はジャック・エイデン・ドーマーの『お勤め』の日だったと思いますが?」
とハイネ局長は応対に出たケンウッドに尋ねた。
「うん、午後1時半からの予定だ。」
「部下が急用で来られなくなりました。代わりに私が立ち会いますが、よろしいですか?」
またもやハイネはケンウッドを驚かせた。部下とはロッシーニ・ドーマーのことだ。ハイネは内務捜査班の部下の名をケンウッドの助手達の前では言いたくないのだ。それにしても遺伝子管理局長がドーマーの「お勤め」に立ち会うなど前代未聞だ。何故ハイネもロッシーニもエイデン・ドーマーの「お勤め」にこだわるのだろう。他に2人のドーマーが選ばれているのに、彼等の方には関心がないのだ。立ち会った後で理由を聞かせてくれるのだろうか。
ケンウッドは「かまわないよ」と答えた。
「昼食の後で、ここに来てくれ。ドーマー達が着替えたら検査室へ行く。」
「承知しました。では、昼休みの後で。」
ハイネが立ち去ると、助手達が騒ぎ出した。特に女性達は大騒ぎだ。彼女達はこっそり写真撮影などしていた。
「博士、局長は3年前より若くなっていません?」
「まさか・・・」
「いいえ、私にもそう見えました。若返っています。」
「肌の艶なんか、羨ましいほどですわ。」
「そうだとしたら・・・」
ケンウッドは皮膚の老化を研究する専門家だ。
「私は彼の皮膚サンプルを採ってこなければ・・・」
冗談のつもりで言ったが、助手達の目は輝いていた。