縫いぐるみの熊を自宅アパートに持ち帰るのも気が重かったので、研究室に持ち込んだ。夜だったが、コロニー人はあまり地球の昼夜にとらわれない人間が多く、助手達がまだ仕事をしていた。彼等は縫いぐるみを抱えた博士を見て驚いた。ケンウッドは可能な限り真面目な顔で熊を棚に置いた。
「知り合いにもらったんだよ。」
「何方です?」
助手達はケンウッドが縫いぐるみをプレゼントするような友人を持っていないことを承知している。博士の友人達は皆大人で、もっと気の利いたものをくれるはずだ。それに彼等はケンウッドが誰に会いに言っていたか知っているのだ。
ケンウッドは渋々真実を告白した。
「ハイネ局長にもらったんだ。」
助手達が驚いて熊の前に集まって来た。余り覗かれると内臓しているカメラが発見されてしまう。慌てて説明した。
「ハイネは他の人からもらったのだが、もうすぐ本部に帰るので不要品の処分としてくれたんだよ。」
「局長に誰かがこれをあげたんですか?」
女性助手の1人が縫いぐるみを抱き上げた。
「私がもらっても良いですか?」
ケンウッドは躊躇った。研究室に置いていてもキーラ・セドウィックに監視されるだけだ。研究内容を見られてもかまわないが、こちらは気が散る。しかし、助手のプライベートな場面を見せる訳にもいかないだろう。
「いや、一応私がもらったのだから、ここに置いておく。遊びたかったら、休憩時間に遊びなさい。」
助手はあっさり引き下がってくれたので、内心ホッとした。
「博士は今夜はもう上がられましたよね?」
「うん、私はこれから帰って寝る。君達も早く仕舞いなさいよ。」
すると一番若い助手が尋ねた。
「ハイネ局長は幽閉を解かれるんですよね?」
「そのはずだが・・・長官も駄目だとは言えないだろう、局長はもうどこも悪くないのだから。」
「局長が出てこられたら、僕、挨拶に行って良いですか? まだ着任の挨拶をしていないんですよ。僕が来た時は、ノバックがいたから・・・。」
そう言えば、この助手はまだハイネの実物も見たことがないのだ。ケンウッドは、「いいとも」と答えた。
部屋から出ようとしたケンウッドの端末に電話が着信した。画面を見ると、ヘンリー・パーシバルからだった。ケンウッドが出ると、パーシバルが開口一番に尋ねた。
「ニコ、セイヤーズはそっちに行っていないか?」
「いや、来ていないが・・・レインと一緒じゃないのか?」
「そのポールがセイヤーズを探しているんだ。」
パーシバルの声が固かった。何か悪い予感がしているのだろうか。ケンウッドは、セイヤーズはドームの中にいるのだから心配しなくて良いと思った。それでも、少し気になった。
「今、君は何処に居るんだ?」
「今は図書館のロビーだ。これから庭園に行く。」
「では、私もそちらで合流しよう。」
電話を切ると、助手達がケンウッドを見ていた。
「先生、セイヤーズって、昨年西ユーラシアへ転属したドーマーのセイヤーズですか?」
「ああ・・・今朝、直便で一時帰国した。」
「それで、いなくなった?」
「と、レインが言っているらしい。」
助手達が顔を見合わせた。彼等が何か知っているのではないか、と期待したが、助手達からは何も情報はなかった。
「レインがセイヤーズを探しているのですね?」
「僕も手伝いますよ。」
此奴等はセイヤーズではなくレインと一緒に行動したいだけなのでは? と思ったが、ケンウッドは彼等に頷いて見せた。
「知り合いにもらったんだよ。」
「何方です?」
助手達はケンウッドが縫いぐるみをプレゼントするような友人を持っていないことを承知している。博士の友人達は皆大人で、もっと気の利いたものをくれるはずだ。それに彼等はケンウッドが誰に会いに言っていたか知っているのだ。
ケンウッドは渋々真実を告白した。
「ハイネ局長にもらったんだ。」
助手達が驚いて熊の前に集まって来た。余り覗かれると内臓しているカメラが発見されてしまう。慌てて説明した。
「ハイネは他の人からもらったのだが、もうすぐ本部に帰るので不要品の処分としてくれたんだよ。」
「局長に誰かがこれをあげたんですか?」
女性助手の1人が縫いぐるみを抱き上げた。
「私がもらっても良いですか?」
ケンウッドは躊躇った。研究室に置いていてもキーラ・セドウィックに監視されるだけだ。研究内容を見られてもかまわないが、こちらは気が散る。しかし、助手のプライベートな場面を見せる訳にもいかないだろう。
「いや、一応私がもらったのだから、ここに置いておく。遊びたかったら、休憩時間に遊びなさい。」
助手はあっさり引き下がってくれたので、内心ホッとした。
「博士は今夜はもう上がられましたよね?」
「うん、私はこれから帰って寝る。君達も早く仕舞いなさいよ。」
すると一番若い助手が尋ねた。
「ハイネ局長は幽閉を解かれるんですよね?」
「そのはずだが・・・長官も駄目だとは言えないだろう、局長はもうどこも悪くないのだから。」
「局長が出てこられたら、僕、挨拶に行って良いですか? まだ着任の挨拶をしていないんですよ。僕が来た時は、ノバックがいたから・・・。」
そう言えば、この助手はまだハイネの実物も見たことがないのだ。ケンウッドは、「いいとも」と答えた。
部屋から出ようとしたケンウッドの端末に電話が着信した。画面を見ると、ヘンリー・パーシバルからだった。ケンウッドが出ると、パーシバルが開口一番に尋ねた。
「ニコ、セイヤーズはそっちに行っていないか?」
「いや、来ていないが・・・レインと一緒じゃないのか?」
「そのポールがセイヤーズを探しているんだ。」
パーシバルの声が固かった。何か悪い予感がしているのだろうか。ケンウッドは、セイヤーズはドームの中にいるのだから心配しなくて良いと思った。それでも、少し気になった。
「今、君は何処に居るんだ?」
「今は図書館のロビーだ。これから庭園に行く。」
「では、私もそちらで合流しよう。」
電話を切ると、助手達がケンウッドを見ていた。
「先生、セイヤーズって、昨年西ユーラシアへ転属したドーマーのセイヤーズですか?」
「ああ・・・今朝、直便で一時帰国した。」
「それで、いなくなった?」
「と、レインが言っているらしい。」
助手達が顔を見合わせた。彼等が何か知っているのではないか、と期待したが、助手達からは何も情報はなかった。
「レインがセイヤーズを探しているのですね?」
「僕も手伝いますよ。」
此奴等はセイヤーズではなくレインと一緒に行動したいだけなのでは? と思ったが、ケンウッドは彼等に頷いて見せた。