ジムに到着すると、クロワゼット大尉は胴着姿で闘技場の入り口前で突っ立っていた。ジムの管理をしているドーマーが固い表情で彼の前に立ち塞がっていた。数人のドーマーが大尉と係を取り巻く形で立っていたので、パーシバルは「通してくれ」と声を掛けた。
人々が振り返り、ドーマー達は彼の後ろにいるハイネ局長の存在に気がつくとサッと道を開けた。パーシバルはクロワゼット大尉のそばに行った。
「何か問題でも?」
「この男が僕を闘技場に入れてくれないんだ。」
パーシバルは係に訊く迄もなく理由がわかった。ドーム勤務していた人間なら知っていて当然の理由だ。
「コロニー人はコロニー人相手の場合のみ闘技場での試合を認められるんですよ、大尉。」
「なんだって?」
「地球人保護法で地球人の体に直接手を触れてはいけないと言う規則があります。」
「スポーツをするのにそんなことを守らなきゃいけないのか?」
「勿論、地球人側が許可すれば問題ありませんが・・・」
パーシバルは周囲を見回した。
「貴方の対戦相手になることを承諾した地球人は何処です?」
「それは・・・これから申し込むんだ。」
「先に対戦を申し込んでから、闘技場の使用を申し込んで下さい。それがここのルールです。もしお一人なら、演武での利用を申し込まれると良いです。」
「演武?」
クロワゼットが不愉快そうな顔をした。特殊部隊出身の彼が演武を披露してどうなると言うのだ?
「僕は見世物じゃないぞ。」
パーシバルは後ろのハイネを振り返った。ローガン・ハイネは大概1人で演武をして闘技場を利用する。対戦相手になる力を持っている若いドーマーが少ないからだし、後輩達はこの大先輩に失礼があってはいけないと遠慮するからだ。
クロワゼットがハイネに気が付いた。純白の髪とテレビで見たことがある顔に、誰なのか気が付いた。
「ローガン・ハイネだね?」
と彼は嬉しそうに声を掛けた。ハイネはスポンサー様に軽く頭を下げて挨拶の代わりとした。クロワゼットはパーシバルとハイネの方に踏み出した。
「良ければ僕の相手をしてくれないかな?」
ハイネが何か言う前にパーシバルが素早く口を挟んだ。
「ハイネ局長は今朝迄入院していたんです。ちょっと体調を崩してね。高齢だし無理はさせられないので対戦は遠慮して下さい。」
「高齢・・・?」
「御歳95歳です。」
ドーマーの中から声が上がり、銘々が頷き合った。局長に手を出したら承知しないぞ、と言う雰囲気が大尉の周りに立ち昇った。これは拙い、とパーシバルは感じた。お客様に恐怖心を感じさせてはいけない。軍も立派な出資者なのだ。その時、ハイネが口を開いた。
「パーシバル博士の仰せの通り、この年寄りは無理の利く状態ではありません。どうかご勘弁を。」
そしてさらに言った。
「連邦軍の訓練の賜物を拝見したいものです。演武を披露して頂けませんか?」
するとクロワゼット大尉は、「お断りする」と言った。
「地球人の力を試して見たかったが、許可されないとなると興味が失せた。失礼する。」
彼は人垣を搔きわけるつもりでドーマーの輪に向かって歩き始めた。ドーマー達は彼に触れるのを避けてサッと道を開いた。その時、パーシバルは大尉の顔にがっかりした表情が浮かぶのを見た。
まさか、あの男は地球人を触りたいのか?
人々が振り返り、ドーマー達は彼の後ろにいるハイネ局長の存在に気がつくとサッと道を開けた。パーシバルはクロワゼット大尉のそばに行った。
「何か問題でも?」
「この男が僕を闘技場に入れてくれないんだ。」
パーシバルは係に訊く迄もなく理由がわかった。ドーム勤務していた人間なら知っていて当然の理由だ。
「コロニー人はコロニー人相手の場合のみ闘技場での試合を認められるんですよ、大尉。」
「なんだって?」
「地球人保護法で地球人の体に直接手を触れてはいけないと言う規則があります。」
「スポーツをするのにそんなことを守らなきゃいけないのか?」
「勿論、地球人側が許可すれば問題ありませんが・・・」
パーシバルは周囲を見回した。
「貴方の対戦相手になることを承諾した地球人は何処です?」
「それは・・・これから申し込むんだ。」
「先に対戦を申し込んでから、闘技場の使用を申し込んで下さい。それがここのルールです。もしお一人なら、演武での利用を申し込まれると良いです。」
「演武?」
クロワゼットが不愉快そうな顔をした。特殊部隊出身の彼が演武を披露してどうなると言うのだ?
「僕は見世物じゃないぞ。」
パーシバルは後ろのハイネを振り返った。ローガン・ハイネは大概1人で演武をして闘技場を利用する。対戦相手になる力を持っている若いドーマーが少ないからだし、後輩達はこの大先輩に失礼があってはいけないと遠慮するからだ。
クロワゼットがハイネに気が付いた。純白の髪とテレビで見たことがある顔に、誰なのか気が付いた。
「ローガン・ハイネだね?」
と彼は嬉しそうに声を掛けた。ハイネはスポンサー様に軽く頭を下げて挨拶の代わりとした。クロワゼットはパーシバルとハイネの方に踏み出した。
「良ければ僕の相手をしてくれないかな?」
ハイネが何か言う前にパーシバルが素早く口を挟んだ。
「ハイネ局長は今朝迄入院していたんです。ちょっと体調を崩してね。高齢だし無理はさせられないので対戦は遠慮して下さい。」
「高齢・・・?」
「御歳95歳です。」
ドーマーの中から声が上がり、銘々が頷き合った。局長に手を出したら承知しないぞ、と言う雰囲気が大尉の周りに立ち昇った。これは拙い、とパーシバルは感じた。お客様に恐怖心を感じさせてはいけない。軍も立派な出資者なのだ。その時、ハイネが口を開いた。
「パーシバル博士の仰せの通り、この年寄りは無理の利く状態ではありません。どうかご勘弁を。」
そしてさらに言った。
「連邦軍の訓練の賜物を拝見したいものです。演武を披露して頂けませんか?」
するとクロワゼット大尉は、「お断りする」と言った。
「地球人の力を試して見たかったが、許可されないとなると興味が失せた。失礼する。」
彼は人垣を搔きわけるつもりでドーマーの輪に向かって歩き始めた。ドーマー達は彼に触れるのを避けてサッと道を開いた。その時、パーシバルは大尉の顔にがっかりした表情が浮かぶのを見た。
まさか、あの男は地球人を触りたいのか?