ベックマン保安課長の指図で航空班保安員達がレイモンド・ハリスを立たせようとした。ハリスはぐにゃぐにゃになっていて、なかなか言うこと聞かない。保安員の1人がストレッチャーを取りに歩き去ろうとした時、女性の声がケンウッドの背後から聞こえた。
「アルコールで酔っ払っているのですね?」
ケンウッドが振り返るとブラコフ副長官と栗色の髪のすらりと背が高い美女が立っていた。年齢は50台後半か? 地球人の目から見れば30台後半に見えるだろう。
「ゴーン博士ですね?」
「ケンウッド長官、こんばんは。お取り込み中とお見受けしました。」
「お恥ずかしい。部下が研究資料採取で外出して、シティでちょっと飲酒をしたらしいのです。」
勿論ハリスの状態を見れば「ちょっと」どころでないことは誰の目にもわかった。
血液の研究者であるゴーンが端末でサッとハリスの体を走査した。そしてブラコフを振り返った。
「私のスーツケースはまだ消毒が終わりませんか?」
「もうすぐ出て来る筈です。」
ブラコフとゴーンは同時に荷物の受け取りカウンターを見た。そして流れ出て来る荷物の山を見て、ゴーンが素早くそちらへ歩いて行った。
ベックマンがハリスを宥めすかして立たせようと努力していた。保安員達はハリスが暴れたら直ぐに抑えられるように身構えている。コロニー人達が騒ぎを起こしていると気が付いた地球人や、コロニー人の旅客が遠巻きに見物しているので、ベックマンは不機嫌だ。ケンウッドも落ち着かなかった。保安員の1人が端末で映像記録を撮り始めた。後でハリス自身に見せて反省を促すのに用いる為だ。
ゴーンがスーツケースを持って戻って来た。ケースを開き、薬品ケースを出した。
「ドーム外で使用許可が出ている薬です。血中アルコール濃度を下げます。」
彼女はアンプルの中身を圧縮注射に注入すると、保安員とベックマンに言った。
「彼を抑えておいて下さい。微量を注射します。量を間違えると危険ですので、しっかり抑えて下さい。」
ベックマンと保安員がハリスをむんずと捕まえた。ハリスが言葉にならない声で何やら抗議した。ゴーンが彼に近づき、首筋に圧縮注射を押し当てた。ベックマンの耳に微かな「プシュッ」と言う音が聞こえた。ハリスが深い息を吐いた。ケンウッドが声を掛けた。
「ハリス博士・・・」
「・・・はい?」
ハリスが半分夢の中にいるようなトロンとした目で長官を見た。
「ここが何処かお分かりか?」
「・・・ああ・・・長官・・・」
ベックマンが彼の腋の下に腕を入れて立たせた。
「何処だか、中に戻ってから考えろ。さぁ、もう立てるだろう、酔っ払い博士。」
「アルコールで酔っ払っているのですね?」
ケンウッドが振り返るとブラコフ副長官と栗色の髪のすらりと背が高い美女が立っていた。年齢は50台後半か? 地球人の目から見れば30台後半に見えるだろう。
「ゴーン博士ですね?」
「ケンウッド長官、こんばんは。お取り込み中とお見受けしました。」
「お恥ずかしい。部下が研究資料採取で外出して、シティでちょっと飲酒をしたらしいのです。」
勿論ハリスの状態を見れば「ちょっと」どころでないことは誰の目にもわかった。
血液の研究者であるゴーンが端末でサッとハリスの体を走査した。そしてブラコフを振り返った。
「私のスーツケースはまだ消毒が終わりませんか?」
「もうすぐ出て来る筈です。」
ブラコフとゴーンは同時に荷物の受け取りカウンターを見た。そして流れ出て来る荷物の山を見て、ゴーンが素早くそちらへ歩いて行った。
ベックマンがハリスを宥めすかして立たせようと努力していた。保安員達はハリスが暴れたら直ぐに抑えられるように身構えている。コロニー人達が騒ぎを起こしていると気が付いた地球人や、コロニー人の旅客が遠巻きに見物しているので、ベックマンは不機嫌だ。ケンウッドも落ち着かなかった。保安員の1人が端末で映像記録を撮り始めた。後でハリス自身に見せて反省を促すのに用いる為だ。
ゴーンがスーツケースを持って戻って来た。ケースを開き、薬品ケースを出した。
「ドーム外で使用許可が出ている薬です。血中アルコール濃度を下げます。」
彼女はアンプルの中身を圧縮注射に注入すると、保安員とベックマンに言った。
「彼を抑えておいて下さい。微量を注射します。量を間違えると危険ですので、しっかり抑えて下さい。」
ベックマンと保安員がハリスをむんずと捕まえた。ハリスが言葉にならない声で何やら抗議した。ゴーンが彼に近づき、首筋に圧縮注射を押し当てた。ベックマンの耳に微かな「プシュッ」と言う音が聞こえた。ハリスが深い息を吐いた。ケンウッドが声を掛けた。
「ハリス博士・・・」
「・・・はい?」
ハリスが半分夢の中にいるようなトロンとした目で長官を見た。
「ここが何処かお分かりか?」
「・・・ああ・・・長官・・・」
ベックマンが彼の腋の下に腕を入れて立たせた。
「何処だか、中に戻ってから考えろ。さぁ、もう立てるだろう、酔っ払い博士。」