「ハリス博士が借金返済の為に辺境に売り飛ばされる恐れがあると言うのでしたら、中西部支局長の代理をお願い出来ないでしょうか?」
とハイネが言ってベルトリッチ委員長を驚かせた。
「ハリス博士に支局長職ですか?」
「正式な次期支局長が決まる迄の繋ぎです。支局では秘書や現地職員が働いていますから、現在業務が滞っている気配はありません。ハリス博士にはドームにいながら彼等の仕事を監視して頂き、執政官のお仕事と両方をこなして頂ければ・・・支局長の給与の半分は出せるかと思います。借金の利子の返済に使って頂けませんか?」
ベルトリッチは苦笑した。ハイネが不良執政官を助けてくれようとしている。しかし、借金の額は支局長職を内職程度の量でこなして支払われる臨時収入では補いきれない。
「いっそのこと、ハリスを執政官から退官させて、支局長にしてしまってはどうかしら?」
彼女のアイデアに、ケンウッドもハイネもぽかんとした表情になった。地球人の役所で地球人の為の職務をこなす地球人の代わりに、あの不良学者を据えると言うのか? ハイネが思わず言った。
「それは暴挙です。」
「暴挙?」
「支局長の権限を全てハリスに与えると言うことです。地球人の権限をコロニー人に与えると言う・・・」
「でも、このアイデアは貴方が考えついたのですよ。」
言い返されてハイネが返事に窮した。ケンウッドが彼を宥めた。
「ハイネ、ドームにいながら支局の監視をするのは、何もしないのと同じだ。そんな仕事をしている人間に、支局長給与の半分も出せないよ。
委員長は、ハリスを現地に行かせて働かせろと仰っている。」
「それなら給与を出せます。」
とベルトリッチ。
「取り立て屋がハリスを追いかけて来ては中西部の住人に迷惑がかかるでしょうから、彼の借金は委員会が肩代わりします。ハリスの借金は地球人類復活委員会に移るのです。給与支払者である委員会は、彼の給与から最低限の生活費を差し引いた金額を返済金として天引きします。物価を考えると、全額返済は7年ほどでしょうか。その間、ハリスにはタダ働きしてもらうことになるでしょう。しかし、身の安全は保障されるのです。」
彼女はハイネに優しく言った。
「都市部の元ドーマーを強制的に中西部へ追いやることを思えば、貴方も楽なのではありませんこと? 無理に希望者を募って現役を外に出すのは貴方も避けたいでしょう?」
「7年・・・ハリス博士はちゃんと働けますかね?」
「それは委員会にとっても大博打ね。大金を肩代わりするのですもの。」
ベルトリッチはケンウッドに顔を向けた。
「維持班のドーマーに班長会議を開かせて下さい。そこでハリス博士を遺伝子管理局の仕事に従事させる承認を取るのです。ハリスは維持班のドーマーにも迷惑をかけていますから、退官は処罰であると長官からはっきり説明してあげて下さい。そして支局長は名誉な仕事でありますが、処罰されるコロニー人にその職を与えるのは、ハリスが元執政官であるからと言い含めて下さい。処罰と名誉、両方の処置です。
班長会議で承認を得たら、次に執政官会議でハリスへ退官勧告を出し、必ず本人に了承させて下さい。 他の執政官達にも彼がクビになる理由を分からせるのです。支局長に任命することは、会議では言及する必要はありません。長官執務室でハリス個人にだけ告げるのです。名誉を与える必要はありません。本人にとっては屈辱でしかないでしょう。」
とハイネが言ってベルトリッチ委員長を驚かせた。
「ハリス博士に支局長職ですか?」
「正式な次期支局長が決まる迄の繋ぎです。支局では秘書や現地職員が働いていますから、現在業務が滞っている気配はありません。ハリス博士にはドームにいながら彼等の仕事を監視して頂き、執政官のお仕事と両方をこなして頂ければ・・・支局長の給与の半分は出せるかと思います。借金の利子の返済に使って頂けませんか?」
ベルトリッチは苦笑した。ハイネが不良執政官を助けてくれようとしている。しかし、借金の額は支局長職を内職程度の量でこなして支払われる臨時収入では補いきれない。
「いっそのこと、ハリスを執政官から退官させて、支局長にしてしまってはどうかしら?」
彼女のアイデアに、ケンウッドもハイネもぽかんとした表情になった。地球人の役所で地球人の為の職務をこなす地球人の代わりに、あの不良学者を据えると言うのか? ハイネが思わず言った。
「それは暴挙です。」
「暴挙?」
「支局長の権限を全てハリスに与えると言うことです。地球人の権限をコロニー人に与えると言う・・・」
「でも、このアイデアは貴方が考えついたのですよ。」
言い返されてハイネが返事に窮した。ケンウッドが彼を宥めた。
「ハイネ、ドームにいながら支局の監視をするのは、何もしないのと同じだ。そんな仕事をしている人間に、支局長給与の半分も出せないよ。
委員長は、ハリスを現地に行かせて働かせろと仰っている。」
「それなら給与を出せます。」
とベルトリッチ。
「取り立て屋がハリスを追いかけて来ては中西部の住人に迷惑がかかるでしょうから、彼の借金は委員会が肩代わりします。ハリスの借金は地球人類復活委員会に移るのです。給与支払者である委員会は、彼の給与から最低限の生活費を差し引いた金額を返済金として天引きします。物価を考えると、全額返済は7年ほどでしょうか。その間、ハリスにはタダ働きしてもらうことになるでしょう。しかし、身の安全は保障されるのです。」
彼女はハイネに優しく言った。
「都市部の元ドーマーを強制的に中西部へ追いやることを思えば、貴方も楽なのではありませんこと? 無理に希望者を募って現役を外に出すのは貴方も避けたいでしょう?」
「7年・・・ハリス博士はちゃんと働けますかね?」
「それは委員会にとっても大博打ね。大金を肩代わりするのですもの。」
ベルトリッチはケンウッドに顔を向けた。
「維持班のドーマーに班長会議を開かせて下さい。そこでハリス博士を遺伝子管理局の仕事に従事させる承認を取るのです。ハリスは維持班のドーマーにも迷惑をかけていますから、退官は処罰であると長官からはっきり説明してあげて下さい。そして支局長は名誉な仕事でありますが、処罰されるコロニー人にその職を与えるのは、ハリスが元執政官であるからと言い含めて下さい。処罰と名誉、両方の処置です。
班長会議で承認を得たら、次に執政官会議でハリスへ退官勧告を出し、必ず本人に了承させて下さい。 他の執政官達にも彼がクビになる理由を分からせるのです。支局長に任命することは、会議では言及する必要はありません。長官執務室でハリス個人にだけ告げるのです。名誉を与える必要はありません。本人にとっては屈辱でしかないでしょう。」