ケンウッドは取り立て屋と思しき2人組のコロニー人男性とハリスの間に立った。
「いかにもこの人は当アメリカ・ドームに勤務するレイモンド・ハリス博士だが、貴方方は彼のお知り合いですか?」
男達がケンウッドをジロリと眺めた。
「貴方は?」
「アメリカ・ドーム長官ニコラス・ケンウッドと申します。ハリスの上司です。」
長官と聞いて、2人組が少し引いた。地球ではドーム長官はそれが置かれている国家の元首と対等の立場で話が出来る人間だ。コロニー社会でも地球で長官職を務めた経験のある人間は尊敬されVIP待遇になる。
「ケンウッド長官・・・お目にかかれて光栄です。私はマイケル・コナーズと申します。」
1人が手を差し出した。
「火星第4コロニーのアルバート&ビーチャー金融との契約で、ハリス博士の借金返済に関して相談する為に参りました。博士とお話ししたいのですが、どうも今の状態では無理な様ですね。」
ケンウッドは握手に応じないで、コナーズに言った。
「その様です。話し合いは彼の酔いが醒めてからにして頂けませんか?」
「しかし、一旦ドームに入ってしまうと、彼は当分出てこないでしょう。」
「ドームの面談室で面会と言う方法はありますよ。ハリス博士が貴方方に面会する許可を出した場合に限りますが。」
「ご冗談を・・・」
コナーズが苦笑いした。彼の連れは怒った様な不機嫌な顔でケンウッドを見つめた。
「借金を踏み倒して逃げた人が、我々と面会する筈がないじゃないですか。」
「その借金ですが・・・」
ケンウッドは相手を真っ直ぐ見つめた。
「博打の借金と聞きました。彼が返さなければならない正当な理由になるのでしょうか?」
コナーズが優しそうな笑みを浮かべた。
「我々の雇い主は、アルバート&ビーチャー金融であって、博打の胴元ではありません。そこのところをよくご理解願います、長官。ハリス博士は胴元に支払いが出来なくて金融会社から借金をしたのです。ハリス博士は借入金の返済義務を負っています。」
「つまり、胴元には返済を済ませたが、金融会社には返していない?」
「そうです。」
ケンウッドは溜め息をついた。博打の胴元と金融会社の関係はわからないが、確かにハリスには返済義務がありそうだ。しかし、だからと言ってここでハリスを取り立て屋に渡す訳に行かない。
「へべれけになっている人間を貴方方が大事にお世話してくださるとは思えません。それに私には部下を守る義務があります。今日のところは彼をドームに連れて帰ります。申し訳ないが、明日もう一度ここへ来て頂けませんか?」
ケンウッドの視野の片隅にアーノルド・ベックマンが歩み寄って来るのが見えた。腰にガンベルトを下げている。コナーズの連れがそれに気が付いて、相棒に目配せした。コナーズもベックマンを見た。明らかに警察官ではない、軍人の様な雰囲気のベックマンに2人の取り立て屋は警戒した。
ケンウッドが紹介した。
「アメリカ・ドームの保安責任者ベックマン氏です。彼が責任を持ってハリス博士を保護します。ですからハリス博士は逃亡したりしません。」
ベックマンは後ろに数人のドーマーを連れていた。外に出たことがない保安課員ではなく、空港ビル内の寮で寝泊まりしているドームの航空班保安員だ。ベックマンの直属の部下ではないが、訓練するのは保安課長だ。彼等は師匠ベックマンの命令を聞く。
取り立て屋は分が悪いと悟った。
「わかりました。では明日のこの時間にここへ来ます。その時にハリス博士から良いお返事を頂きたいものです。」
「いかにもこの人は当アメリカ・ドームに勤務するレイモンド・ハリス博士だが、貴方方は彼のお知り合いですか?」
男達がケンウッドをジロリと眺めた。
「貴方は?」
「アメリカ・ドーム長官ニコラス・ケンウッドと申します。ハリスの上司です。」
長官と聞いて、2人組が少し引いた。地球ではドーム長官はそれが置かれている国家の元首と対等の立場で話が出来る人間だ。コロニー社会でも地球で長官職を務めた経験のある人間は尊敬されVIP待遇になる。
「ケンウッド長官・・・お目にかかれて光栄です。私はマイケル・コナーズと申します。」
1人が手を差し出した。
「火星第4コロニーのアルバート&ビーチャー金融との契約で、ハリス博士の借金返済に関して相談する為に参りました。博士とお話ししたいのですが、どうも今の状態では無理な様ですね。」
ケンウッドは握手に応じないで、コナーズに言った。
「その様です。話し合いは彼の酔いが醒めてからにして頂けませんか?」
「しかし、一旦ドームに入ってしまうと、彼は当分出てこないでしょう。」
「ドームの面談室で面会と言う方法はありますよ。ハリス博士が貴方方に面会する許可を出した場合に限りますが。」
「ご冗談を・・・」
コナーズが苦笑いした。彼の連れは怒った様な不機嫌な顔でケンウッドを見つめた。
「借金を踏み倒して逃げた人が、我々と面会する筈がないじゃないですか。」
「その借金ですが・・・」
ケンウッドは相手を真っ直ぐ見つめた。
「博打の借金と聞きました。彼が返さなければならない正当な理由になるのでしょうか?」
コナーズが優しそうな笑みを浮かべた。
「我々の雇い主は、アルバート&ビーチャー金融であって、博打の胴元ではありません。そこのところをよくご理解願います、長官。ハリス博士は胴元に支払いが出来なくて金融会社から借金をしたのです。ハリス博士は借入金の返済義務を負っています。」
「つまり、胴元には返済を済ませたが、金融会社には返していない?」
「そうです。」
ケンウッドは溜め息をついた。博打の胴元と金融会社の関係はわからないが、確かにハリスには返済義務がありそうだ。しかし、だからと言ってここでハリスを取り立て屋に渡す訳に行かない。
「へべれけになっている人間を貴方方が大事にお世話してくださるとは思えません。それに私には部下を守る義務があります。今日のところは彼をドームに連れて帰ります。申し訳ないが、明日もう一度ここへ来て頂けませんか?」
ケンウッドの視野の片隅にアーノルド・ベックマンが歩み寄って来るのが見えた。腰にガンベルトを下げている。コナーズの連れがそれに気が付いて、相棒に目配せした。コナーズもベックマンを見た。明らかに警察官ではない、軍人の様な雰囲気のベックマンに2人の取り立て屋は警戒した。
ケンウッドが紹介した。
「アメリカ・ドームの保安責任者ベックマン氏です。彼が責任を持ってハリス博士を保護します。ですからハリス博士は逃亡したりしません。」
ベックマンは後ろに数人のドーマーを連れていた。外に出たことがない保安課員ではなく、空港ビル内の寮で寝泊まりしているドームの航空班保安員だ。ベックマンの直属の部下ではないが、訓練するのは保安課長だ。彼等は師匠ベックマンの命令を聞く。
取り立て屋は分が悪いと悟った。
「わかりました。では明日のこの時間にここへ来ます。その時にハリス博士から良いお返事を頂きたいものです。」