2018年2月18日日曜日

脱落者 11 - 3

 地球上で犯罪が起きた場合・・・
 ドームの外で起きた犯罪は、刑事民事共に、地球の司法に委ねられる。これは関係者が地球人であろうとコロニー人であろうと関係ない。コロニー側からの干渉は一切許されない。
 ドーム内で起きた犯罪の扱いは関係者の立場によって異なる。
 ドーマー同士の間で起きた場合は、刑事民事共に遺伝子管理局内務捜査班の管轄だ。関係者に対する処罰裁定を下すのは、維持班の班チーフ会議であり、遺伝子管理局は処罰を決めない。
 コロニー人同士の間で民事事件が起きた場合は、ドーム執政官幹部会議が扱う。捜査が必要な場合は長官が地球人類復活委員会に調査を依頼する。ドーマーは関知しない。
 コロニー人同士の間で刑事事件が起きた場合は、ドーム長官が地球人類復活委員会を通し、地球周回軌道防衛軍憲兵隊に事件を通報する。捜査、容疑者逮捕は憲兵隊が行う。加害者への裁定は宇宙連邦法により、月面コロニーの裁判所が下す。
 ドーマーとコロニー人双方に関わる事件となると、かなりややこしくなる。どちらが加害者であるか被害者であるかで、捜査権の所在が異なってくる。
 民事の場合、加害者がコロニー人ならば、コロニー人同士の民事事件と同じ扱いとなる。但し、被害者がドーマーなので遺伝子管理局内務捜査班も調査に参加する。加害者に対する裁定を下すのはドーム執政官幹部会議である。
 加害者がドーマーで被害者がコロニー人の場合は、捜査権は内務捜査班に置かれ、捜査結果は遺伝子管理局長を通して長官に報告される。加害者に裁定を下すのはドーム維持班班チーフ会議である。
 刑事の場合は、どちらが被害者でも、捜査権は地球周回軌道防衛軍憲兵隊が担当する。憲兵隊は必要に応じて、ドーム執政官幹部会議又は遺伝子管理局内務捜査班に協力要請出来る。裁定は、コロニー人が加害者の場合は、宇宙連邦法によって月面コロニーの裁判所が下す。裁判結果はドーム長官がドーマー側に通知する。ドーマーが加害者の場合、コロニー側の弁護士立会いの下で、ドーム維持班班チーフ会議が裁定を下す。判決内容は維持班総代表が長官に報告する。
 しかし、加害者がテロリストとなると、話は違ってくる。被害は地球だけでなく、宇宙連邦全体に影響を与えるからだ。捜査権は地球周回軌道防衛軍が持ち、加害者の処遇は月面コロニーではなく宇宙連邦裁判所が裁判で決める。テロリストは常にコロニー人、と今まで誰もが考えてきた。しかし、今回の事件では、コロニー人がドーマーを抱き込んでしまっている可能性があった。