アメリカ・ドーム第23代長官サンテシマ・ルイス・リンは、呼吸器系の遺伝病の治療法を研究して、治療薬の製造会社を設立、成功を収めた。しかし、長官職にあった時、ドーマー達をペット扱いして地球人保護法違反を犯し、さらに危険値S1の進化型一級遺伝子保有者を逃亡させた罪で更迭された。後者は連邦法違反に当たるので、彼は執行猶予付きの有罪判決を受け、現在は辺境の開拓地で医師として働いている。
リンが設立したアボンリー薬品製造は、役員会議で創業者である彼を役員から外した。リンの有罪によって会社に付いた悪評を払拭しようと従業員達は努力した。そして創業当時から居た古参の社員達を解雇した。
ドナルド・アンガス・フェリートと言う薬剤師はリストラされたメンバーの1人だった。ボスの犯した罪とは無関係なのに、彼は職を失った。きっと悔しかったに違いない。怒りをぶつける対象が、地球人類復活委員会になったとしても不思議ではない。逆恨みだが、理由はわかった。
「室長はセシリアを洗脳したのかも知れない。」
「状況証拠だけでは、彼を追求するのは難しいです。」
「コンピュータに証拠が残っていると良いのだが・・・」
推理ばかりしていても埒が明かない。ロッシーニは部下に思いつく限りの必要な指示を与え、ケンウッドは医療区と出産管理区に薬剤管理室から届けられる薬剤に注意を払うよう勧告を出した。クローン製造施設にも警戒を呼びかけた。
数分後、出産管理区のアイダ・サヤカ博士から電話が掛かってきた。
「薬剤管理室の薬に警戒せよとは、どう言う意味でしょうか? 電話では説明出来ないことですか?」
ケンウッドは正直に言うべきか迷った。
「テロリストが地球人の子供達に悪さをする懸念が生じたのだ。必ず薬剤の中身を確かめて使用してくれないか?」
「いつもしています。」
アイダ博士は真面目な顔で答えてから、ちょっと苦笑した。
「お気遣い有り難うございます。時々中央研究所から忘れられている存在ではないかと不安でしたので。」
チクリと皮肉を言って、彼女は通話を終えた。入れ替わりのように、医療区のヤマザキ・ケンタロウから電話が掛かってきた。
「薬剤管理室に問題があるのか?」
「うん、ちょっと疑いのある人物が居てね・・・。」
するとヤマザキが「室長か?」と言ったので、ケンウッドは驚いた。
「何故わかるんだ?」
「なんだ、本当だったのか。」
と医療区長はがっかりした様に言った。
「爆発があった次の日だったか、サヤカが薬剤管理室の主任から聞いた話と、小会議室で監視映像を見た時に室長が言った内容が違っていたのでね、どちらかが嘘つきだと思ったんだ。」
「え? アイダ博士が主任から話を聞いていたって?」
ケンウッドはドームが狭い世界であることを思い知らされた。
リンが設立したアボンリー薬品製造は、役員会議で創業者である彼を役員から外した。リンの有罪によって会社に付いた悪評を払拭しようと従業員達は努力した。そして創業当時から居た古参の社員達を解雇した。
ドナルド・アンガス・フェリートと言う薬剤師はリストラされたメンバーの1人だった。ボスの犯した罪とは無関係なのに、彼は職を失った。きっと悔しかったに違いない。怒りをぶつける対象が、地球人類復活委員会になったとしても不思議ではない。逆恨みだが、理由はわかった。
「室長はセシリアを洗脳したのかも知れない。」
「状況証拠だけでは、彼を追求するのは難しいです。」
「コンピュータに証拠が残っていると良いのだが・・・」
推理ばかりしていても埒が明かない。ロッシーニは部下に思いつく限りの必要な指示を与え、ケンウッドは医療区と出産管理区に薬剤管理室から届けられる薬剤に注意を払うよう勧告を出した。クローン製造施設にも警戒を呼びかけた。
数分後、出産管理区のアイダ・サヤカ博士から電話が掛かってきた。
「薬剤管理室の薬に警戒せよとは、どう言う意味でしょうか? 電話では説明出来ないことですか?」
ケンウッドは正直に言うべきか迷った。
「テロリストが地球人の子供達に悪さをする懸念が生じたのだ。必ず薬剤の中身を確かめて使用してくれないか?」
「いつもしています。」
アイダ博士は真面目な顔で答えてから、ちょっと苦笑した。
「お気遣い有り難うございます。時々中央研究所から忘れられている存在ではないかと不安でしたので。」
チクリと皮肉を言って、彼女は通話を終えた。入れ替わりのように、医療区のヤマザキ・ケンタロウから電話が掛かってきた。
「薬剤管理室に問題があるのか?」
「うん、ちょっと疑いのある人物が居てね・・・。」
するとヤマザキが「室長か?」と言ったので、ケンウッドは驚いた。
「何故わかるんだ?」
「なんだ、本当だったのか。」
と医療区長はがっかりした様に言った。
「爆発があった次の日だったか、サヤカが薬剤管理室の主任から聞いた話と、小会議室で監視映像を見た時に室長が言った内容が違っていたのでね、どちらかが嘘つきだと思ったんだ。」
「え? アイダ博士が主任から話を聞いていたって?」
ケンウッドはドームが狭い世界であることを思い知らされた。