3人の捜査官に廊下で待つようにと言って集中治療室から追い出すと、ヤマザキはブラコフのバイタルチェックを行った。体温、血圧、心拍数を記録した。
「脳波翻訳機は付けておく。スタッフとの意思疎通に必要だろう。違和感を感じるだろうが、直に慣れるさ。」
「ありがとうございます・・・ヤマザキ先生・・・」
ブラコフが事情聴取の間、ずっと言葉にするまいと堪えていた質問を出して来た。
「何故軍人がここにいるのですか? ただの薬剤使用ミスじゃないんですか?」
ヤマザキは先刻迄ドナヒューが座っていた椅子に腰を下ろした。
「ケンさんはまだ君に教えるのは早いと考えているが、君から質問が出たので教えておく。ドーマー達にも教えるなと本部からの通達もあったが、横の繋がりでドーマー達も知ってしまったことだし・・・。
実は君が怪我をした少し前の時間帯だが、アフリカ・ドームで爆発事件があった。」
「何ですって!」
ブラコフが素直に驚いた。翻訳機の音声が大きくなった。
「やはり薬剤ですか?」
「詳細はまだ調査中で本部からも報告がない。しかし、アフリカ・ドームのルパート・シュバルツバッハ博士と3名の遺伝子学者が亡くなったことは確かだ。建物にも大きな被害が出たそうだ。そして時間を置かずに広域テロ組織『青い手』が犯行声明を出した。」
「テロ?! そんな・・・ドームは平和な施設なのに・・・」
「地球人類復活委員会の活動に異を唱える人々もいると言うことだよ。地球人が繁殖能力を失ったのであれば、自然淘汰で絶滅させてしまえ、と言う人々がね。」
「僕はそんな考え方が理解出来ません。要するに、お金がかかるから研究を止めてしまえと言うことでしょう?」
「そうだ。 そしてタチの悪いことに、連中はアメリカ・ドームの爆発事故も彼等の犯行だと言っている。ここの事故はまだ公表されていない時間にだ。」
ブラコフは暫く翻訳機の電源を切った。感情が高ぶってしまったのだ。ヤマザキは彼のバイタルチェックを見た。血圧と心拍数が上がっているが、危険な状態ではない。
「テロリストは、新薬の実験に必ずドーム長官もしくは副長官が立ち会うことを知っているんだ。だから防衛軍は、今回のここの生化学実験室で起きた爆発は、ハン・ジュアン達ではなく君を狙ったものだと考えている。ハイネは前日に君が誘っただけなので、巻き添えになったのだろう。ああ、君が誘ったから、と言う考えは止めろよ。これはドナヒューの考えを僕も支持する。
問題は、テロリストが薬品が爆発するようにどうやって仕向けたか、なのだ。羊水の分析に用いるだけの薬品を爆薬にしてしまう手口を軍曹は探っている。ベックマン課長はテロリストの手先になったヤツを探している。フォーリー・ドーマーはその手先が何故地球人類復活の目標を棄てたのか探っている。」
ふとガラス窓の向こうに目をやると、3名の捜査官が何やら揉めているらしい姿が見えた。ドナヒューが奥の部屋へ行こうとするのを、ベックマンとフォーリーが引き止めようとしていた。
やれやれ、とヤマザキは苦笑した。
「ガブリエル、今廊下でさっきの3人の刑事達が揉めているんだ。他の患者に迷惑なので止めて来ても良いか?」
「ええ、どうぞ!」
ブラコフの声から深刻さが消えていた。
「脳波翻訳機は付けておく。スタッフとの意思疎通に必要だろう。違和感を感じるだろうが、直に慣れるさ。」
「ありがとうございます・・・ヤマザキ先生・・・」
ブラコフが事情聴取の間、ずっと言葉にするまいと堪えていた質問を出して来た。
「何故軍人がここにいるのですか? ただの薬剤使用ミスじゃないんですか?」
ヤマザキは先刻迄ドナヒューが座っていた椅子に腰を下ろした。
「ケンさんはまだ君に教えるのは早いと考えているが、君から質問が出たので教えておく。ドーマー達にも教えるなと本部からの通達もあったが、横の繋がりでドーマー達も知ってしまったことだし・・・。
実は君が怪我をした少し前の時間帯だが、アフリカ・ドームで爆発事件があった。」
「何ですって!」
ブラコフが素直に驚いた。翻訳機の音声が大きくなった。
「やはり薬剤ですか?」
「詳細はまだ調査中で本部からも報告がない。しかし、アフリカ・ドームのルパート・シュバルツバッハ博士と3名の遺伝子学者が亡くなったことは確かだ。建物にも大きな被害が出たそうだ。そして時間を置かずに広域テロ組織『青い手』が犯行声明を出した。」
「テロ?! そんな・・・ドームは平和な施設なのに・・・」
「地球人類復活委員会の活動に異を唱える人々もいると言うことだよ。地球人が繁殖能力を失ったのであれば、自然淘汰で絶滅させてしまえ、と言う人々がね。」
「僕はそんな考え方が理解出来ません。要するに、お金がかかるから研究を止めてしまえと言うことでしょう?」
「そうだ。 そしてタチの悪いことに、連中はアメリカ・ドームの爆発事故も彼等の犯行だと言っている。ここの事故はまだ公表されていない時間にだ。」
ブラコフは暫く翻訳機の電源を切った。感情が高ぶってしまったのだ。ヤマザキは彼のバイタルチェックを見た。血圧と心拍数が上がっているが、危険な状態ではない。
「テロリストは、新薬の実験に必ずドーム長官もしくは副長官が立ち会うことを知っているんだ。だから防衛軍は、今回のここの生化学実験室で起きた爆発は、ハン・ジュアン達ではなく君を狙ったものだと考えている。ハイネは前日に君が誘っただけなので、巻き添えになったのだろう。ああ、君が誘ったから、と言う考えは止めろよ。これはドナヒューの考えを僕も支持する。
問題は、テロリストが薬品が爆発するようにどうやって仕向けたか、なのだ。羊水の分析に用いるだけの薬品を爆薬にしてしまう手口を軍曹は探っている。ベックマン課長はテロリストの手先になったヤツを探している。フォーリー・ドーマーはその手先が何故地球人類復活の目標を棄てたのか探っている。」
ふとガラス窓の向こうに目をやると、3名の捜査官が何やら揉めているらしい姿が見えた。ドナヒューが奥の部屋へ行こうとするのを、ベックマンとフォーリーが引き止めようとしていた。
やれやれ、とヤマザキは苦笑した。
「ガブリエル、今廊下でさっきの3人の刑事達が揉めているんだ。他の患者に迷惑なので止めて来ても良いか?」
「ええ、どうぞ!」
ブラコフの声から深刻さが消えていた。