2018年2月7日水曜日

脱落者 8 - 1

「昨日、僕の言いつけを無視して看護師からタブレットを入手したハイネは、はしゃぎ過ぎた報いで、今日は早朝から熱を出して大人しくしているよ。」

 朝食の時に、ヤマザキが可笑しそうに教えてくれた。医師が笑っているので、深刻な事態ではなさそうだ。ケンウッドはホッとした。

「熱は高いのか?」
「いや、微熱だ。でも胸の傷に響くから、発生練習は午後からに延期だ。食事は予定通りにする。延期すると彼は絶対に機嫌が悪くなるから。」
「食べ物に関して言えば、ローガン・ハイネは子供だなぁ・・・」

 2人は笑い合った。ヤマザキはベックマン保安課長からセシリア・ドーマーが事情聴取の際にハイネ暗殺を企てたことを認めたと聞かされていた。ベックマンは医療区の警備強化の必要性を説く為に、医療区長に伝えたのだ。ヤマザキはセシリア・ドーマーの共犯がいるとは思えなかったが、真面目に受け止めた。スタッフに、医療区に用の無い者は例え顔見知りでもセキュリティチェックを通してからでなければ入れてはならない、と指示を出しておいた。しかし、それをケンウッド長官に言うつもりはなかった。ベックマンから報告があるだろうし、まだなかったとしても多忙な長官に心を乱して欲しくなかった。

「ドナヒュー軍曹がガブリエルの覚醒を知った。事情聴取出来ないかと訊いてきた。彼の怪我の状態を実際に見ているのだから、無理だとわかりそうなものだがなぁ・・・」

 ケンウッドが憲兵の無神経な要求に愚痴をこぼした。ヤマザキはケンウッドが前日提案した脳波翻訳機を頭髪を剃って装着させる案を思い出した。口で証言するより脳波で喋られせた方が疲れないだろう、と思ったので、「良いんじゃないか?」と言った。

「制限時間を区切って、脳波通信機でガブリエルに証言させれば良いだろう? 僕が同席して時間オーバーや質問の内容をチェックする。少しでもガブに負担が掛かると判断したら、即事情聴取を打ち切らせる。」

 ケンウッドは自身も同席したいと思ったが、ドームは副長官を欠いている。長官業務以外にも仕事が山の様にあった。

「それではガブリエルの護衛は君がしてくれるのだね? 軍曹とベックマンかフォーリーにガブリエルの面会を許可する旨を伝えておこう。」